わたしの青い鳥
わたしの青い鳥物語
「音楽の原点に還る場所」

第14回

「音楽の原点に還る場所」

ソプラノソロ・伊藤晴(いとう・はれ)さん

新たな道にやって来た青い鳥

 初代光の精・大森智子さんからのバトンを受継ぎ、昨年より青い鳥のワークショップ指導、そして本番の舞台では光の精としてソプラノソロを務める伊藤晴さん。12年という青い鳥の歴史を肌で感じながら、昨年はただただ緊張の日々だったと振り返ります。

「一昨年稽古を見学させていただいた時、大森さんはじめアーティストの皆さん、スタッフの皆さん、市民の皆さんとが本当に家族のようで、ここに私が入れるかな?と思いました。約80人の方を前に1人で3~4時間指導する、という想像もできなくて。はじめにこの企画のお話をいただいたのがフランス留学から帰って間もない頃で、とにかく何でもやろう!という気持ちで「やります」と即答したんです。でもいざ現場に入るとやっぱりどこか身構えていましたし、指導のノウハウやテクニックがない分、自分の気持ちと歌ってみせる事で伝えようと、とにかく必死でした」

 約1ヶ月半の試行錯誤の末に迎えた本番のステージ。このステージを境に、青い鳥の指導者としても、またプロの歌い手としてもひとつの転機を迎える事に。

「高校の文化祭じゃないですけれど、本番を終えて急にみんなが一つになったのを感じましたし、プロの現場とはまた違うとても新鮮な体験で、やり遂げた!という達成感も凄くありました。実は期間中、オーディションにも沢山落ちて"私の幸せってなんなんだろう..."と本当に心に余裕がなくなった時期もあって。それが、本番が終わり家に帰る電車の中で、念願だった舞台の合格通知がきて「うそーっ!」と(笑)。本当に、幸せの青い鳥がやってきました」

 現在はソプラノ歌手として着実に実績を重ねている晴さんですが、実は音楽との最初の出逢いは"ピアノ"だったそう。

「4歳からピアノを初めて、もう大好きだったんですね。ピアノの先生になるのが夢で、大学で教育学部に入ってピアノ教室に就職しようと思っていました。でも、卒業する時にファイナルコンサートというものがあって、そこでピアノではなくソロで歌を歌ったんです。それで快感を感じてしまった。ステージに立って観客の前で歌う喜びを初めて感じて、それから音大の大学院に行く事を決めました。青い鳥で、参加者の皆さんがすごく純粋な気持ちで舞台を踏もうというのが伝わってきた時には私も原点に戻るというか、こういう気持ちで音楽を始めたんだな、と思い出します」

経験と還元、学びの日々

 様々な経験を経て臨む2年目の舞台。昨年の舞台では光の精として、共に旅をする子ども達を見守るような気持ちにもなったという晴さん。今年はどんな思いが育まれていくのでしょうか。

「昨年一緒にやった方々が今年も沢山いらっしゃるし、私も少しは余裕が出たり、安心しているところはあると思います。この一年、色んな一流のアーティストと呼ばれる方の姿勢を見て学ばせていただいて、そういう方達こそ、子どもたちや色んな方々に教えたり伝えようとする気持ちが強いんですよね。私も自分が経験してきた事を、皆さんに還元できたらと思います」

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「歌を通して弱点も長所も見えてくる。自分のお人よしだったりする部分が
舞台に立つ上では欠点だと思っているので、ステージに立つ時は
私は強いんだ!と言い聞かせています」
という晴さん。強く温かな輝きに満ちた光の精に会えるのをお楽しみに。

 最後に、晴さんの思う"幸せ"についても伺いました。

「一番幸せなのは、食べている時ですが(笑)。歌い手としては、様々に才能豊かなアーティストの方と共演して、その高みに引き込まれているような感覚を得た時、世界が広がって『あぁ音楽をやってて良かった!』と本当に思います。指導者としては、目に見えて皆さんの成長を感じる時ですね。こちらが熱量を持って伝えれば素直に反応が返ってくるし、本当に真っ直ぐに言葉を受け取って変わろうとされるし、変わる。皆さんと対峙する中で、一人の人間として学ばせていただいているところが大きいです」

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