ステージ通信Q

Pre-stage Voice 2 ライター・はなの演劇祭のミカタ

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>>第14回北九州演劇祭サイト

“当たり”劇団てんこ盛りの
コンペティション部門に注目

まだ見ぬ劇団が全国津々浦々からわんさかやってくる、今年の北九州演劇祭。なかでも、自主参加公演・コンペティション部門参加の劇団は”実力派“として選抜されているだけに、どれも見応えのある作品を引っ提げてくるに違いない。

はな的注目株は、モンキー・ロード(東京)の「えんかえれじい」。日本演劇界の雄、北村想氏が書き下ろした新作は「演歌」がキーワードになっていて、劇中歌もすべて北村氏作詞のオリジナルだ。SF演劇作家を公言する演出担当の大西一郎氏は「演歌と聞いて思い浮かんだのは、『キル・ビル』の雪のシーンの決闘なのであった」とユニークなコメントを寄せていたが、昨年、同じく北村氏の新作で落語をテーマにした「らくだ論」を、洗練されたエンタテインメント作品へと見事に演出した彼だけあって、周囲の期待はかなり大きい。また、本番当日の幕間には、なんと北村想氏がゲスト出演する予定。果たして、どんな製作秘話が飛び出すのか、乞うご期待!

>> 12月2日(土)・3日(日) モンキーロード「えんかえれじい」公演情報


平田オリザ氏の青年団ファン必見なのが、弘前劇場を昨年退団した畑澤聖悟氏率いる渡辺源四郎商店(青森)。青森の風土が溶け込んだ味わい深い舞台が魅力。青年団から芸術・制作面でバックアップを受け、青年団の俳優も二名出演、そのクオリティの高さは平田氏のお墨付き。今回上演する代表作「背中から四十分」は近松の心中物にモチーフを得たものだが、畑澤氏の興味は心中ではなく、「人が人を癒すということはどういうことなのか」だという。東北地方の場末の温泉地にある海沿いのホテル。人生のどん底に落ちた、一人の中年男と女性マッサージ師の物語に注目を。

>> 10月14日(土)・15日(日 渡辺源四郎商店「背中から四十分」公演情報


“細やかな演劇”で定評があるのは、劇団ジャブジャブサーキット(岐阜)「歪みたがる隊列」では、ポップな劇団名のイメージに反して、精神医療施設の入所者とその周囲の人々の姿を描く。重い題材ながらも、作・演出のはせひろいち氏が得意とする心理ミステリーと、ユーモアのある会話で綴られる物語は、一見の価値があるだろう。また、近頃ちまたに溢れかえっている”演劇療法“のような類への疑問と警鐘も隠れテーマとなっているから興味深いところ。

>> 10月21日(土)・22日(日) 劇団ジャブジャブサーキット「歪みたがる隊列」公演情報


一方、粗削りだが若さみなぎるパワー全開さが売りの田上パル(東京)「報われません、勝つまでは」。今年二月、桜美林大学卒業を前に、熊本出身の田上豊氏がほとんど九州出身者で結成した劇団の旗揚げ作品で、全編が熊本弁。高校のハンドボール部の部室の中で、”こんな奴いたいた“と思わせてくれる男子学生たちが描くリアルな青春群像劇。実際にハンドボール部員だった田上氏の体験を色濃く反映させているので、観客は男たち のバトルをリアリティ満点に目の当たりにするだろう。

>> 10月28日(土)・29日(日) 田上パル「報われません、勝つまでは」公演情報


ますます目が離せないぞ!
パワーアップする地元演劇

コンペティション部門特別枠で参加する夢の工場(北九州)は、新作「誰もいなくなる」を発表。演劇関係 いすと校舎から守田慎之介を客演に迎え、日常の中にある“喪失”や“痛み”を静かな目で追いかける。今年で二十周年を迎える、当劇団代表の大塚恵美子氏いわく「北九州は、根っこのところに、社会の流れに安易に迎合することのない”ものづくりへのこだわり“があるのを感じる街」だという。北九州で産声を上げ、地元での作品作りにこだわってきた夢の工場の渾身の新作に興味津々だ。

>> 11/23[祝・木]〜25[土] 劇団夢の工場「誰もいなくなる」公演情報


最後に、南河内万歳一座の内藤裕敬氏を作・演出に迎える市民参加公演・福北演劇ネットワーク公演「雨かしら」を紹介。これは北九州市、福岡市、行橋市で活動する劇団と一般公募で選ばれた市民による合同公演。ヘレン・ケラーの「奇跡の人」を稽古中の劇団と、ある家族の日常をリンクさせながら、人とのコミュニケーションがうまくとれなくなった現代社会を映し出す。地元の役 者と市民との交流を通じて、さらに九州の演劇界を盛り上げようという作品だけに、どんな舞台に仕上がるのか楽しみもひとしお。今年の演劇祭の幕を華々しく閉じる大トリ公演を絶対見逃すわけにはいかない!

>> 12/15(金)〜17(日) 福北演劇ネットワーク「雨かしら」公演情報

執筆:はな / 某タウン誌の演劇担当を経て、現在は演劇関係のパンフレット執筆や、公共ホールのイベント企画等に携わる。昨年より北九州の情報誌「おいらの街」で演劇コラム「ライター・はなの演劇まんだら」を連載中。趣味は能。


NEWS! 北村作品が2作品


12月のモンキーロード「えんかえれじい」と、特別企画の「もろびとこぞりて Ver.2,3」も11月に登場。

>> 11/4(土)・5(日) 劇団青い鳥「もろびとこぞりて Ver.2,3」公演情報

日本演劇界に名を刻み、今なお数々の名作を生み出している劇作家、北村想氏。氏が塾長である「伊丹想流私塾」で5年師範を務めていた岩崎正裕氏にコメントを寄せてもらった。

想さんの作品世界は万華鏡のようだ。ミステリーから宮沢賢治、エンデから星の王子様、果ては世紀末的虚無から変幻自在のドラマツルギーを駆使して独自の宇宙観に至る等々。そして何より、実験性に溢れながら、想さんの関わる舞台は理屈抜きに面白い。今ある演劇の多くは、無意識のどこかで、きっと想さんの作品群から養分を吸収している。そう思えてならない。

劇作家・演出家 岩崎正裕

>> 07年1月岩崎演出「冒険王」再演 公演情報

北村想◎きたむらそう/52年滋賀県生まれ名古屋市在住。劇団「TPO師★団」にて79年、伝説の作品「寿歌」を初演(作・演出)。翌年、同作品は東京で上演され、全国的に注目を浴びる。以降、「星'86」、「プロジェクト・ナビ」の代表を務め、多くの作品を発表。84年、「十一人の少年」で岸田國士戯曲賞、88年紀伊国屋演劇賞他受賞。03年、プロジェクト・ナビを終了。以後は劇団という形にとらわれず、戯曲、小説の執筆に取り組む。

<第14回北九州演劇祭そのほか>
>> 10/7(土)〜9(祝・月) 第4回北九州パントマイムフェスティバル公演情報
など詳しくは第14回北九州演劇祭サイト

2006年09月20日
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