Pre-stage Voice 2 特集・劇場の子どもたち
“劇場”は、大人がおしゃれして普段と違う雰囲気を味わいに来る、そういう場所でもあるけれど、家族で一緒に楽しんだり、大人と子どもが一緒に作品づくりに取り組んだり…そういう場所でもあるのです。
昨年の9月から始まった今回の北九州ドラマ創作工房には、子どもから会社員、学校の先生など全部で35名が参加。そのうち18名が小中学生です。昨年の子どものための演劇ワークショップ「チャレンジ!えんげき」に参加して「お芝居をつくるのが好きになったから参加した」という子、「お話を作るのが好きでひとりで台本を書いたりしていたけど、みんなでつくるとどうなるんだろう」と参加してくれた子もいます。
”ドラマ“とは、自分の感覚や想像力を発見し、表現力を高めていく演劇活動のこと。特に、北九州ドラマ創作工房では、参加者が拠点地域を取材して見つけた“ドラマの種”から新しい物語を創り出すというスタイルで作品を創っています。小倉南区の吉田市民センターを拠点に題材探しをした今回は、新北九州空港の近く、曽根干潟にぽつんと浮かんでいる小さな無人島「間島(通称くじら島)」が物語の舞台となりました。最初から決まった台本はなく、この島を題材に「もし、自分がその場にいるその人だったら、どのように感じて、どんな行動をするのか」を参加者自身が徹底的に考え、シーンを作っていきます。
取材をしたこの日は吉田市民センターを離れ、北九州芸術劇場の小劇場で取り組む最初の回。物語の骨組みは大体組みあがり、その中の出来事を具体的にしていく作業に入ったところです。くじら島で暮らす家族たちに起こる事件の場面を、演出の太宰久夫さんと大塚恵美子さんに見せ、「なぜこういう展開なのか」「無理に話を説明して不自然なところはどうすればいいのか」を話し合いました。この話し合いの場では、大人も子どもも関係なく、”この人だったらどうするのか“をとことん考え、意見を出し合います。
この日は、事件の終盤部分のシーン作りにも取りかかりました。とある場所から出たくても出られなくなった人と、それを出してあげる立場の人。外に出たい人が、出してくれる人に言葉や態度で本当に「出してほしい」気持ちを伝え、本当に「出してあげたい」気持ちにさせないと扉は開けてもらえません。
“ドラマ”は過程が大事だとよく聞きますが、仲間と話し合ったり、本気の言動をやってみたりする様子からは、コミュニケーションに必要な要素や自分以外の人の気持ちを想像してみる体験が、その過程を通して生まれることがよく分かります。
「くじら島騒動顛末記」の結末は、まだ決まっていません。7月の発表公演では、どのような物語になっているのでしょうか?
「歌うことが好き!」という人たちが集まったのが、合唱物語「わたしの青い鳥」です。13人の子どもたちも参加、ご年輩の方もいらっしゃって幅広い年代の方が舞台に立ちます。
この作品は、メーテルリンクの「青い鳥」を原作に、合唱に参加する人たちがチルチルミチルとなり、歌と朗読で、青い鳥、つまり”しあわせ“を探しに行く舞台作品です。
取材した日は、第1回目のワークショップ。この日は、「”しあわせ“と聞いて浮かぶものは何?」「生まれる前にいた”未来の国“から地上に来るときに持ってきたものは何?」など、参加者のみなさんに“しあわせについてのアンケート“を書いてもらいました。実はこれ、作品中にも登場して、合唱のみなさんや観客の方に答えてもらうのです。公演当日、みなさんは何と答えるのでしょうか?
第1回目は、”光の精“としても舞台に登場する大森智子さんに息の吸い方や出し方、声の出し方を教えてもらい、早速「チルチルミチル」のテーマを練習。初参加の人も多いのに、声も大きくて素敵な歌声でした。子どもたちは、ちょっと緊張気味の様子。今後練習を重ねて、ますます元気に歌ってくれることでしょう。
2006年06月20日