月1ダンス部2009

北九州芸術劇場 学芸ブログ

HOME » 月1ダンス部 » 月1ダンス部2009 » 2009年度「月1ダンス部」はじまります!

カテゴリー

月別アーカイヴ

ブログ内検索

2009年05月18日 12:48

2009年度「月1ダンス部」はじまります!

「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド講座(ライブ)
  ~ダンスがこんなにわかっていいかしら北九州スペシャル 2009」
講師/乗越たかお
2009年4月18日(土)@北九州芸術劇場・創造工房

春を通り越してもうすぐ梅雨になりそうですが、あらためましてこんにちは、「月1ダンス部」です新年度になりまして、新たにスタートとなった最初の活動は昨年も好評だった乗越たかおさんによる「コンテンポラリー・ダンスを見て聞いて知る講座」です。今回は4月に昼・夜2回に分けて行われた講座の模様をレポートします。

※あらかじめ:残念ながら映像は権利関係など難しい問題があってご紹介できません、すみません。

昼の部

「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド講座(ライブ)~ダンスがこんなにわかっていいかしら北九州スペシャル2009」

 わずか100年前にはバレエや民族舞踊、そしてショーダンスという形でしか存在しなかったダンスが、どのように現在のコンテンポラリーダンスの流れになっていったかという歴史を最近の25年を中心に映像を交えて取り上げてお話ししてくださいました。

その中で印象に残った話をいくつかご紹介します。

norikoshi_d1.jpg

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 講師の乗越さんです。

norikoshi_d2.jpg

 

 

 

 

 

 

会場の様子です。たくさんの方が来られました。

 

「コンテンポラリーダンス」ってなに?とは一番初めに出会う疑問でもありますが、実は「コンテンポラリーダンスとは」という明確な定義は無いそうです。


バレエでもなく民族舞踊でもなく、モダンダンスでもないとは言えますが明確な統一されたスタイルがない。
なぜそうしたことになっているかという一つの要因にこのダンスがあるひとつの流れから発展せず、同時多発的な流れから発達していったからだと言えます。
それでも明確な定義をつけようとして、一時期ポストモダン、ポストポストモダンなどとは言われてはきたが、結局それも大体のものであってはっきりとした形にはなっていないそうです
元々「コンテンポラリー」という言葉は「同時代」という意味があるので、今の時代に行われているダンスはすべてコンテンポラリーのカテゴリーに入れることができる、
ということです。
つまり現代で行われている「踊り」はすべてコンテンポラリーダンスに入れられるってことですね。


そんなコンテンポラリーダンスですが、その魅力は?というと、ストーリー性があっても無くても、言葉があっても無くても良くて「なんでもあり」の要素が強い事が一番に挙げられるそうです。
人は感情を言葉にする生き物ですが、実際には言語化するよりも多くのものを感じていて、その部分をコンテンポラリーダンスという形で掴みだして見せてくれるような所に魅力を感じると言われました。
バレエのように特別な体を持った人が特別は訓練を積み、特別な舞台で踊ることではなく、自分の体で自分にしかできない踊りをすることで、それをコンテンポラリーダンスと言うことだと思う、と話されてお昼の部は終了となりました。

質疑応答を入れると予定時間をオーバーするほどの大盛況でした、今回の講座はこのあと夜の部へと続きます。

 

 

夜の部

「乗越たかお ダンス酔話会(すいわかい)」
小倉北区鍛冶町ギャラリーSOAP

今回初めての試みとして、劇場から外に出て講座を行うことになりました。場所は歩いて10分ほど離れた所にあるギャラリーSOAPさんです。
ギャラリーSOAP http://g-soap.jp/
カフェでの開催になりますので、ワンドリンク制です。
気軽にくつろぎながら映像と話を楽しんでほしいという試みです。
いつもの講座とは違った雰囲気で夜の部は始まりました。


norikoshi_n.jpg

 

 

 

 

 

 

 

ギャラリーSOAPです。

 

おもに映像を紹介しながらその間に現在のコンテンポラリーダンスの話を交えてくださいました。

国際的な賞を受賞することで日本のダンサーを取り巻く環境は変化してきて、近年では国内でもトヨタコレオグラファーアワードという大きなコンクールが開催されコンテンポラリーダンスの認知度は知られてくるようになりました。
ただ、そこにも良い面と悪い面があって、そうやって行くうちにコンテストでないと踊らないダンサーが増えてしまった。
コンテストは20分程度の小作品で審査をするため、それに慣れてしまい自分たちで自主的に作る長い作品を上演する機会が少なくなってきたそうです。
海外では発表するのに一晩掛かるようなものを「作品」と呼ぶ程で、そうした違いが大きくなると幅広く活躍することが難しくなることのではと危惧があるようです。最近の海外ではコンテストそのものがフェスティバル形式に方向転換するようになってきていて、コンテスト重視の考え方ではなくなってきているそうです。そうした中で、コンドルズや森山開次などコンテストを経ないで出てくるダンサーも増えてきているようです。

このほか、アルベールビルオリンピックで開会式での振付をおこなったドゥクフレという方のカンパニーの舞台映像を見たのですが、この時とてもシルク・ド・ソレイユに似ていると思いました。そのはずで、このカンパニーは振付に必要な装置技術をシルク・ド・ソレイユに売却した事もあるそうです。
この話から最近日本ではよく知られているシルク・ド・ソレイユの話になりました。
シルク・ド・ソレイユはテクニカルを含むと5千人!の巨大カンパニーで、世界各地で数々作品が上演されており、特にラスベガスでは作品のために劇場が作られるほど。
現在東京でもディズニーランドに常設劇場が設けられ公演が行われていますが、やはり毎日莫大な人数の観客が押し寄せるラスベガスとは違う環境なのでラスベガスのような巨大な機構を持った(ステージが一瞬にして全てプールになるとか、そこかしこから火が噴き出すとかだそうです)タイプのステージは作りにくいのでは、ということでした。

韓国でのダンス事情についても話がありました。
韓国では大学によってダンスのクラスがあり、卒業後は大学のカンパニーに所属するそうです。このため基礎をきっちりしているダンサーばかりで国際的な競争力としては日本よりも韓国の方に強みがあるそうです。
ただ、大学のカンパニーであるためどこの大学に所属しているかや誰が誰の弟子かと言うことが非常に重要な事になってくるそうです。
そんな「徒弟制度」が強く残っている韓国のダンスで、最近乗越さんが見た面白いダンスと言って見せてくれた映像は二人のダンサーがプロレスのようにひたすら戦い続けるダンスでした。
このプロレスのような動きも新しい手法の一つだそうです。
このほかにも関係性だけを決めて踊る手法や、振付家の指示を厳密に守ったり逆に即興ばかり入れたりといった手法もあるそうです。

ヨーロッパではEU加盟により国境がなくなり、国を超えたコラボレーションが盛んに行われている。
その他、新興国はダンスを輸出産業・観光資源と捉えて取り組んでいるところがあり、PR用のDVDを作成・配布やHPで動画を見られるようにして普及を図っているが、日本は舞踏以降のダンスをなかなかアピールするルートがない。興味を持っている海外のダンス関係者は多いので自分は個人的にオススメのダンスカンパニーを編集したDVDを配ったりして孤軍奮闘している。そうした中で北九州は立派な設備とスタッフ、なによりアジアに近い地の利があるのでそれを活かして、『アジアにおける日本ダンスの中心』になってほしいし、その力は十分にあると乗越さんは言ってくださいました。

最後に、乗越さんがダンスを見るときの基準についての話をされました。
自分がワクワクすることを大事にしている、「お勧めを」探さない、砂漠で一人で立って踊る自由を持つことが大事。
一つの正解を見つけようとするよりも、無数にある間違いを楽しむことがアートだからみんなもそうやって楽しんでほしい。
そのような事を話して締めくくりとしていただきました。

参加した皆さんからも
「楽しかった、時間が足りない」「ダンス公演を見てみたい」「これからダンスを見ていく中で参考になります」「カルチャーショックを受けた、ダンスの幅を広げていきたい」
といった言葉がアンケートで寄せられました。

次回の「月1ダンス部」はワークショップ。
井手茂太さんをお迎えしての「おどるカラダを楽しもう!」を開催します。
またレポートを載せますのでご覧ください。

今回からレポート担当になりました、これからしばらくお付き合いくださいよろしくお願いします。

2009年度「月1ダンス部」広報担当:野村

講師プロフィール


乗越たかお
作家・ヤサぐれ舞踊評論家。海外でも翻訳され、ベストセラーとなった「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER」(作品社刊)の他、「ダンシング・オールライフ~中川三郎物語」(集英社)、「アリス~ブロードウェイを魅了した天才ダンサー川畑文子物語」(講談社)など著書多数。06年にニューヨークのジャパン・ソサエティからの招聘を受けて滞米研究。07年イタリアのダンス・フェスティバル『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクター、08年ソウル・ダンスコレクションの審査員を務める。現在は月刊「シアターガイド」、月刊「DDD」などで連載中。http://www.nori54.com/

井手茂太
1995年イデビアン・クルーを旗揚げ。カンパニーの作品発表をベースに、演劇作品の振付及びステージングや、CM・PV・コンサート等で、振付家として幅広く活動する。また、ダンサーらしからぬ体型で繰り出される、しなやかで弾力のある動きは観る者の目を離さず、ダンサーとしての注目度も高い。近年では、椎名林檎率いる東京事変PV「OSCA」やNHK教育「えいごであそぼ」の振付、SAKEROCK・PV「会社員と今の私」の振付・出演など。写真:(C)Mina_OGATA

伊藤キム
1987年、舞踏家・古川あんずに師事。 90年ソロ活動を開始。95年「伊藤キム+輝く未来」を結成。96年フランス・バニョレ国際振付賞を受賞。01年第一回朝日舞台芸術賞寺山修司賞を受賞。05年「愛・地球博」の前夜祭パレードで総合演出をつとめる。同年『禁色』(原作・三島由紀夫)を発表。階段を使った『階段主義』や学校や美術館などパブリックスペースのを使った作品も多い。05~06年、バックパックを背負って半年間の世界一周の旅に出る。07年春より「伊藤キム+輝く未来」から「輝く未来」にカンパニー名称を変え、新たな形態でカンパニーを再始動した。08年横浜文化賞奨励賞を受賞。現在、京都造形芸術大学准教授。

中村恩恵
横浜生まれ。舞踊家。1991 年から現代の舞踊界のリーダー的なカンパニー、ネザーランドダンスシアターで主要ダンサーとして踊ったのち、オランダをベースにフリーの舞踊家として活動。近年では自らの舞踊活動のかたわら、キリアン作品のコーチとしてパリオペラ座をはじめ、世界中のバレエカンパニーやバレエスクールで作品指導にあたる。07 年、横浜に舞踊活動の拠点として、Dance Sangaを設立。Noismのために振り付けた作品"Waltz"が評価されて08年の舞踊批評家協会の新人賞を受賞。 写真:photo NOMO

Dance Theatre LUDENS(岩淵多喜子・太田ゆかり)
1999年設立。代表作として、人と人の関わりに視点をあてた「Be」「Es」「Distance」(パークタワーネクストダンスフェスティバル委嘱作品)、身体と重力をテーマに「Against Newton」(新国立劇場委嘱作品)、時をテーマに「Moments」等を発表。01年「Be」にて横浜ソロ×デュオコンペティションにて横浜市文化振興財団賞及びフランス大使館賞、「Distance」にて平成16年度舞踊批評家新人賞受賞。国内をはじめ、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカの著名なダンスフェスティバルより招聘を受け作品を上演。また、レジデンス活動や東京国際ダンスワークショップを主催する等、国内外で創作、公演、普及活動を展開している。http://ludens.at.infoseek.co.jp/

熊谷和徳
15歳でタップを始め19歳で渡米。ニューヨークを拠点に活動し「日本のグレゴリー・ハインズ」と評される。現地タップフェスティバルには、02年より5年連続で出演。日本では、熊川哲也、金森穣、森山開次などのダンサー、また、上原ひろみ(ジャズピアニスト)をはじめ様々なミュージシャンとのコラボレーションが話題に。 現在はNYと日本を拠点に更なる飛躍を試みている。 また、ライブ活動に加え、子どもや初心者を対象としたワークショップなど、タップの楽しさを多くの人に広める活動にも積極的に取り組んでいる。