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インタビュー・会見2014年10月02日

「《不思議の国のアリスの》帽子屋さんのお茶の会」製作発表会見レポート

間もなく本番を迎える「《不思議の国のアリスの》帽子屋さんのお茶の会」。
今日は9月某日に行われた製作発表会見の模様をお届けしたいと思います。

会見が始まるとなんと、
愉快なメンバー(出演者)達がエスカレーターから踊りながら登場!
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物語に登場する眠りネズミ役のキャストが終始テーブルで眠っていたり、
真顔で立っている帽子屋さんがいたり...と、
愉快な舞台のひとコマがここでも垣間見えました。

演出・美術・出演となる近藤良平さん、
そして劇場プロデューサー能祖のコメントを併せてお届けします!

■北九州芸術劇場プロデュースシリーズの新たな潮流について

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能祖:
"北九州芸術劇場プロデュース"という一連の作品の中には、2008年から続く北九州を何か醸すような素材でオリジナル作品を創り東京にも持っていく、という流れのシリーズがあります。昨年度は桑原裕子さんの「彼の地」という作品を創りましたがそれが非常に手応えがあって、ある種今までの集大成的なものになった...という思いがありました。だからこのシリーズはお終いという事ではなく、今年度は一旦お休みしてみようかなと。同時に、2013年にリーディングセッションで近藤さんに創って頂いたこの作品もやはり非常に手応えがあって、勿論どの作品も手応えはあるんですが、中でも特別な手応えを感じる作品というものがやはりあるんですね。

劇場の作品はある種、川の流れのような生き物だなとつくづく思っているんですが、その2つの手応えを踏まえて、今感じる流れにどう沿うか―と考えた時に、今年度はリーディングセッションから新たに立ち上がるものを、そして若い世代、高校生にも見せたいという思いがあり、今回一般公演の前日に高校生の演劇鑑賞を行うという企画になりました。

そもそも何故リーディングセッションを近藤さんにという点は、劇場のスタッフと話す中で近藤さんが演劇作品を創ったらどんな世界になるんだろうね、という興味から始まって、後はもう説明がつかない勘というか、大層面白いだろう!という気がしたんです。近藤さんはダンスの世界の方ですが、作品を拝見したりお話を伺うと、見てお分かりの通り(笑)とにかく好奇心旺盛で、新しい事にチャレンジする方なんですね。問題はどの脚本を使うか、という事でした。

近藤さんからはシンプルでファンタジーのものがいいという話があって、それで別役実さんのこの作品はどうかと読んで頂いたところ、物凄く面白い!と言って頂けて。別役さんの作品は不条理という哲学の立場で語られますが、この作品を含め80年代の作品はナンセンスの側面が強いんですね。特にこの作品は、84年に演劇集団円のこどもステージの為に書き下ろされた作品なので、ターゲットが子どもという事もあり別役作品の中では非常に分かり易く、笑える要素がある。その作品と近藤さんが出会った時に、別役さんが書く言葉の持つ身体性というか、そこがとても強調されたんです。小難しい顔をして味わうよりも体が反応するというか、見ている側も演じる役者も素直に笑える。それが大きな手応えになりました。

九州を代表する役者達とこうして中劇場でやれるのは新たな喜びですし、今回近藤さんが初美術という事でかなり面白いものになると思います。またダンサーのお一人としても出演されますので、こちらも非常に見どころです。

■リーディングセッションからの経緯と今回の新たな試みなど

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近藤:
2年前オファーを頂いた時は「リーディングって何?」ていう感じで観た事もないし、それでいてそれをやろうという能祖さんも能祖さんだなと思いつつ(笑)、僕のやり方で良いという事でお話を受けました。別役さんは勿論知ってたけど、本をちゃんと読んだ事はなくて、おまけに今知りましたが(笑)僕の大好きな1984年に書かれてるんですね。マイケル・ジャクソンのスリラーの年、we are THE WORLDの一歩手前みたいな年かな。読んでみたら、僕は複雑な話は苦手なんですけど、このアリスは非常にハマりが良くって。2~3行取り出しただけでも、言葉がふざけ合ってる、会話になってない会話、みたいな感じとかが全部分かるんですね。完成形云々よりも、その文体とダンスの動き的な要素とのフィット感が凄く良かったので、ほぼ一発で決まりました。

オーディションは、僕は芝居のオーディションはやった事がないのでどうしようかなーと思いつつ、恐らく僕がオーディションをするという事は、ダンスをやっていて受けたい、芝居をやっていて受けたい、私何者か分からないけど受けたい、っていう3種類のパターンが来るんですよね。それで、それぞれに自分がどれに属するかを名札みたいに書いてつけて貰って、そこから本読みをやって貰いました。その時に一人は読んで、一人はその言葉に合わせて動く...みたいな感じでやったら、思いのほか面白くて、尚且つ今残ってる人達―どちらかというと、ダンスより芝居寄りの人達の動きの方が面白かったんです。それは、僕の中ではちょっと大きくて。

ダンスだけで物事を発信する見え方に挑戦する人と、芝居でキャラクターみたいのを表現しようとする人。例えば、僕がワン・ツー・スリー・フォーって踊るよりも、わぁびっくりしたー!みたいな動きの方が、言葉への反応として素直というか、身体の見せ方として伝わるんですよね。それで公演でも2人1役っていう方法を取ったんですが、動きをやる時はある意味言葉を全く発していないからダンサーなので、完全に動きをマスターしないと出来ないし、結構大変な2役をやる感じですよね。

今回基本的には前回と同じメンバーっていう事も重要で、リーディングの時は"ファ~~ッ"ていう(笑)バージンな感じで動きに突入したけど、今回は"もう私この世界知ってる"ってなっちゃう。でもそれじゃつまらないので、何か一つ細工を探さなきゃなっていうのが僕の課題ですね。と言ってもそんなに難しい事じゃなくて、基本的にはこの2人1役っていうスタイルをどうするか、肩を組ませたりまぁ色んな事が出来ますけど、その中で僕なりの見せ方っていうのをやりたいと思います。

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リバーウォークや北九州はなんやかんや、「リバダン」ってリバーウォークの踊りを作ったり劇場で役者をやったり、結構立体的に関わっていて、そこで思うのは、スタッフワークと劇場の在り方と僕みたいな外部者の扱いと、すべてに関して、この劇場は物凄くレベルが高いと思うんです。スタッフが皆、一緒の土壌で物を見て考えてくれて、あーだこーだとすぐに反応してくれるっていうのが素敵やなー、と思っていて。なので今回、美術は自分でもいいかなと思ったというところがあります。僕はちょっといい加減なので、それを振るといい感じにミックスされて出来上がるんじゃないかなと(笑)。そういうスタッフワークも含めて、新しい事が出来るかなと思いますね。

細かい事はあまり言い過ぎると面白くないのでお楽しみにしといて貰いたいんですが、小劇場の時は山本容子さんの絵みたいなイメージがあって、森の中にいる人達、みたいになってたんですけど、今回はもっとニュートラルに、舞台美術としての森というのは僕の中ではないですね。音楽は前と同じく吉田トオルさんで、トオルさんの音楽はこのファンタジックな世界に必要不可欠だと思っていて。まさに1984年のシンセサイザー全盛期っていうか、それを駆使して貰ってます。今はそう珍しくもないですけど、シンセサイザーって面白いんです。物体的に面白い。今回は学生に見て貰える事も嬉しいし、僕は東京の人間なので、ある意味僕にとっては海外みたいなここの面白い仲間達に、東京に「おいで!」みたいな感じも嬉しくて、僕の家のすぐ近所みたいなあうるすぽっとに皆が来てくれるっていうのも、なんか凄く面白いですね。

■質疑応答

―今回作品の中でダンス的な要素は強くなりますか?また演劇演出の面白さや魅力、とまどい等があれば教えてください。

近藤:
僕達ダンスの人達は、空間を縦横に埋められると思っていて、舞台を移動するのも早かったり(笑)。なので、技術的にスゲーっていう踊りとかではなくて、そういう意味での、中劇場の空間に耐えうるダンス的要素の使い方は増えると思います。あとはもしかすると、ペア2人が一糸乱れぬ踊りのシーンとか...いいですよね~(キャスト一同は凍りつく)。まぁそういう方向もありかなと。

3~4年前にたまたまですけど野田さんの舞台などにも関って、ますます僕の中では、芝居とダンスと分ける必要がないというか、その思いが増しました。昨年埼玉で久しぶりにピナ・バウシュの作品を観たんですけど、その時もダンスやってて良かった~とも、芝居やってて良かった~とも素直に思えて。なので、いざ演劇の演出だから芝居があーだこーだっていう事は僕の中ではあまりなくて、素直に別役さんの脚本の面白さに向かい合っていきたいと思うし、そこから生まれて来る発想を僕なりにぶつけていこうっていう感じです。

―フラッシュモブなどまちにダンスを紛れ込ませる、溶け込ませようというような北九州芸術劇場の(ダンス・ダイブ・ウィークのような)一連の仕掛けや全国的な取組みについてはどう思われますか。

近藤:
ダンスのイベントとかは僕も色んなとこで見てるし、モブとかプロモーションビデオとかyoutubeのハッピーとか、今は色んなとこでダンスの輪やダンスで心の解放みたいな事が、10年前とは比べ物にならない位日常化してますよね。以前は祭という括りの中でやってたのが、そういう新しいダンスの関りが増えてきて、僕も昔からそうなればいいなーって思ってたのが、いつの間にかその中にいるなという感覚で。

僕もアイドルとかに振付をする時は、あんまり技術的な事じゃなくて、なんか"ルンルン"みたいな、全然振りなんか難しくないっていうそういうのが普通になってきたんですよね。もちろん技術が高い人もいますけど、要するに皆が踊れるみたいな、そういうものが増えてきたっていうのも今の在り方ですよね。

あとは本当に、ここの劇場の勢いだと思うんですけど、まちぐるみの一体感というか、なんか、凄いですよね。他の地域ではあんまり出来ていない事が実現出来てる気がします。小倉の駅からここまでの距離感とか、この大きさもいいのかもしれない。そういうのも含めて、小倉駅近辺をひとつの大きなステージと考えた時に出来るダンスのムーヴメントっていうのがもっと出来ると思うし、今はいい感じで動いてるなーっていうのが嬉しいですね。

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写真だけを見ても分かるこの愉快な出演者が繰り広げるコミカルなステージ。
因みに写真の衣装は前回リーディングセッション時のもので、
今回は全く新しいものに...こちらもかなりパワーアップしています!

子どもも大人も、学生さんもご年配の方も、
皆が一緒に楽しんで笑顔になれる遊びゴコロいっぱいの近藤ワールド★
北九州公演は一回きりですので、どうぞ、どうぞ、お見逃しなく!(そして東京方面の方は、もうしばらくお待ちくださいね!)