月1ダンス部2008

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2008年07月05日 10:24

月1 ダンス部始動!

秘蔵映像とヤサぐれトークでつづる
「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド」講座 in 北九州芸術劇場
講師/乗越たかお
2008年7月5日(土)@北九州芸術劇場・稽古場

第1回
「ダンス100年の歴史を100分弱で語り倒す~ダンスの意外なルーツを探る」

「月1ダンス部」創設の初日を飾っていただいたのが、ダンス評論家として有名な乗越たかお氏。大学の教科書でも使われている『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社刊)を初め、月刊『シアターガイド』月刊『DDD』など連載されており、世界中のコンテンポラリー・ダンスを見て日本に紹介したり、日本のダンサー、カンパニーを世界に紹介するべく日夜飛び回っておられます。

乗越氏とはどんな人だろう?講師っていうから固い感じの方なのか?と思っていたら、アロハシャツに短パンというとってもラフな格好で颯爽と登場し、「ダンスとは、みんな感じているんだけど、言語化するにはまだ至っていないものを表現し、気づかせること。言語を介さない海外の一流の作品も100%楽しめる舞台芸術のことだ。」と、冒頭からアツイお言葉で講義が始まりました。
ダンス100年の歴史ということで、20世紀初頭から現代に至るまでのお話を当時の貴重な映像を見ながら乗越氏が解説されます。
お見せできないのが非常に残念なぐらいの映像満載!

モダンダンスの祖と言われる、イザドラ・ダンカン、ロイ・フラー、ルース・セント・デニスの3人はいずれもアメリカ人ですが、ヨーロッパのミュージカルホールや万博などでショーを行ったことにより注目を集めることになりました。なぜアメリカではなくヨーロッパから流行したの?というと、この時代、全ての流行はヨーロッパで作られるという風潮があったため、ヨーロッパで評価を受けないと受容れられなかったのです。逆輸入みたいな感じです。

1900年のパリ万博でのロイ・フラーはサーペンタイン・ダンスを確立。サーペンタインとは蛇のことで大振りの布を回して踊るため、蛇が周りで踊っているような印象を与え、後方から大量の光を浴びせることで、女性の体のラインを美しく映し出し、非常に人気を博しました。これに通じるサリー・ランドのファンダンス(巨大な鳥の羽が着いた扇のことで、今でもミュージカルなどで使用されています)は1933年のシカゴ万博の目玉となりました。どちらも映像で見たのですが、とっても美しい!
優雅な舞という感じがしました。

第一次大戦後、アメリカでバレエは「トゥ・ダンス」(つま先立ちのダンス。そのままタップを踏んだりした)と「ハイ・キック」(足を頭の高さまで蹴り上げること)の二つに分かれ、すっかりショウビジネスに取り込まれていました。ハイ・キックのミッツィ・メイファ『TIP TAP TOE』は本当に可愛らしくて、体の柔軟性と音楽との相性が抜群でした。このあと、失敗作というハイ・キックの映像も見たのですが・・・これには触れないでおきます。


そんな時に「モダン・ダンス」という言葉を代表する存在となったルース・セント・デニスの弟子であるマーサ・グレアム。今まで個々が色々な型で踊っていたものをグレアム・メソッドという技術体系を確立し、人の内面や感情を表現することにより、ダンスの芸術化をはかっていきます。
じゃあ、モダンって何なの?という疑問が沸いてくるのですが。
モダンを掲げたモダニズムとは単に「新しい」というのみならず、今までの権威を壊そう!という攻撃的な芸術運動。軍隊用語だった「前衛(アバンギャルド)」という言葉を初めて芸術に持ち込んだのも彼らです。リアリズムより自分の心が表現したいことを優先し、自分の体でしか表現できないことをしよう!ということなのです。
しかし、この内面の表現を否定したのが、マーサ・グレアムの弟子マース・カニンガム。
ダンスに意味なんてなくてもいいのでは?偶然性を持ち込むことでダンスから意味をはぎ取り、徹底的に解体していきました。音楽のジョン・ケージ、美術のイサム・ノグチなどとのコラボレーションによって巨大なアートを作り出していきます。

 

ここにきてやっと乗越氏の口から出てきた『コンテンポラリー・ダンス』。って何?
『コンテンポラリー・ダンス』とは全てに意味を持たせずに踊っていた、最先端のダンスに、意味を持たせていた少し前まで戻したもののこと。「人間とは全てにおいて意味を持たせたがるものなのだ」と。
でも、まだ分からないのだけど・・・という人には、コンテンポラリー・ダンス自体に、明確な定義というものが存在していないのです。コンテンポラリーとは、「こうしなくてはいけない」ということがない「何でもあり」と、なダンスなのです。
ここまで来て、ええっ!と思いましたが、乗越氏の発言に何だか納得。


日本のお話はまた明日ということで、最後に。
「コンテンポラリーとは「今」を表現している!見終わった後にそこら辺を駆け回りたくなるぐらいワクワクするのがダンスの魅力だ!」と、初日を締めくくって頂きました。

講師プロフィール


乗越たかお
作家・ヤサぐれ舞踏評論家。海外でも翻訳され、ベストセラーとなった「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER」(作品社刊)は多くの大学でも採用され、世界最高のダンス・ライブラリ、NYリンカーンセンターをはじめ、パリのCentre National de la Danse(CND)にも収蔵されている。他に「ダンシング・オールライフ~中川三郎物語」「ドメイン~熊川哲也120日間のバトル」(ともに集英社)、「アリス~ブロードウェイを魅了した天才ダンサー川畑文子物語」(講談社)など著書多数。06年にニューヨークのジャパン・ソサエティからの招聘を受けて滞米研究。07年イタリアのダンス・フェスティバル『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクターを務める。現在は月刊「シアターガイド」、月刊「DDD」などで連載中。

中村恩恵
横浜生まれ。舞踊家。1991年から現代の舞踊界のリーダー的なカンパニー、ネザーランドダンスシアターで主要ダンサーとして踊ったのち、オランダをベースにフリーの舞踊家として活動。近年では自らの舞踊活動のかたわら、キリアン作品のコーチとしてパリオペラ座をはじめ、世界中のバレエカンパニーやバレエスクールで作品指導にあたる。07年、横浜に舞踊活動の拠点として、Dance Sangaを設立。

坂本公成
福岡県出身。大学で美学と人類学を学ぶ。’90年にMonochrome Circus結成。音楽家の野村誠や、山下残など複数のアーティストと活動を共にする。’96年「ダンスの出前」で有名な「収穫祭シリーズ」を開始。フランス、ドイツ、リトアニア、韓国、などでの、劇場、美術展から福祉施設、学校など、上演は国内外300回を越える。舞台作品でも、’00年の「リヨン・ビエンナーレ」で紹介されるなど、17ヵ国27都市で作品を上演。Monochrome Circusは昨年度から京都の老舗小劇場『アトリエ劇研』のフランチャイズ・カンパニーとして新たな活動を開始。一方、2008年で13周年を迎える「京都国際ダンスワークショップフェスティバル」のプログラム・ディレクター。京都芸術センター主催『Coaching Project』プロデューサーなどダンサー目線に立ったprojectから多くの若手ダンサーを育てている。

森裕子
日本一小さいコンテンポラリーダンサー。が、その小ささを感じさせない大きな空間と透明感のある動きが魅力。’93年にMATOMA France-Japonに参加以降、アヴィニヨン演劇祭など海外の大きな舞台に立ち続ける。’96年よりMonochrome Circusに参加。以降同カンパニーで振付・ダンスに活躍する。コンタクト・インプロヴィゼーションの指導者としても全国各地、海外でも活躍している。

じゅんじゅん
学生時代よりマイムをを始める。その後コンテンポラリーダンスでの活動も開始。ソロ作品を発表するほか、岩淵多喜子、伊藤キムらのダンス公演にも多数出演。パフォーマンスシアター水と油を創設メンバー。水と油のメンバーとして、結成の1995年から一時休止の2006年3月までに国内22都市海外9ヶ国22都市で公演を行う。生まれ持っての空間を捉える才能と、独自の身体の動きでダンスファンのみならず多くの観客を魅了してきている。2007年、横浜ダンスコレクションR横浜ソロ×デュオ<Competition>+にて『審査員賞』受賞。その他、世田谷パブリックシアター野村萬斎演出の『国盗人』やNHKドラマ『トップセールス』におけるダンスシーン振付・出演など演劇やテレビ等の分野にも活動の場をひろげる。ダンスラボ2007「迷路のつくりかた」(2007年9月北九州芸術劇場 企画・製作)振付・演出。