2012.01.24 17:32
「テトラポット」製作発表
去る1月10日(火)、マスコミの皆さんをお招きして「テトラポット」の製作発表が行われました。作・演出を手掛ける柴幸男さん、12名のキャストの皆さん(キャストを代表して、大石将弘さんと寺田剛史さんにも登壇して頂きました!)、そして劇場プロデューサー能祖將夫も加わり、約1時間たっぷりと「テトラポット」の制作秘話や作品の魅力について語って頂きましたので、本日はその模様をお届けしたいと思います!
...とその前に少し補足をしておきますと、この「テトラポット」は2008年よりスタートした"北九州芸術劇場プロデュース公演"シリーズの第5作目であり、このシリーズには下記のような5つの特徴があります。
1.北九州を感じさせる内容である
2.第一線の演出家が、一ヶ月以上北九州に滞在して創作する
3.出演者は北九州・福岡をはじめ地元の人材を中心にオーディションで選抜
4.スタッフは劇場や地域のメンバー中心に編成
5.東京公演を実施し、北九州から全国へ良質の演劇を発信する
詳しい説明は「BEN」ブログにも記載していますので省略しますが、ぜひ
そちらもチェックしてみてくださいね。では、製作発表の模様をどうぞ!
■本作への思いと、作品構想にあたって
能祖:今日本の演劇界で大きな注目を浴びている若き才能である柴さんが、この北九州芸術劇場という場で作品を創る事、また柴さんご自身が新たな地平にチャレンジしたいと仰っていて、その試みにご一緒出来る事に大きな喜びを感じています。
恐らく皆さん、今回のテトラポットという作品がどこに北九州らしさがあるのか?とまず思われるかと思いますが、それほどありません(笑)。
というのも、今回まず柴さんの方から「海の香りのする物語にしたい」と言われまして、その海を中心にイメージを固めていく中で、ご存知の通り3.11が起こりました。当然劇作家としては大きな関心を喚起される出来事ですし、海をイメージにする際には避けられない。"海の底に沈んだ教室"を舞台に物語を創ってみたいというお話もありましたし、それは僕としても非常に興味をそそられるので、是非そうしてくださいとお伝えしました。そういうわけで今回、あえて北九州らしさを前面に出した作品ではないですが、逆にいうと今日本が置かれている状況を踏まえた作品になっていると思います。
■作品イメージの着想について
柴:僕は今まで普遍性の高い、つまりどこにでもあって誰でも経験した事のある話を書いてきました。地球や月を登場させて(笑)、地球人なら誰でも共感出来る、といった形で書いていたんです。
そういう普通のお話とは少し違うやり方をとってきたのですが、今回もう一度、もともと好きだった形の作品を創ってみたいと思っています。ひとつのシチュエーションに色んな人達が出入りして、その小さな人間関係から世界全体に繋がる普遍性が見えるような、そういうお芝居を。
海が生活の場所のひとつとして、例えば空や山と同じように在るのが北九州の魅力だと僕は思っています。今までは匂いがしない透明度の高いお話を書こうとしていたところがあるんですが、今回は海のにおいや人のにおいが混ざり合った凄く濃い人間関係を持った話にしたいと思っています。
そんな事を漠然と考えている時に震災が起こりました。何度も何度もテレビで見た海の映像は僕の中にも蓄積されています。実際に去年、福島県を訪れた時にも見に行ったので、海のイメージは強く残っています。
それはわざと消し去るのでも特別に取り上げるのでもなく、作品に否応なく練り込まれてきているものなんです。僕の作品は、ある一点からどこまで広い世界観を広げられるかという所で勝負をしているので、今回は北九州の海からどこまで大きい時間の幅を作れるか、3.11があった日からどこまでイメージを広げ、世界の事についてもう一度考えられるのか、といったことを出来るだけ広く捉えられるような作品にしたいと思っています。
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と、ここで質疑応答に入る前に、キャストの紹介が行われました。今回のキャストは、オーディション選抜による10名、そして柴さん指名による2名―柴さんと同じ劇団「ままごと」所属で柴さんに厚い信頼を置かれる大石将弘さん、そしてリーディング「わが星」に出演され柴さんに新たな男優感を見せてくれたという地元「飛ぶ劇場」の寺田剛史さん、を加えた12名。
柴さん曰く"その人自身の色があって重ならない、それぞれが人として立ってる人達に出演して貰いたかった"というだけあって、個性豊かな面々が顔を揃えました。ではキャストを代表して、大石さん、寺田さんのコメントを少しだけご紹介します。
■出演キャストからのコメント
大石(写真左):柴さんのお芝居は毎回メンバーが割と違うので、その時に集まった人達とその時の柴さんの思考が出会って、その度に新しいものが生まれるのが非常に新鮮です。
北九州芸術劇場というところと柴幸男という人が出逢って起こした渦の中に、12人が身も心も飛び込んで、あがいて、尚且つ観客の皆さんの思惑みたいなものも加わって、どんどんその渦が大きく不確定なものになっていくといいですね。そしてそれが、今年の日本で一番"変な渦"になるといいなと思います。
寺田(写真右):秋と言えばサンマ、夏と言えば海...何を言いたいかと言うと(笑)、今日本の演劇界で一番旬な柴さんと一緒に作品を創り、それを東京に発信出来る事をとても嬉しく思っています。柴さんの作品には女性が多いので、稽古場の"女子的なノリ"に負けないよう男子も頑張ります。
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寺田さんが言うように、通常女性キャストが殆どという柴さんのお芝居において、男性が4人もいる事、尚且つその4人が割と物語の中心を担っていく―というところも今作の見どころの一つです!そしてこれより、マスコミの皆さんからの質疑応答に入りました。
■今回新しいものにチャレンジしたいという事ですが、具体的にどういうものですか?柴: まずはキャスト12人にちゃんと役名があります(笑)。僕のこれまでのお芝居では、配役を交換しながら色んな役を演じる事で全員がどんどん主体性をなくし、誰にでも当てはまる広いところから、お客さん一人ひとりの思い出や未来の予想といった"個"に迫っていきました。
でも今回はキャスト一人ひとりに名前や人間関係があって、彼らそれぞれの個別の物語が膨らんでいって、お客さんや日本や地球、もしくは長い歴史というものを貫通していくような作品にしたいと思っています。
あとは舞台も今までは抽象的なものが多かったんですが、今回は照明さん、音響さん、美術さんといった色んなテクニカルの人の力を全部借りて、舞台装置や照明音響なんかも、かなり凝っていく事になると思います。
■過去にもこちらの劇場で公演を行われていますが、今回改めてタッグを組むにあたり何か手ごたえはありますか?
2年位前から、東京で創ってそれをどこかで公演するという形だけじゃなく、自分が"どこで誰と創って誰に見せるか"っていう事を自分で決めていかなきゃいけないと思っていて、それが出来る場所を探す旅をしていたんです。だからこの企画は、僕にとっては凄く重要性が高いんです。
初めて北九州芸術劇場に来たのが「わが星」のリーディング公演の時で、稽古は短いし出演者は多いしでとても大変な現場だったんです。でもその時の印象として、劇場のスタッフの方が凄く楽しんで作品づくりに関わってくれていて。これはやっぱりそういう劇場とそうじゃない劇場があるし、この人達とだったら"箱だけあるからお好きにどうぞ"的なものじゃなく、本当に劇場と一緒に新しいチャレンジが出来るんじゃないかなっていうのを凄く感じています。
■テトラポットというタイトルに込められた意味は?
海はあれど、あるのは砂浜でなく防波堤―そこでイメージしたのがテトラポットだったんです。日本全国の海にあって。これをモチーフとしてうまく使う事で、北九州の海から全国の海、日本の海に繋げていく事が出来ないかな?と思って。
それから僕には、テトラポットが "交わらない人間関係" やひとつの"可能性"を現わすものにも見えてきたんです。テトラポットの四つの足それぞれが人物相関図の線だとして、それは伸ばしてっても交わらずどこまでも平行線、だけどテトラポット同士は重なるという、その形が面白かったりして。
それからだんだん調べていくと、海から陸上に上がった四足動物の事を"テトラポーダ"って呼んでいたらしいんです。人間も同じように、海から出てきて陸に上がって生活している。
今でも「テトラポット」はあくまでキーアイテムの一つですが、人と海の関係性を取り持つちょうど中間地点にあるもの、そもそもは防波堤だったけれど、逆に海とコンクリートを近づけて陸から海へ一歩降りていくための階段みたいになるかな、と思っています。
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最後までお読み頂いた皆さん、ありがとうございます!
柴さんの様々な想い、そしてキャストの皆さんの力強い言葉に
劇場スタッフもますます期待を寄せるばかり。
会見の最後に柴さんが仰っていた「北九州のお客さんの期待に応えたい」という言葉通り
皆さんの心に突き刺さる、何かを残してくれる作品になる事間違いなしですので
ぜひぜひ、劇場にお越しくださいね!
公演情報詳細はこちら
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp/event/2011/0221tetrapod.html
2012.01.13 12:27
いよいよお稽古開始!
皆さま明けましておめでとうございます。
広報です。
2012年の幕開けとほぼ同時に、いよいよ「テトラポット」のお稽古が始まりました!
初日には柴さんやキャストの皆さん、そしてスタッフ・劇場プロデューサーによる
顔合わせを行い、スタートを切りました。
お稽古はというと、ワークショップ恒例・エアバレーボールなどで体をほぐした後、
12月のワークショップの際と同様、柴さんから言われた言葉をその場で覚え
少しずつシーンを進めていくというやり方。
ある一定のシーンを最後までいったら始めに戻る、という形で
無限ループのように行っていたのですが
キャストさんがそれぞれに、毎順違った喋り方や間の取り方を試されるので
「なるほど、そんな言い方もあるんだ」と新しい発見の連続。
またお稽古中はバックで音楽がかかっている事が多いのですが、
音楽も柴さんが色々と変えられていく為、
それによってずいぶんと空間の色が変わっていました。
私達の日常でも、聞くとハッピーになる曲、切なくなる曲、など
音楽によってその場の雰囲気がガラリと変わったり、
また気分を変えるために意図的に音楽を選んだりする事があると思うのですが、
そうした音楽の持つ力の大きさを再認識しました。
演劇を通して、こうした日々への"気付き"を与えて貰えるというのは
つくづく素敵な事だな~と思ったお稽古始まりでした!
初回なので長くならないよう、この辺で(笑)。
北九州公演まで約1ヶ月半、引き続き「テトラポット」をよろしくお願いします!
チケットの方も絶賛発売中ですので、良い席はお早めにお買い求めくださいね。
2011.12.21 11:50
「第3回目WS」
皆さまこんにちは、広報いちです。
街はすっかりクリスマスムードに包まれ、歩いているとワクワクしてくる今日この頃。
良い季節ですね!
寒さも本格的になってきた訳ですが、12月上旬に行われた「テトラポット」第3回ワークショップでは
そんな寒さが一気に吹き飛ぶ熱いバトルが繰り広げられていました!
今回は2回目という事で、皆さんよりダイナミックに、伸び伸びと動けていたような気がします。
柴さんからの「より精度の高いものにしよう!」という掛け声のもと、
左右の動きに終始しがちなところを、前後にも目を向けて
より様々なコンビネーションでゲームを展開
動きの幅が広くなった分、疲労度合も大きかったようですが(笑)。
そんな激しいエアバレーの後は一変、
「皆と仲良くなろうと思って」と柴さんが持って来られた
【ワードバスケット】なるゲームに挑みました!
これはトランプ版しりとり、とでも言うべきでしょうか。
カードにはひらがな一文字が書かれており、
場の中央に置かれた文字で始まり、手持ちのカードの文字で終わる言葉、
を考えながらカードを出していくゲーム。手持ちのカードがなくなれば勝ちです。
順番は決まっておらず、思いついた人からどんどん出してOK。
スピード感よくポンポン展開...と思いきや、これが意外と難しい!
カードと睨めっこしながら考えこんでしまう場面も...。
面白かったのは、はじめに個人戦、その後ペアになってゲームを行った結果、
"個人戦の方が強い人"と"ペアになると強い人"がいたところ。
日常生活でもこういうケースはありますよね。皆さんは、どちらのタイプでしょうか?
途中からは「もう少しワークショップらしくしよう!」という事で、
カードを出す場所とプレイヤーのいる場所を離し、
カードを出す時にはダッシュで走っていく...という肉体派ゲームへと変貌しました。
(このゲームアレンジは柴さんの発案ですが、こういうアレンジをパッと思いつくあたりが
演出家さんってすごいな、と思ってしまいました)
当然ながら、他のチームに先にカードを出されてしまうと考えていた単語が出せなくなるので
思いついたら猛ダッシュ!我先にと決死の攻防が繰り広げられました。
そして今回の〆は、演劇のワークショップらしい立ち稽古。
役の数が「テトラポット」出演者の数と同じくらいの
三谷幸喜さんの戯曲「オケピ!」をもとに、その場でシーンをつくっていきました。
柴さんが口頭で本を読みながら、「じゃあ今のところを○○さん」とキャストを指名。
その場でセリフを覚え、立ち位置を決め、徐々にシーンを進めていきます。
いつどこで呼ばれるか分からないので、待っている方達も常に集中。
「もっとフランクな喋り方で」「テンポよく」「小物持ってきましょうか」
などという柴さんの演出を随時吸収しながら、次第に役をつかんでいきます。
お話の全体像が分からないままに瞬間瞬間で役をつかんでいくというのは、
なかなか難しそう...。
しかしながら、これから先の稽古を彷彿とさせる雰囲気に、
傍から見ていた私はワクワクしっぱなしでした!
いよいよ年明けには「テトラポット」のお稽古が始まります。
どんな物語が生まれていくのか、今からとても楽しみです!