わたしの青い鳥
わたしの青い鳥物語
「人生に寄り添う歌」

第5回

「人生に寄り添う歌」

野田正子(のだ・まさこ)さん

歌=家族との思い出
「初めて大森先生の歌声を聴いた時、"歌の持つ力"に感動して胸が熱くなりました」と語るのは、今年で8回目の参加となる野田正子さん。幼い頃からまるで空気のように生活の中に歌があり、昔も今も、歌う事が大好きだそうです。

「童謡・唱歌・わらべ歌などは、知らない歌は殆どないというほど(笑)物心ついた時からたくさん歌っていましたね。母はいつも家事をしながら鼻歌を歌っていたし、姉と遊ぶ時も歌を口ずさみながら。ケンカをした後も、熱を出して学校を休んだ時も歌っていて、"歌えるなら大丈夫!"と思う位に歌で元気づけられていた気がします」

 所属していた合唱グループのお友達に誘われ、初めて青い鳥に参加した8年前。実は当時、最愛のお姉さんを亡くされて日が浅かった事もあり、青い鳥のテーマでもある~幸せさがし~という言葉に少し馴染めなかったといいます。

「青い鳥=子どもの童話という印象も強かったですし、姉が亡くなったばかりなのにそういう気分には...と思っていたんですね。でも、歌っていくと歌詞がとても素晴らしかった。特に思い出の国(※)のところでは姉との思い出がリンクして、歌っているうちに心が軽くなったというか、ずっと閉じていた心の扉を開いて貰った気がしました」

vol5noda_phB.jpgのサムネール画像 8年間使ってきた譜面には、8年分の"気づき"でいっぱい。
 それからは、歌うほどに曲の素晴らしさはもちろん"歌物語"としての青い鳥の魅力を知り、ただただワークショップの場が楽しかったという野田さん。その楽しさのひとつには、講師の先生方の魅力もあると語ってくれました。

「ある年、先生に叱られた事があったんです。"もっと真剣に歌に向かわないと、こんな状態じゃお客様に聞かせられない"と。そうすると、次の練習では皆変わっていて、歌もちゃんとまとまっていました。そうやってプロの先生方が私達と対等に、真剣に向き合ってくださる事が本当に幸せだと思うんですね。いつも楽しく時に厳しく。そんな練習の中で、友だちも沢山できました」

いつでもどこでも、そこにある幸せ
 年数を重ねる毎に少しずつ歌への理解が深まり、日々の生活にもそれが根付き、気づけば、本当の意味で「わたしの」青い鳥になっていた、という野田さん。

「木々が風にそよぐ音を聞いた時、駆け回る子ども達の声を聞いた時、幸せだな~と感じる時、ぽっと頭に青い鳥の事が浮かんできます。"あ、あの歌詞はこういう事だったんだな"と。そして気づいたのは、幸せには条件は要らない、という事。健康だから幸せ、お金があるから幸せ、という事ではなくて、いつどんな状況でも幸せは感じられる。これから先もし病気になったりする事があっても、それがイコール不幸せ、ではないですよね。幼い頃からいつも身近に歌があったように、幸せもいつもそこにあるものだと、青い鳥が気づかせてくれました」

(※)「青い鳥」の物語の中で、チルチルとミチルが青い鳥を探して最初に訪れる国。
そこには親しい死者が住まい、大切な思い出と対話する事ができる、温かい優しさに満ちた場所。

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