わたしの青い鳥
わたしの青い鳥物語
「色とりどりのパレット」

第8回

「色とりどりのパレット」

ソプラノソロ・大森智子(おおもり・ともこ)さん

年月と共に積み重ねた、確かな軌跡
 青い鳥がスタートした初年度から10年間、ワークショップでは合唱指導、そして本番では光の精として舞台に立ち、参加者の皆さんと最も多くの時間を共有してきたソプラノソロ・大森智子さん。

「私自身、青い鳥に参加するまで、ワークショップで指揮も合唱指導もやるという経験はあまりなくて、それに加えて初年度は、メロディも最後まで出来ていなかったので、毎週新しい譜面を見ては"来た~!やるぞ~!"みたいな感じで(笑)。本当にスリルとワクワク感と焦りと、全てが入り混じったような雰囲気でした」

 試行錯誤でなんとかゴールまで辿り着いた初年度。その後1年、また1年と重ねる中で参加者も増え、今では老若男女、下は小学生から80歳を超える方までが共にひとつの合唱をつくり上げる、青い鳥独自の魅力が生まれていきました。

「通常合唱だと、女声・男声、シニアコーラス・児童合唱といったカテゴリーに分かれて、その声に相応しい曲をやるので、これだけ老若男女が集う合唱スタイルはそうそうないですよね。声という楽器は、ピアノやバイオリン等と違って歳を取るにつれて明らかな変化をするので、子供には子供の、大人には大人の、それぞれの年代にしか出せない声がある。それが一緒になった時の色合い、パレットに何色もある―みたいな歌声は、カテゴリー分けした合唱では出せない色ですよね」

 また、年々増えるリピーターの方の参加要因のひとつは、何といっても、ユーモアに溢れた先生方の指導。参加者の皆さんと対峙するうえで、大森さんが大切にしている事とは?

「自分が本当に感じたことだけを言いたい、と思っています。おだてたり気を遣ったり、そういう事はしたくない。ただ、どうやったら皆のやる気やモチベーション、歌いたい気持ちを盛り上げられるかなっていうのは、いつも考えます。これは自分の方法論として"リラックス"という感覚があってこそ、やる気やモチベーションが上がると思っていて。もちろん緊張感も必要ですが、緊張感を少し外した、笑いや緩みがある中で体が機能する。いつも現場に笑顔があって、でもやる時はやる!というメリハリを作る事が、私の使命かなと感じています」

共鳴する想い、そして更なる高みへ
 いつも朗らかに、時に叱咤激励しながら、ひとつの合唱をつくり上げる苦楽を共にし、舞台では光の精としてチルチルミチル=参加者の旅路を導く。そこには、一入の思いが溢れます。

「作品の中に"見つけたい幸せ"という曲があって。この曲は、大体ワークショップの3~4週目位に練習するんですが、初回なんかは何をしに来たかも分からない...というところから、段々とこういうお話で、こういう歌を作らなきゃいけないんだ、という事が分かってくる時期にちょうどこの曲を歌うんです。そうやって、曲と皆さんの気持ちが綺麗にリンクしているのを舞台上で感じた時、私もそれまでの日々が被さって来て、光の精どころじゃなくなる時があります(笑)。例えば会って数日で本番を迎えるのと、毎週通って、苦労してる顔や眠たそうな顔、色んな顔を見て話をして、そうやって交流を深めた上での本番というのは、全然違いますよね」

vol8omori_phB.jpg 初年度は、光の精の全体像も掴めていなかったので、衣裳を探すのも手探りだったとか。
10周年の今年はまた新たな光の精の衣裳をお披露目という事で、こちらもお楽しみに。

 最後に、大森さんにとっての「青い鳥」についても伺ってみました。

「一年に一度、この楽譜を開く事で自分がこれからどうしていくべきかを示してくれる、羅針盤のようなものです。それまでの一年間に何をしていたかによって、楽譜を開いた時の心もちが違ったり、新しい気づきがあったり。作品のテーマが大きいからこそ、10年続けても、まだまだ辿り着けない高みがある。10年目も、本当に初演の時と同じドキドキ感をもってやれたらいいなと思います」

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