演出・松村武さんインタビュー

広報です。

今回のスペシャル記事は演出の松村武さん(カムカムミニキーナ)のインタビューです。

去る2月6日、ちょうど稽古中日のころに、本作のことから演劇に対する思いまで、たくさんお話しいただきました。

松村武さんインタビュー1

■稽古の状況

ちょうど中日ですね。
今日までに2回、通し*をしています。
自分たちの劇団で作品を創る時は、本番1週間前くらいに最初の通しが出来るような感じで創っていく事が多いので、
いつものペースからすると早いです。
すでに全体の最終形みたいなものは見えてきて、それをいかに安定して出来るか、という段階まで来ています。
良い状態で創ったシーンをちゃんと再現し、稽古場で作った面白さをしっかり舞台上で表せるか、細かい部分を微調整
している状況です。

劇団では細かく演出を付けたり、同じシーンを延々繰り返したり、やってみせた方が早いと思えばそうする事もしますが、
「BEN」の俳優達にもほとんど同じような演出をしています。
「BEN」の俳優たちは、実力はあるけれどまだベテランの域ではありません。
演技の幅というか、一通りの事は得意だけども正反対の事はまだまだ、という人が多いと思います。
あと2週間かけて、今の時点からさらにもう一段面白く、熱や魂の入ったお芝居にしていきたいと思います。

* 通し=最初から最後まで、止めずに全体を通して行う稽古

■小劇場演劇に対する思い

小劇場での演劇は"演劇に純粋な人達が作っている"というイメージです。
これまで、そういう「小劇場精神」というのを一番大事にして、小劇場演劇にこだわって作品を創ってきています。
役者も演出家も、「この芝居を成功させよう!」という事に対して迷いが無い人達が集ってくると思っています。
そういった、他の何より『作品の質』を優先上位に置いて行動するって事が基本にある精神だと思って大事にしていますね。

松村武さんインタビュー2

 ■「BEN」の見どころ・面白さ

地域発信で、地域の役者が出演し、地域の会社を題材とし、演出家が滞在してガッツリ作品を創るということは、演劇の強み
である「局地性」の最たるものだと思っています。
映像の場合は作品を移動出来るし、複製もどんどん出来ます。そうやって広がって行くものだから、観る方・受け入れる方は
動かなくていい。
待っていれば良いわけです。
演劇は対照的に、ある決まった場所で行われるから、そこにみんなが向かって行かなければ観られません。
映画のように広がっていくものだと、できるだけ多くの人に喜んでもらうことを考える必要がでてきますが、局地的なモノである
演劇は、そうした事を必ずしも考えなくて良いのが利点だと思います。
今回の「BEN」は、そんな演劇の中でも特に局地的な作品だと思います。

今回、TOTOさんの話を芝居のモデルにしていますが、稽古場で地元の俳優たちが、
「昨日電車でTOTOの社員の方を見かけた」とか、
「社員の人の作業服はこうだったよ」といった話をしているんですね。
こういった話は普通の稽古場では無い事です。
また、北九州の昔の様子を知っている俳優が、
「紫川はどの辺からどろんこで、いつ頃からきれいになった」
といった話をしたりしています。
また、野菜を買ってくるシーンがあって、
「1970年当時は、どんな風にして野菜を買っていたんだろう」
という疑問をみんなで色々話したんですが、地元の飲み屋のおばちゃんから、
「この辺の人なら基本的に旦過市場で買う。良いお店なら新聞紙でくるんでくれる。」
という正解が出てきて、
「あー、やっぱりそうなんだ」
って事になったり。
そういう時間が芝居に反映されることが、まさに地元で地元の芝居をやる良さでは無いかな、と思います。

「村歌舞伎」と言って、地域で、地域の人たちだけで行われる歌舞伎がありますが、それは本来の歌舞伎以上に歌舞伎の濃さ
があったりします。
そういう濃さが今回の「BEN」にもあるのでは、と思います。
ものすごくピュアというか、原液みたいな......
薄めていない、原液の演劇みたいな感じがします。
普段複製されたモノだけを受け取っている方たちにとっては、出会えない濃厚さです。それが「BEN」の最大の見どころではない
でしょうか。

「BEN」の面白さについてたっぷりと語っていただいた松村さん。
そんな松村さんに、おまけとばかりに聞いちゃいました。

松村武さんインタビュー3


Q1:「BEN」では昭和~平成の時代の流れも一つのキーですが、松村さんが「時代が変わったなぁ...」
と実感した出来事はなんですか?

A:
うーん、意外と難しいですね......
あんまり安易なこと言いたくないしなぁ......(笑)
あ、「ワープロが無くなった事」っていうのはどうでしょう。
僕は当時ワープロで台本を書いていて、もちろんパソコンも持っていたけど、もったいないし、ワープロの方が使い慣れていたのでそのまま使っていたんです。
ところがある時からインクがお店から消え、感熱紙も買えなくなっていったんですね。
それで仕方なくコンピュータを使い始めたのですが、ワープロのデータってコンピュータに移行できないじゃないですか。
その時にすごくショックで。
しかもワープロの最後って、すごく急で、本当にあっという間にコンピュータになっちゃったんですよね。
それがとてもショックでした。

Q2:北九州芸術劇場にいらっしゃる方々に大人気の地元チェーンの「資さんうどん」。
松村さんも良く行かれているそうですが、好きなメニューは何ですか?

A:
あえて選ぶとしたら持ち帰りメニューの「からししいたけ」です。
お酒のおつまみにオススメです。
資さんうどんは店の雰囲気も面白くて、天ぷらやおでんもあってちょっと飲むのにも良いし、何よりうどんが格別に美味しいので気に入っています。


松村さんは、お忙しいところありがとうございました。
いよいよ本番まで7日です!
小劇場ならではのパワーと、地域の面白さがギュッと詰まった「BEN」。
どうぞお楽しみに!

北九州芸術劇場プロデュース公演について

※2008年より始まった“北九州芸術劇場プロデュース公演シリーズ”とは
1.北九州を感じさせる内容
2.第一線の演出家が一ヶ月以上、北九州に滞在して創作
3.出演者は北九州、福岡をはじめ地元の人材中心にオーディションで選抜
4.スタッフは劇場や地域のメンバー中心の布陣
5.東京公演を実施し中央へも発信
という5つのコンセプトをもとに創られています。

2012年10月

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