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 北九州芸術劇場が毎年実施している、演劇に関する講座「劇場塾」2006年版サイト。戯曲講座や俳優講座などを実施。 |
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北九州芸術劇場が毎年実施している、演劇に関する講座「劇場塾」2006年版サイト。戯曲講座や俳優講座などを実施。 |
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今日の提出はそれぞれ20ページ〜30ページと、とりあえずは順調な様子。
前回はそれぞれの提出枚数も少なかったので初めに音読を行いましたが、今回は音読なしで作者に大まかな内容を説明してもらっての講評です。
植物状態の次女が一時退院をして家に戻って来る話を書いた作品で、寝ている次女のベッドが置かれた部屋で家族が揃ってご飯を食べるシーンがありました。
これは「かなり劇的でいい。」と佃氏は言われました。
佃氏自身、昔６畳一間に家族４人で住んでいたことがあり、おばあさんが亡くなった時に祝日を挟んでいたのですぐにお葬式があげられず、死体を2日間部屋においた状態で家族が寝起きをしたという話をしてくれました。
死体がすぐそこにあるにも関わらず、家族は普段通りに一つの部屋でテレビを見たりご飯を食べたりしたそうです。
佃氏は、自身の経験からも植物人間のいる部屋で家族が食事をするというシーンはとても刺激的だと言われました。
この作品では、そろそろ結婚を・・・と考えている長女が自分の家族に植物人間がいるということでなかなか結婚に踏みきれずにいるという設定です。
作者からも「もしも、結婚相手の家族に植物人間がいたら気になるか？」という質問がみんなに出され、様々な回答がありましたが、ある男子受講生は「その植物人間が家族にどれくらい依存しているのかによる。それに、そういうことは結婚直前まで黙っているのではなく、できるだけ早く言って欲しい。」ということでした。
↑提出された作品に対してみんなで意見を言い合います。
陶芸教室に通う5人の男たちを描いた作品があります。
先生の娘が亡くなったお葬式の帰りに5人は喫茶店に集まり、そこでいろいろな人間関係が見えてくるという内容です。
娘の突然の死にすっかり気を落とした先生が教室を辞めようとしているという話が挙がり、教室を乗っ取ろうとする男、その男の娘と交際している男（彼女の父親がどういう人なのかを知るために内緒で教室に通っている）、保険の勧誘目的で陶芸を始めた男（亡くなった先生の娘とは元同級生）、父親（ゲイ）の彼氏と教室に通う男・・・など人間関係は複雑です。
佃氏は、その複雑な人間関係を興味深く引っ張ってきていて分かりやすくうまく書けていると言われました。
けれども一点挙げるなら、登場人物中のある男とその父親の彼氏（一緒に住んでいて父親の内縁の妻のような立場）という設定の二人については、文章中ではその関係が分かりにくいかもしれないと指摘しました。
二人のやり取りや会話から「もしかしたらこの二人が付き合っているのではないか？」と読者に誤解されたり、前半の隠し玉（二人の関係をわざとはっきり書かなかったこと）がずっと隠し玉のまま終わってしまう可能性があるというのです。
佃氏は自分の書いた戯曲の経験からも、見ている人の思い込みというのは初めの思い込みのまま最後までいってしまうことを話され、二人の関係性については注意して書くようアドバイスがありました。
↑自分の作品の大筋を語る受講生。
トランプに熱中する女たちを描いた作品では、賭けトランプの戦利品としてホームレスが連れて来られていて同じ部屋にいるという設定です。
そして、トランプをしていく中であることがきかっけとなりそのホームレスも一緒に銀行強盗をすることに。
佃氏にも同様、間違いを犯してしまう女たちを描いた「Ｓの背骨」という戯曲があるという話になり、
《昔、犯罪者だった女たちが、商店街の仮装大会に出場するためネットで各地から集まるのだけれど、大会は雨で中止になる。せっかくの仮装がもったいないので、その格好のままでフラフラと入った宝石店で強盗と間違えられ、盗るつもりはなかったのに手にあった宝石を掴んだまま逃げてしまう・・・。》
踏み外し系には一種のコツがあることを話してくれました。
暗転の後、明りが点いた時にホームレスが一緒にテーブルを囲んでいるという図はかなり面白いのだけど、ここではホームレスも普通にトランプに参加するのではなく、嫌でも参加せずにはいられないような物理的な理由があった方がよいということです。
そうして、何とかヒートアップして、引くに引けない状況に持っていきたいと言われました。
警察の交通安全運動の講演会のイベントで、控え室に集まったピエロ（大道芸人）、演歌歌手とそのマネージャー、警察署長、イベント会社社長の5人が巻き起こす騒動を書いた作品では小ネタが満載です。
佃氏から「盛りだくさんな内容だけど、話の求心力がどこに行っているのか分からない。誰が中心人物？」と質問されると、受講生は「イベント会社社長を軸に書いていたつもりが、実は行き詰っていて・・・。」と告白。
佃氏はあれこれ展開のパターンを語り、「誰の目線で書いて作者自身が一番楽しめるのか？（物語の中に入ってみて自分が体感して誰が一番楽しめるのか。）」ということを頭において書き進めていくといいとアドバイスされました。
↑「俯瞰するとコメディはわりと難しいからね。」と佃氏。
来週は講義もいよいよ最終回、最後まで書き上げての提出です。
書き上げた提出作品からリーディングの候補を4つに絞り、その中より2作品がリーディングとして上演されます。
最後まで気を抜かないよう、みなさん頑張って下さいね。
いよいよほぼ全員が書き始めていて、今回は戯曲の出だしの部分が提出されています。
小学校のPTAの役員をしている父親4人とクラス担任の教師を登場人物に書いた受講生に佃氏から「書いていてどんな調子？」と質問がありました。
「登場人物の一人一人を登場していく時に説明しながら書こうと思って書いていったけど、それぞれ誰なのかきちんと書けていないような気がします。」という答えが返りました。
佃氏は、読んでいる限りその心配はなく、その代わり作者が軸に置こうとしている人物が読み手の予想する人物とは異なることを指摘しました。
作者が中心に置こうとする人物が担任の教師であるなら、戯曲の前段階で彼が不在がちなのが気になるというのです。
それから、これは他の受講生も同様、話の展開が早くなりすぎていると。
「この感じだと20〜30分の話で終わってしまいそうな気がするんだよね。これから先、手詰まりになるのでは・・・？」と言われました。
佃氏は「例えは、コラムでりんごの話を300字で書くとしてどう書く？」とみんなに質問し、そのりんごが青森産の“つがる”であることや、生産した農家について、栽培方法を書くなどの答えが返りました。
「それじゃあ、5000字で書くとしたら？」という質問には、アメリカと日本のりんごの対比、文学作品におけるりんごの扱われ方、りんご以外の果物についての話を書くという答えが。
佃氏は、それと同様で1時間ものの戯曲を書くときは一つの話では時間がもたないので、関係のない（直接的ではない）話をいくつか入れて広がりをもたせる必要があることを話されました。
↑今日は欠席多くが多く、佃氏以外は全員女子の講座風景。
シェルターで暮らす人達を書いた作品では、前回と中心人物が変わっていました。
佃氏は、「北村想さんの作品にもシェルターを描いたものがあるんだけど、それが浮かぶなあ。」と言い、その『ザ・シェルター』の話をしてくれました。
受講生の書く話では、シェルターの外で灰色の雪（実は新型の化学兵器）を浴びると発症して死んでしまうという設定です。
これについても「どのくらいで発症するの？」「うつるの？」と佃氏は質問し、受講生はまだ具体的には決めていない様子。
そして、他の受講生が提出しているような現実的ではない（？）唯一のこの作品に対して、「せっかく（戯曲の世界では）何でもありなのだから、こじんまりしてしまうよりは自分の好きなように書いてみれば？どんな風にでも利用できるんだから思い切りやっちゃって下さい。」とも言われました。
受講生の方も、「雪を浴びて遅かれ早かれ死ぬのであれば、他の人も皆（自分の子供でさえも）殺してしまおうとも考えている。」と話し、なにやらすごい展開になりそうです。
↑「北村想さんの『ザ・シェルター』よりも面白くなるかもしれないよ。」と、佃氏。
植物状態の次女が一時退院をして家に戻ってくる話を書いた受講生は、「書き出してみて思ったよりラストまでが遠く、これからどうなるのだろう？」と不安になったと言います。
出だしの、母とお祖母さんの電話の会話によって次女が退院することを知らせたいという作者に、佃氏は「もったいない！」と一言。
「そうではなく、次女が“今、着いた”ところで始まるのだから、これを大事にしたい。」と言われ、「舞台ではやっぱり見た目って大きいんだよね。聴く情報よりも見る情報なんだよ。長女が初登場するシーンにしても、普通に部屋に入ってくるのではなく里帰りの格好で今実家に帰って来たという出方の方がいい。」とアドバイスされました。
他にも、作者は当初三女を悪い子に設定してあったのを前回では良い子に変え、今回はまた悪い子に戻したりと、いろいろと考え悩んでいるようです。
↑提出された作品をまずは音読。ＯＬ役を担当し、なりきって声に出して読む佃氏。
「社内風紀向上委員会」のOL5人を書いた作品では、頭から9ページが提出されていてなかなかの進み具合です。
作者は全員すごく性格の悪い女として描いたということでしたが、他の受講生からはそこまで嫌な感じはしないとの感想でした。
佃氏からも、OLの会話の中で「仕事とは関係のない話、本当にただの悪口を間に入れてみては？」とアドバイスがあり、「最終的に小さくまとめてしまわないで、どんどん修羅場にしてくれていいからね。誰かが殺されそうになるくらい・・・手に負えないくらいがいい！」ということでした。
いよいよ、講座も残すところあと2回。
次回ではそれぞれの作品の半分くらいが見えてくるのではないかと思います。
今回は書きたいものを全員テキストにまとめてきていて、前回のように口頭だけの発表の人はいませんでした。
初めの受講生の作品は、とあるお寺の居間に水子供養に集まった女5人の話です。
登場人物の女のうち一人は、お寺の住職の奥さんで妊娠できない身体。
二番目の女は不妊治療の末にやっと妊娠したけれど、階段から滑り流産。
そのことを夫や夫の両親に責められ、自分は単なる子どもを産む道具に過ぎなかったのか・・・と思い悩んでいる。
三番目は夫の暴力のせいでせっかく妊娠した子どもを流産。夫は酒を飲まない時はとても優しく、自分がいないとダメな人。
とはいえ、夫のほうが依存しているようで実はお互いに共依存状態。
4番目は大学生。
付き合っている人の子どもを妊娠したが育てられないので中絶。
けれども相手はその辛さを理解せず、自分もまた軽率な行動で一つの命をなくしてしまったことに苦しんでいる。
5番目は性同一障害で、身体は男であるが心は完全に女。
子どもを産みたくても絶対に産めない。
と、それぞれが個人的な事情を抱えながら水子供養の説法で有名な住職の話を聞きに集まったのだが、肝心な住職はカラオケに行っていて留守。
そこに集まった女たちがポツリポツリと話をし始めるという設定です。
妊娠、中絶、流産・・・etcと、子どもを産まないあるいは産めない様々な状況を設けているものの、佃氏から突っ込んだ質問が出されると受講生は細かいところまでは考えていなかったようでした。
「2番目の女は何歳？」という質問では「20代半ば」という答えが返り、その年では子どもを産めるチャンスがまだあるので説得力に欠けるということです。
「例えば30代後半とかにして、後にチャンスがない方がよいのでは？」とアドバイス。
「4番目の女の彼氏は具体的にどんな人なのか？同じ学生なのか社会人なのか？」
佃氏は、相手も学生だと学生結婚という可能性もあるから不倫である方が中絶する理由になりやすいと言われました。
それから、女たちがどこから集まって来ているのかも大切だということです。
「水子供養で有名な住職の噂を聞きつけてわざわざ集まって来ているくらいなので、近くではなく全国各地からにする方がいい。（※物理的欲求は大きいほどいい。）例えば、ネットで住職の奥さんが自分と同じような仲間を集めたい為にネットか何かで嘘の情報を流し、それによって女たちが集まったという話でもいいかも。」と。
この作品の考案者である受講生はまだ若く男性なので、こういうテーマはどうしても難しいのかもしれません。
佃氏は「今回で固めて明日から書き出せるようにしないともう間に合わないけど、書けそう？」と聞くと、受講生は「なんとなく。考えなくてはいけないことが分かってきた。」と答えていました。
↑佃氏がホワイトボードに書いた絵。
２つ考えてきた受講生もいて、時間の都合で今日はどちらか一つを講評することに。
どちらも力作でなかなか決めかねていましたが、うち一つを選択。
「ババヌキ」というタイトルで、その名の通りババヌキをものすごく真剣にしている女5人の話です。
5人の女たちは「トランプ好きの会」というサークルで顔見知りになり、あることがきかっけで再来週銀行強盗をすることになりました。
そして、今まさにメンバーのうち一人の女の部屋でババヌキをしていて、それで銀行強盗の役割を決めようとしているという設定です。
ババ（一番やりたくない役）は金を直接脅し取る役で、アタリ（一番楽な役）は運転手、その他にも見張り役などを巡って大真面目のババヌキが展開されます。
メンバーの中には強盗を予定された銀行に勤める者もいて、彼女はこの強盗の首謀者。
お局（つぼね）的存在で銀行ではここ何年か煙たがられていて、そのことに対し仕返しをしようと強盗を計画。
佃氏によると「局くらいで銀行に仕返しするというのでは少し弱い。特定の人間に恨みを持っているというほうが自然。」ということです。
「重要なのは銀行強盗するよりも何故そんなにトランプにハマるようになったのか？多額の借金を抱えていたりどうしてもお金が必要な理由があって、それが銀行強盗のきっかけになれば話は早い。」と佃氏は言い、「徹夜の（賭け）トランプで何日も経っていて、戦利品として部屋の中にドラム缶など変なものが置いてあったり・・・・例えばその中に一人関係のない人がいても面白いんじゃない？全然知らないおばさんが（戦利品として）連れてこられていたりして、その場にちょこんと座っているとかね。（笑）それで、そのおばさんがものすごい借金があって銀行強盗の計画に乗り気になってみたりして！？（爆）」
アイデアがどんどん出たところで、「あ〜、なんかもうこれ書けそうだな。俺がもらいたいくらい（笑）！いいね。いいね。」と楽しそうな佃氏。
そして、「今どき、自分たちがこんなこと無理だろうと思いながら書いてもみても実際に（事件として）起こる世の中だからなあ。ホントに怖いよ。」とも言われていました。
↑講座風景。
北九州市内だけでなく県外から参加の受講生もいます。
前回のアイデアを練り直して、登場人物は変わらず内容に変化のあったものもありました。
中にはすでに書き始めていて、頭から8枚の戯曲を提出した人もいました。
全8回の講座のうちの5回目なので、みんなそろそろ書き始めなくてはならない時期です。
今回の宿題はいったん書けるところまで書き、それを次回までには提出するようにということです。
先週、受講生のうち一人の劇団の公演が行われたようで、観に行った人も何人かいました。
みんなでそのお芝居についての話をした後、佃氏が一枚のチラシを配りました。
それは、佃氏が作・演出する劇団うりんこの「パイレーツ オブ 花山田小学校」という公演のものでした。
子供のためのお芝居の上演を行う劇団うりんこに依頼され、本当は昨年の冬休みに上演する予定だったのが延長してこの夏になったとのこと。
その戯曲を書くのに、昨日は久しぶりに完徹したそうです。
「児童劇は4,5本目になるけれど、書いていて不安になることも多い。」と佃氏は言います。
なぜならば、子供たちは正直なので退屈だと絶対見ない、それが怖いのだとか。
飽きるといけないから会話の途中でアクションを入れなくては・・・etcなど、普段以上に気を使うとも言われました。
「このお話はタイトル（パイレーツ＝海賊）にもある通り、なんとなく想像がつくじゃない？それを期待通りにしつつ、それを超えなくてはならない！と思ってかなり手こずった。でも、このお芝居が夏休みに上演されると（児童劇は全国の小学校などあちこちまわるので）もしかしたら九州にもやってくるかもしれないなあ。そうなると不労収入が入る！いいんですよ、児童劇は。（笑）」と佃氏はニヤリ。
↑「パイレーツ オブ 花山田小学校」のチラシより。
佃氏も海賊になっています。
前回、男5人or女5人の登場人物で１シチュエーションの芝居のいつ、どこ、だれ、見たいところをまとめてくるよう宿題が出ていました。
テキストにまとめてきたのが4人で、あとは口頭による発表です。
小学校のＰＴＡの役員をしているお父さんたちと若い担任の先生の話、ある会社の「社内風紀向上委員会」のメンバーであるＯＬの話、デリヘルに働く女の話など、いろいろありました。
「社内風紀向上委員会」のＯＬの話では、登場人物は20代から40代までで、独身、既婚、不倫、離婚を経験していたりとそれぞれの背景も様々です。
作者は、「40代の局は大らかだが時として辛辣。包容力もある。」など登場人物一人一人の性格まで考えて来ていましたが、佃氏はひとまず性格は無視してまずは事実だけで書いてみるよう勧めました。
初めに登場人物の性格など細かいところまで決めてしまうと話が展開しにくくなるということです。
書き進めていくうちに、それぞれの性格は見えてくるのだとも言われていました。
大前提として、風紀向上委員会のメンバーに選ばれているのはどういうひとなのか？（単純に仕事ができるのかできないのか？）
また、途中で新しく参加するメンバーがいるが、その人自身のこれまでの委員会に対する印象や、なぜその人がメンバーに選ばれたのかということをはっきりさせることも大事だと言われました。
佃氏は「出だしの頭のシーンは見えてる？」とも質問され、会合が行われる会議室にメンバーが一人ずつ入って来るところから始めるのか？と具体的な展開を挙げ、「そうなってくると、もう『よーい、ドン！』で書けるからね。」ということです。
↑受講生の話をホワイトボードに図を書いて
分かりやすくまとめる佃氏。
母親と3人（全員20代）の娘のいる家庭で、次女が10年前に交通事故に遭い未だ植物状態で入院中。
長女は銀行勤めで現在一人暮らしをしている。
次女が一時的に退院し家に帰ることになり、その間に長女が内緒で（昔家を出て行った）父親に連絡をとり、父親も帰って来て家族全員が揃うという話がありました。
10年前母親と上の娘2人が一緒の時に事故は起こり、母親が長女をかばったために次女が車に轢かれ植物状態に。
その事故で母親が次女をかばいきれなかったことに父親は腹を立て蒸発。
長女も一人だけ事故で助かったことに負い目を感じていて、社内恋愛中の恋人がいるけれど自分だけが幸せになるわけにはいかないと結婚に踏み切れないでいる。
事故のせいで母親が次女にかかりっきりとなり、おまけに父は蒸発という思春期を過ごした三女は家族にかまってもらえない寂しさから非行に走り、現在は女子大生だけどキャバクラでバイト中。
加えて、三女は次女を介護する看護士の夫の浮気相手でもあるという設定です。
盛りだくさんな内容に、佃氏は「まず、父が蒸発というのがちょっと分からないなあ。」と言い、これは父親がいなくても書けそうだということになりました。
「父親が帰ってくることよりも植物状態でずっと入院中だった次女が帰ってくることの方が大事件。初めからいなかったことにしてもいいし、父親なしでもう一度プロットを書いてみて。それでがんばって1時間くらいのものを書いたほうがいいものが出来そう。その代わり、もっと具体的に母親の仕事や長女の会社での状況、次女が事故に遭うまでどうやって3姉妹が暮らしていたかなどを考えてみて。」とアドバイスがありました。
他に、山奥の村にあるスナックにネットのオフ会で集まった男たちの話や、ある人気アイドルが恋人と密会するとの噂を聞きつけネットの掲示板を通じて集まってきた女の子たちの話などもあり、２つの話を考えてきた受講生も数人いました。
みんなアイデアはいろいろとあるようで、聞いているとどれも面白そうな話ばかり。
その話を具体的に１時間の作品にするよう詰めていくのがこれからの課題で、どう膨らんでいくのか気になります。
今回発表しきれなかったものは次回に繰り越し発表です。
↑アートライブラリー（リバーウォーク5階）の入口。
ライブラリーには佃氏の書籍も入荷しています。
前々回からの発表の続きから行われます。
夜中の公衆トイレに女性が一人でやって来て、便器に向って胸のうちにある思いを吐き出し日々のストレスを発散するという作品です。
一人芝居の作品かと思っていたら、演出はなんと6人の受講生（女子）を指名し、トイレ役として1人の男子受講生を指名しました。
演出が言うには、6人の出演者はみなそれぞれ同じ髪型同じ服装だけれど、全員が同じ動きをするのではなく他の人を意識してもよいということです。
初めに入ってくる時は一列に並んで順番に登場し、トイレの戸の前まで来ると初めはお互い譲り合いながら便器へ進んでいたのが、途中から譲り合いはなくなりそれぞれが争って前に出るよう指示がありました。
出演者のみんなも想定外の演出にはもちろん、台詞の面白さもあって演じながら笑いが絶えません。
一人の人間を複数で演じるというのは作者の中にもなかったようで、「（作品が）僕の手を離れていったな、という感じです。（笑）」と感想を述べていました。
↑左端がトイレ役の男子。（伸ばしてある左手はレバー。）
「ここを押して水を流すんですか？」と質問する受講生。
そして、いよいよ前回出された新しい課題の講評に移ります。
他の受講生の宿題は先ほど渡されたばかりなので、初めに作者より登場人物、時間、場所など大まかに内容説明が行われました。
初めの課題では時間（真夜中）と場所（公衆トイレ）という制約がありましたが、今回は自由なので現代のものから昭和40年代頃を想定したものなど内容も実に様々です。
場所は真夜中の精神病院、過食症で入院している中年女性と少女と若い看護士（男）のやりとりを描いた作品がありました。
佃氏から「書きたかったものは何？」と質問がありましたが、作者はそこまで深く考えていなかった様子。
「何も思いつかなくて家にある薬箱を開け、その一番上にあった薬が『芍薬甘草湯』（足が攣ったときに飲む薬）だったためタイトルに付け書いた。」ということです。
佃氏はそれを書いた作者の“衝動”が大切で、今ある“衝動”を書くことでそれが自分に振返ってくると話し、今のままではツメが甘いと言われました。
いろいろと話をしていく中で、実際に作者が勤めている病院で父親はおらず母親が水商売で夜家にいないので寂しいから食べてしまう過食症の少女がいることが分かりました。
作者はその子を思って書いたと言い、佃氏は「そういう話の方が面白い。例えば、中年女性のほうも、一人暮らしで旦那もいなくて寂しいので食べてしまう・・・などの背景がないとそれぞれの登場人物が薄っぺらになってしまう。いちいち背景を説明する必要はないけれど、書く時に作者が認識している事が大事。」と言われました。
↑精神的ストレスから、自分の中にもう一人の人間が
存在する設定の作品で、“離れられない二人”を実演中。
次は、「不条理というものを書いてみたくて『こんなことなのかなあ。』と思いながら書いた。」という作品です。
冒頭で、男が道端でバナナを食べながら彼女を待っているという設定に、「こんなのありえないでしょう！？（笑）」と、早速佃氏に突っ込まれます。
それだけではなく、男が食べ終わったバナナの皮を投げ捨てると、そこには一人の女の死体があるというのです。
そこに待ち合わせていた彼女が現れ、その死体を持ち帰って「飼いたい。」と言い出し、あれこれやりとりがあった後二人で死体を抱えて退場するという内容でした。
作者はわざとありえない状況を設定し、ビジュアルとしての狙いがあったということでしたが、「はっきり言ってこれは不条理ではないです!（笑）」と佃氏。
「初めからおかしい人間が出てきておかしなことをやっていると『コイツ、バカなんだ。』と思ってみんなは見てしまう。不条理にしたければ、どちらかが初めはまともで少しづつズレていったりする方がいい。」と言われました。
大学生の男女を書いた作品では、「自分がすっかり大人になってしまっているのでその年代の頃を思い出すのが難しく、（作品中の）言葉遣いが変なのでは？」と心配しているという作者談がありました。
佃氏も若者の言葉使いについては同様の経験があるらしく、「テレビ『恋の空騒ぎ』などで女子大生が使っていた言葉使いを参考にして自分の戯曲の中で書いたりしていると、俺もものすごく恥ずかしいんだよね。」と話されました。
↑「前回、じんわりした話を書いたので、今回は
ちょっとハードボイルドなものにしようと思ったんです。」
と語る受講生。
美しい女がスリップ一枚で血だらけになって死んでいる姿が登場し、ある密輸組織でのダメな男とダメな女を描きたかったというハードボイルドな作品もありました。
雷鳴やタバコ、中国語が話せる美人、イタリア語なら少し話せるというチンピラ、オペラ「椿姫」の一節を口ずさんだり・・・etc盛りだくさんな内容です。
佃氏は、「アイテムがいろいろと駆使されすぎていて、本物らしく見えないのがもったいない。」と言い、「死体を森の中に埋めたりするのはすごく足が着きそうだし、どうしようもない男を何故そんなヤバイ組織が使うのか？というのもとても気になる。」とアイテムとのバランスの悪さを指摘しました。
とはいえ、いくつか不条理系（？）の作品が続いた後なので、「こういう作品が出てきてホットした（笑）！」とも言われていました。
全員の課題が講評された後、次回の宿題の発表です。
「僕からみんなに発注されたと思って、男5人もしくは女5人の登場人物で1シチュエーションの芝居を書いてみて。」とのことです。
戯曲を書き上げてくるのではなく、次回までにタイトル、いつ、どこ、だれ、そして見たいところをまとめて来るように言われました。
案は１つでもいいし、いくつかあればいくつでもＯＫだそうです。
先週行った課題の発表の続きから始めます。
最初の作品は登場人物が多く、男３人女２人と総勢５人の出演者が必要です。
発表を終えて作者の感想は、「人を多く登場させすぎた。そのせいで、出ている人が舞台で自分の台詞のない時に暇そうにしているのが気になった。」ということでした。
この作品は、主人公の男性が子供の頃によく遊んだ公園に来てみると、当時の滑り台やブランコ、さるすべりなどが人間の形をして登場し、昔懐かしい思い出話をするというもの。
佃氏も「物が人になっているところは面白いと思った。でも、いきなり人がやって来て『俺、滑り台だよ。』と言うのも変な感じがする(笑)。」と言われ、「始終思い出話になっていて、思い出で人が立ち直るというのは気に入らない。登場人物が今の関係性で話すと話がもっと面白くなる。」とアドバイスされました。
↑受講生(演出）から出される指示をメモする佃氏(出演者）。左は泊氏。
次の作品は登場人物が野球部の先輩後輩による二人芝居です。
作と演出が男性なので（受講生のうち男性は３名、うち１人は遅刻で不在のため）、出演可能な男性がいません。
ということで、急遽佃氏と学芸係の泊氏が参加することに。
二人芝居を佃氏（名古屋の「劇団B級遊撃隊」主宰）と泊氏（北九州の「飛ぶ劇場」代表）でするというのですから、これはかなりの豪華共演（？）です。
演出から「ちょっと怖いのでもう少し軽めに演じて下さい。」と指示が出された佃氏は「演技は難しいなあ。」と苦戦している様子。
泊氏にも「もっと軽く。頭の悪そうな感じで！」と注意が入ります。
相手が誰であれ演出家の指示は絶対のようです。(笑)
演出家により何度か直しが入ったものの、作者はこの豪華共演を見て「面白かった。かなりイメージ通り。」と感想を述べていました。
この作品にはラストがどうなるのかはっきりと描かれていないのですが、見ている受講生たちの解釈もそれぞれに分かれました。
佃氏は、「ラストについてはどっちでもアリだと思う。この作品がうまいところはいろんな見方ができるところ。どう考えてもそうなるしか成立しないような戯曲よりも可能性が広がって良い。」と言われていました。
↑老婆役を熱演する男子受講生(左）。
初めは知らない同士の受講生たちでしたが、課題の発表を行ううちにそれぞれの個性も見えて来て、回を重ねるごとに登場人物ともマッチする人選が行われているようです。
出演者は演出を担当する受講生から発表直前にいきなり言い渡されるのですが、指名があれば自動的に出演しなくてはなりません。
中には劇団に所属しているもののこれまで役者の経験がない人や演出の経験がない人もいますが、みんながんばって発表ではなんとか形にしています。
友人同士である男女のやりとりを描いたある作品の中で、「男と女に友情は成立するか？」というような話になりました。
受講生の半数以上は成立するという見解でしたが、佃氏は「実感として俺はないなあ。世代のせい？」となかなか納得がいかない様子です。
これに関しては、みんなのいろいろなエピソードも飛び出し話題はつきません。
これまでも映画や小説など様々な作品で取り上げられてきた永遠のテーマですが、どちらかにハッキリ断定するのは難しいようです。
結局、男と女の友情について、昔はないが今はある（？）というようなムードでここは区切りをつけ、次の発表に進むことになりました。
オコジョという動物の登場する作品があって、それに関しても質問や意見が飛び交います。
まず、作者が言うにはオコジョとはイタチのような小動物で霊的な性格を持っているとのこと。
それを踏まえてちょっとオカルト的存在として登場させたかったと言います。
演出をする方でもいろいろと調べてきていて、�．�コジョは基本はあまり動かず、�∩�るか飛ぶかする、��時々「フッー」と鳴き、�い靴�もすごい近眼である、と追加します。
そういった情報が入った上での発表なので、オコジョ役の受講生も演じるのに奮闘していました。
↑「“女2人＋男1人”こういうユニット(劇団）から依頼されたと思って書いてみて！」と、次回迄の宿題を発表する佃氏。
講座の終了時間を延長して発表が行われましたが、全てをやり切るには時間が足りず、残った２作品は次回にまわされることに。
次は３週間後ということで、佃氏より締切を設け１５分（原稿用紙7〜８枚）の短編を提出するよう宿題が出されました。
これに関しては、前回のように時間と場所の指定はなく自由に書いていいそうです。
ただし、登場人物は女２人＋男１人、１シュチュエーションで。
「もしも、困ったらこの中のメンバー(受講生)を想定して宛て書きして下さい。」ということです。
個性的なメンバー揃いなので宛て書きも面白そうですが、次回どんな新作品が出てくるのかとても楽しみです。
今回講師を務めるのは平成17年度岸田國士戯曲賞を「ぬけがら」で受賞した佃典彦氏です。
初めに、担当の泊さんより佃氏の紹介がありました。
そして、佃氏より自己紹介です。
佃氏の「僕の本を読んだことのある人はいる？」という質問では何人かの手が挙がり、図書館で借りて読んだという受講生もいました。
（北九州芸術劇場 芸術文化情報センター＜リバーウォーク５階＞にあるライブラリーでも佃氏の戯曲「土管」「ＫＡＮ−ＫＡＮ男」「ぬけがら」は近日入荷予定です。）
↑泊さんに紹介され、「なんだか緊張するなあ〜。」と佃氏。（写真左）
佃氏は「僕は不条理演劇の系譜に入る作家であると言われている（また自分でもそう思っている）けれど、自分はあくまで“職人”だ。」と言われました。
“職人”とは、つまり依頼さえあれば何でも書くからなのだとか。
佃氏と同じ名古屋の劇作家に天野天街氏や北村想氏がいるけれど、彼らは“天才”で、自分は“天才”を挫折したのだとも言われました。
佃氏は30歳の時に十二指腸潰瘍を患い、「“天才”はこういう時はたいてい脳にくるのに、俺は胃にくるなんてダメだ。まるで中間管理職みたいじゃないか。」と思って“天才”を諦めたそうです。
そして、“職人”と自称するくらいいろいろなものを書いて来た佃氏ですが、基本は１シュチュエーション作家だと言われました。
佃氏の代表的な戯曲のほとんどが１シュチュエーションということです。
1シチュエーションでだいたいのものは書けてしまうという話をされ、今回みんなが1時間の戯曲を書く上でのアドバイスとしても、是非１シチュエーションものを書いて欲しいと言われていました。
実は、この講座申込みに関しては書類審査があり、ここに参加する受講生はその選考を突破した精鋭陣（？）ということになります。
佃氏も提出された課題を見て、なかなかレベルが高いと思ったそうです。
中には、「講座に参加しなくても1時間ものくらい書けるんじゃないの？」という人も。
講座から生まれる優秀な２〜３作品は、この秋に演出家の手を経て「リーディング公演」というかたちで上演する予定なので、佃氏の言葉に早くも期待が膨らみます。
↑佃氏が「昨日の朝まで書いていたやつ！」と配った
流山児★事務所の7月公演（東京）のチラシを熱心に見る受講生。
講義に入る前に、まずは自分がどんな作品を書く作家なのか知っておいてもらった方がいいだろうと、佃氏は自身の書かれたいくつかの戯曲の話をしてくれました。
「土管」・・・部屋（この世）と砂地（あの世）という別々の空間が土管でつながっているという話。
「ヨーゼフという名前の亀」・・・舞台はアパートの1室。部屋の屋根裏にはヨーゼフという名前の亀が飼われていて、住人である男が甲斐甲斐しく世話をしているうちにその亀は部屋と同じくらいに大きく成長してしまっているという話。
「KAN-KAN男」・・・真夜中、踏み切りに喪服を着て箸とビニール袋を持った男が二人居る。彼らの仕事は轢死体の部品を探し組み立てること。そんなKAN-KAN（踏み切りの音から）男たちの話。
「カレー屋の女」・・・佃氏曰く、安部公房の「砂の女」のパクリ！？ある島には（男性に対してのみ）猛毒を持つ蚊が生息していて、男はみな蚊にやられて死んでしまい今では女しかいない。そこに何も知らないカップルがやって来る。その男を島に留めようと島の女たちは・・・。
「ぬけがら」・・・私戯曲。県営住宅の1室が舞台。妻に愛想を尽かされた男（40歳）と認知症の父（80歳）が共同生活することになったある日のこと、父親が突然ぬけがらに。そこにいた父親は20歳も若くなっていて、その後も父親は蝉の脱皮のように繰り返しぬけがらを脱いでどんどん若くなっていく話。
以上、佃氏の戯曲はあっと驚くようなアイデアが満載でどれも本当に面白く、ストーリーを聞くだけでも十分楽しめます。
佃氏も、「こうやって話を聞いていると面白そうだなと思うだろうけど、実際は結果があまりおもしろくないものもあるんだよね。まあ、岸田（戯曲賞）もアイデアでもらったようなものだから。（笑）」と笑っていました。
佃氏は「僕たちが戯曲を書き始めた頃、このような戯曲講座はなかったので見よう見まねで書いて来た。つまり、戯曲は誰にでも書ける。」と言われました。
例えば、医者や伝統職人は見よう見まねではできないけれど、戯曲を書くというのはなんとなくこんな風に・・・と見よう見まねでも出来るというのです。
なので、受講生のみんなにも難しく考えないでどんどん挑戦して欲しいということでした。
↑ホワイトボードを使い図を描いて分かりやすく説明。
タイトルが決まって、いつ（時間）、どこ（場所）、だれ（登場人物）が決まれば作品が出来たのも同じだと佃氏は言います。
佃氏はホワイトボードに地面を現す一直線を描き、その一点をタイトルと表し、その底に何かが広がっている絵を描きました。
「タイトルを決めた時点で、その作品は世の中（地面下）に存在する。それをいかに掘り出すか？まず、当たりをつけて掘り出し始める。トンチンカンなところから掘っても、いくら掘っても出てこない。その時は掘り直し！作品がうまく書けたときはうまく掘り出せたと思っていい。この感覚が大事！！」と言われました。
また、夏目漱石の小説「夢十夜」の中の話「仁王を木彫りで彫るときは鑿で眉や鼻を作っていくのではなく、眉や鼻が木の中に埋まっているのを鑿や槌を使って掘り出すまでだ（仁王はすでに丸太ん棒の中にある）。」を引き合いに出し、こうやって思うと戯曲も何も無いところから作り出すのではないから気楽になると話されました。
そういった作り方をしているので、佃氏はこれまでもあらかじめテーマなど考えたことがなく、書き終わった後で「ああ、そうだったのか。」と思うことも多いそうです。
そして、「プロットらしいプロットも作ったことはないけど、全く何もなしに書き始めることもない。毎回、ノートに“いつ”“どこ”“だれ”を整理して、よく絵で登場人物の相関図を描く。」とも言われました。
台本が1時間半〜2時間のものを書く上で、最初の2ブロック（20分）くらいで大まかな状況は掴ませておきたいということです。
最初のうちに、�‐�況・�◆陛仂貎擁�の）関係・��（作者または登場人物の）欲求を説明にならずにうまく押えておくことが大事です。
「5分程度（長くて20分）の話であればそれだけでも成り立つ。でも、長いものを書く時には、途中、１つ２つ事件が起こり欲求が変わった方が良い。3時間4時間の大作であろうが、この繰り返し。」だと。
という訳で、佃氏によると「基本的には15分のものが書けたら1時間〜2時間のものは大して変わらない＝書ける。」ということでした。
一通り佃氏からのお話があった後は、みんなからの質問タイムとなります。
佃氏のお話の中で言われた「タイトル」に関するものが多く、Q1「タイトルはどうしても最初につけたほうがいいのか？」やQ2「タイトルを掘り間違えたことはあるか？」など。
Q1の回答として、佃氏は毎回劇団の制作から早めにタイトルを出すよう（助成金の申請等もあり）言われているという事情もあって、一番初めにつけるようにしているということです。
佃氏自身、短い文（タイトルはもちろん、キャッチコピーなども）が苦手だそうで、タイトルを決める時も苦戦している様子。
けれども、やはり何かしら最初に無理にでも決めた方が話が進んでいくことも多いし、その言葉を選んだということに意味があり、（先ほど絵で説明したように）すでに作品は存在していると言われました。
「結局書いた内容が初めに付けたタイトルと全然違うこともあるかもしれないけれど、それはそれでよい。別役先生の『春夏秋冬』でも書いてあったし。（笑）」ということです。
Q2に対しては「もちろんある。気取ったことを考えているとダメなんだよね。そんな時は内容も悪い。」という答えでした。
↑課題を発表する受講生たち。
休憩の後は、講座の申込みの際に提出したそれぞれの課題の発表が行われました。
まずは自分の書いてきた戯曲を右隣の人に渡します。
そして、手元に届いた作品を自分が演出して芝居を作ってみようというのです。
もちろんこのメンバーの中で役者もやります。
それぞれ手元にまわってきた戯曲をまず黙読し、演出の立場として登場人物それぞれの欲求と状況をノートに整理するよう指示がありました。
いよいよ一人目の受講生から開始です。
立って一通り読んだ後は、演出が入り動きを付けての発表タイム。
役者をやった受講生の演技力も手伝って（？）、文字だけで読んだ時よりも動きが加わることでずいぶんと分かりやすく戯曲のイメージが膨らみます。
発表の後で作者に感想を聞くと、自分の想定していた状況と少し違うところもあってなかなか思い通りにはいかないようです。
みんなの意見も聞いてみると、なるほどと思う解釈もあれば、深読みしすぎなのでは？と思うものもあったりと様々な受け取り方がありました。
今回は時間が少なく2名の発表に留まりましたが、次回の講義では残りの全員分（8名）を発表する予定です。
佃氏からもレベルが高いと言われただけに、どんな課題が発表されるのかとても楽しみです。
毎年実施され好評の『戯曲講座』を、今年も引き続き実施します。
今年は、名古屋を活動の拠点にするミラーマン劇作家、佃典彦氏を講師に迎え、少数精鋭で次代の劇作家を鍛えます。
描きたいものはあるのに形にならない。
書きたい予感はあるのにどうやって書き始めていいのか分からない。
そんな貴方にぜひ受けていただきたい講座です！
●戯曲講座『ツクダ式戯曲講座』
期間：2006年5月13日（土）〜8月26日（土） 全8回講座
講師：佃典彦
会 場：北九州芸術劇場 創造工房
受講料：15,000円（全8回分・講座初日に徴収します）
応募方法：
専用の応募用紙に必要事項を書き込み、写真貼付の上、課題と共に北九州芸術劇場まで郵送してください。（持参も可。）
なお、定員を超えて申し込みがあった場合は書類選考となりますので、課題は必ず提出し、応募用紙はできるだけ詳しくお書きください。
募集人員：10名
応募締切：5月1日（月）必着
応募資格：高校生以上で、演劇の脚本を書いたことがある人、今まさに書こうとしている人
書類審査方法：
《場所》：公衆便所
《時間》：真夏の深夜2時
《タイトル》と《人物》は自分で好きに決めてください。《人物》は何人登場させても構いません。
講座スケジュール：
(1) 5月13日(土) 14:00〜18:00
(2) 5月27日(土) 14:00〜18:00
(3) 6月18日(日) 14:00〜18:00
(4) 7月 1日(土) 14:00〜18:00
(5) 7月15日(土) 14:00〜18:00
(6) 7月29日(土) 14:00〜18:00
(7) 8月12日(土) 14:00〜18:00
(8) 8月26日(土) 14:00〜18:00
講座について
1時間程度の戯曲を必ず参加者には書き上げてもらいます。その中で優秀な2〜3作品は、2006年秋に、演出家の手を経て「リーディング公演」というかたちで上演する予定です。
佃典彦（つくだ のりひこ）
名古屋生まれ在住。劇作家であり俳優。
劇団Ｂ級遊撃隊主宰、日本劇作家協会東海支部支部長、長久手町民劇団講師、アクテノンシニア演劇部顧問、ＡＡＦ戯曲賞審査員、ＮＨＫ中部ラジオドラマ審査員長、椙山女学園大学非常勤講師、名古屋市立汐路中学校ＰＴＡ会長、佃家家事全般、娘習い事送迎係り、父親介護…など多忙な毎日を送りつつ締切はキッチリ守るので「名古屋のミラーマン（劇作家の鏡）」と呼ばれる。平成6年度名古屋市芸術奨励賞、第5回松原・若尾記念演劇賞、平成17年度愛知県芸術文化選奨文化賞、『ぬけがら』にて第50回岸田國士戯曲賞。