月1ダンス部2008

北九州芸術劇場 学芸ブログ

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2008年07月06日 10:46

日本と世界のダンスの魅力☆

秘蔵映像とヤサぐれトークでつづる
「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド」講座 in 北九州芸術劇場
講師/乗越たかお
2008年7月6日(日)@北九州芸術劇場・稽古場

第2回
「日本と世界の最新ダンス~ソロの魅力、群舞の威力」

2日目は、昨日に引き続いて受講された方がかなりいらっしゃいました。


↑講義の様子です。みなさんメモを取りつつ真剣に聞かれ、乗越氏の解説で笑い、楽しんでいただいているようです。昨日も今日も大体30名ぐらいの方に来ていただきました。昨日とは違うアロハで登場の乗越氏。
今日は日本のコンテンポラリー・ダンスの起源から講義が始まりました。

「日本におけるコンテンポラリー・ダンス元年」は1986年!
86年は勅使川原三郎が日本人として初めてバニョレ国際振付コンクールで入賞し、ピナ・バウシュが衝撃的な来日公演(『カフェ・ミュラー』『春の祭典』『コンタクト・ホース』を上演)を行った年だからと乗越氏は位置づけています。特に80年から90年代のバブル期に、企業がお金を使って多くの公演を呼び、日本の若いダンサー達が、フランスで人気だったヌーベル(新しい)・ダンスなど、欧米の最先端のダンスを間近で体験できたことによるものだそうです。来日したときに、ワークショップを開催し、一流のダンサー&振付家に触れられたこと、海外に行かなくても講義を受けられたことが一因となっています。

今日も素敵な映像が満載!!乗越氏のお気に入り作品が並びます。
マギー・マランの『メイB』は白いゾンビの軍団で、動きは綺麗なのに恐ろしく、セクシャルな動きもするのに、それが逆に「生」への対比を感じさせ、引き付けられました。私の印象に残ったのが、イスラエルの「バットシェバ舞踊団」。一人ひとりの力強さ身体のしなやかさも素晴らしいのですが、集団という迫力が圧倒的だなという印象。ソロも良いし、群舞もいいし・・どちらもダンスの魅力だなと改めて思いました。
ASA-CHANG&巡礼FEAT.小泉今日子『背中』でダンスを踊っている康本雅子、音楽と歌詞に合わせ爽やかに表現。
KENTARO!!も振りの一つひとつにとてもテクニックがあり、なおかつ体から出てくる表現力で周りの空気を変えてしまうような雰囲気がありました。
他にも色々と見せて頂いたのですが、秘蔵映像などもあったので、受講生のみの秘密ということで。

日本のコンテンポラリー・ダンスの面白いところは、ダンス経験がなくても素晴らしい舞台を作っていること。なぜ?というと、欧米のような型枠(バレエ経験必須)がないため、ビジネス化もされておらず、「コンテンポラリー・ダンス=何でもあり」、「技術だけではない」、「その身体に切実な動き」を表現でき、多様性を生むことができたから。と乗越氏。

しかし、同時に日本のコンテンポラリーの危うさも指摘されました。
1990年から日本ではコンクール/フェスティバルが数多く開催されるようになり、20分程度の作品ならば簡単に発表できるようになりました。が、「20分の壁」がある。これは日本ではカンパニーを作らない、前のカンパニーに所属したまま自分のカンパニーを立ち上げたり、色々なところで客演として踊ってきたことで、他者への振付を出来なくなった。そのため、長いものを作ると途端につまらなくなるケースがあり、作品への構成能力が追いつかず、芸術への方向性がなくなってきている。
日本もソロだけではなく群舞にも力を入れれば、と。

最後の紹介は1991年に設立されたイギリスのカンドゥーコ(CandoCo)ダンス・カンパニーです。障がいのあるダンサーとないダンサーが一緒に踊るプロのダンス・カンパニー。その身体でしか表現できない動きと高い表現力で、舞台を構成。見ていてとても楽しくなるダンス!

「コンテンポラリー・ダンスとはどんな身体でも踊ることが出来る!」
「誰でも踊ることが出来る!」

乗越氏の言葉にワクワクする2日間の講義。コンテンポラリー・ダンスという魅力にはまってしまいました。

講師プロフィール


乗越たかお
作家・ヤサぐれ舞踏評論家。海外でも翻訳され、ベストセラーとなった「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER」(作品社刊)は多くの大学でも採用され、世界最高のダンス・ライブラリ、NYリンカーンセンターをはじめ、パリのCentre National de la Danse(CND)にも収蔵されている。他に「ダンシング・オールライフ~中川三郎物語」「ドメイン~熊川哲也120日間のバトル」(ともに集英社)、「アリス~ブロードウェイを魅了した天才ダンサー川畑文子物語」(講談社)など著書多数。06年にニューヨークのジャパン・ソサエティからの招聘を受けて滞米研究。07年イタリアのダンス・フェスティバル『ジャポネ・ダンツァ』の日本側ディレクターを務める。現在は月刊「シアターガイド」、月刊「DDD」などで連載中。

中村恩恵
横浜生まれ。舞踊家。1991年から現代の舞踊界のリーダー的なカンパニー、ネザーランドダンスシアターで主要ダンサーとして踊ったのち、オランダをベースにフリーの舞踊家として活動。近年では自らの舞踊活動のかたわら、キリアン作品のコーチとしてパリオペラ座をはじめ、世界中のバレエカンパニーやバレエスクールで作品指導にあたる。07年、横浜に舞踊活動の拠点として、Dance Sangaを設立。

坂本公成
福岡県出身。大学で美学と人類学を学ぶ。’90年にMonochrome Circus結成。音楽家の野村誠や、山下残など複数のアーティストと活動を共にする。’96年「ダンスの出前」で有名な「収穫祭シリーズ」を開始。フランス、ドイツ、リトアニア、韓国、などでの、劇場、美術展から福祉施設、学校など、上演は国内外300回を越える。舞台作品でも、’00年の「リヨン・ビエンナーレ」で紹介されるなど、17ヵ国27都市で作品を上演。Monochrome Circusは昨年度から京都の老舗小劇場『アトリエ劇研』のフランチャイズ・カンパニーとして新たな活動を開始。一方、2008年で13周年を迎える「京都国際ダンスワークショップフェスティバル」のプログラム・ディレクター。京都芸術センター主催『Coaching Project』プロデューサーなどダンサー目線に立ったprojectから多くの若手ダンサーを育てている。

森裕子
日本一小さいコンテンポラリーダンサー。が、その小ささを感じさせない大きな空間と透明感のある動きが魅力。’93年にMATOMA France-Japonに参加以降、アヴィニヨン演劇祭など海外の大きな舞台に立ち続ける。’96年よりMonochrome Circusに参加。以降同カンパニーで振付・ダンスに活躍する。コンタクト・インプロヴィゼーションの指導者としても全国各地、海外でも活躍している。

じゅんじゅん
学生時代よりマイムをを始める。その後コンテンポラリーダンスでの活動も開始。ソロ作品を発表するほか、岩淵多喜子、伊藤キムらのダンス公演にも多数出演。パフォーマンスシアター水と油を創設メンバー。水と油のメンバーとして、結成の1995年から一時休止の2006年3月までに国内22都市海外9ヶ国22都市で公演を行う。生まれ持っての空間を捉える才能と、独自の身体の動きでダンスファンのみならず多くの観客を魅了してきている。2007年、横浜ダンスコレクションR横浜ソロ×デュオ<Competition>+にて『審査員賞』受賞。その他、世田谷パブリックシアター野村萬斎演出の『国盗人』やNHKドラマ『トップセールス』におけるダンスシーン振付・出演など演劇やテレビ等の分野にも活動の場をひろげる。ダンスラボ2007「迷路のつくりかた」(2007年9月北九州芸術劇場 企画・製作)振付・演出。