■7月6日(日) 講師/乗越たかお
「日本と世界の最新ダンス〜ソロの魅力、群舞の威力」
2日目は、昨日に引き続いて受講された方がかなりいらっしゃいました。
左写真が講義の様子です。みなさんメモを取りつつ真剣に聞かれ、乗越氏の解説で笑い、楽しんでいただいているようです。昨日も今日も大体30名ぐらいの方に来ていただきました。
昨日とは違うアロハで登場の乗越氏。
今日は日本のコンテンポラリー・ダンスの起源から講義が始まりました。
「日本におけるコンテンポラリー・ダンス元年」は1986年!
86年は勅使川原三郎が日本人として初めてバニョレ国際振付コンクールで入賞し、ピナ・バウシュが衝撃的な来日公演(『カフェ・ミュラー』『春の祭典』『コンタクト・ホース』を上演)を行った年だからと乗越氏は位置づけています。特に80年から90年代のバブル期に、企業がお金を使って多くの公演を呼び、日本の若いダンサー達が、フランスで人気だったヌーベル(新しい)・ダンスなど、欧米の最先端のダンスを間近で体験できたことによるものだそうです。来日したときに、ワークショップを開催し、一流のダンサー&振付家に触れられたこと、海外に行かなくても講義を受けられたことが一因となっています。
今日も素敵な映像が満載!!乗越氏のお気に入り作品が並びます。
マギー・マランの『メイB』は白いゾンビの軍団で、動きは綺麗なのに恐ろしく、セクシャルな動きもするのに、それが逆に「生」への対比を感じさせ、引き付けられました。私の印象に残ったのが、イスラエルの「バットシェバ舞踊団」。一人ひとりの力強さ身体のしなやかさも素晴らしいのですが、集団という迫力が圧倒的だなという印象。ソロも良いし、群舞もいいし・・・どちらもダンスの魅力だなと改めて思いました。
ASA-CHANG&巡礼FEAT.小泉今日子『背中』でダンスを踊っている康本雅子、音楽と歌詞に合わせ爽やかに表現。
KENTARO!!も振りの一つひとつにとてもテクニックがあり、なおかつ体から出てくる表現力で周りの空気を変えてしまうような雰囲気がありました。
他にも色々と見せて頂いたのですが、秘蔵映像などもあったので、受講生のみの秘密ということで。
日本のコンテンポラリー・ダンスの面白いところは、ダンス経験がなくても素晴らしい舞台を作っていること。なぜ?というと、欧米のような型枠(バレエ経験必須)がないため、ビジネス化もされておらず、「コンテンポラリー・ダンス=何でもあり」、「技術だけではない」、「その身体に切実な動き」を表現でき、多様性を生むことができたから。と乗越氏。
しかし、同時に日本のコンテンポラリーの危うさも指摘されました。
1990年から日本ではコンクール/フェスティバルが数多く開催されるようになり、20分程度の作品ならば簡単に発表できるようになりました。が、「20分の壁」がある。これは日本ではカンパニーを作らない、前のカンパニーに所属したまま自分のカンパニーを立ち上げたり、色々なところで客演として踊ってきたことで、他者への振付を出来なくなった。そのため、長いものを作ると途端につまらなくなるケースがあり、作品への構成能力が追いつかず、芸術への方向性がなくなってきている。
日本もソロだけではなく群舞にも力を入れれば、と。
最後の紹介は1991年に設立されたイギリスのカンドゥーコ(CandoCo)ダンス・カンパニーです。障がいのあるダンサーとないダンサーが一緒に踊るプロのダンス・カンパニー。その身体でしか表現できない動きと高い表現力で、舞台を構成。見ていてとても楽しくなるダンス!
「コンテンポラリー・ダンスとはどんな身体でも踊ることが出来る!」
「誰でも踊ることが出来る!」
乗越氏の言葉にワクワクする2日間の講義。コンテンポラリー・ダンスという魅力にはまってしまいました。
Posted by mt_master at
19:00
■7月5日(土) 講師/乗越たかお
「ダンス100年の歴史を100分弱で語り倒す〜ダンスの意外なルーツを探る」
「月1ダンス部」創設の初日を飾っていただいたのが、ダンス評論家として有名な乗越たかお氏。大学の教科書でも使われている『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』(作品社刊)を初め、月刊『シアターガイド』月刊『DDD』など連載されており、世界中のコンテンポラリー・ダンスを見て日本に紹介したり、日本のダンサー、カンパニーを世界に紹介するべく日夜飛び回っておられます。
乗越氏とはどんな人だろう?講師っていうから固い感じの方なのか?と思っていたら、アロハシャツに短パンというとってもラフな格好で颯爽と登場し、「ダンスとは、みんな感じているんだけど、言語化するにはまだ至っていないものを表現し、気づかせること。言語を介さない海外の一流の作品も100%楽しめる舞台芸術のことだ。」と、冒頭からアツイお言葉で講義が始まりました。
ダンス100年の歴史ということで、20世紀初頭から現代に至るまでのお話を当時の貴重な映像を見ながら乗越氏が解説されます。
お見せできないのが非常に残念なぐらいの映像満載!
モダンダンスの祖と言われる、イザドラ・ダンカン、ロイ・フラー、ルース・セント・デニスの3人はいずれもアメリカ人ですが、ヨーロッパのミュージカルホールや万博などでショーを行ったことにより注目を集めることになりました。
なぜアメリカではなくヨーロッパから流行したの?というと、この時代、全ての流行はヨーロッパで作られるという風潮があったため、ヨーロッパで評価を受けないと受容れられなかったのです。逆輸入みたいな感じです。
1900年のパリ万博でのロイ・フラーはサーペンタイン・ダンスを確立。サーペンタインとは蛇のことで大振りの布を回して踊るため、蛇が周りで踊っているような印象を与え、後方から大量の光を浴びせることで、女性の体のラインを美しく映し出し、非常に人気を博しました。これに通じるサリー・ランドのファンダンス(巨大な鳥の羽が着いた扇のことで、今でもミュージカルなどで使用されています)は1933年のシカゴ万博の目玉となりました。どちらも映像で見たのですが、とっても美しい!優雅な舞という感じがしました。
第一次大戦後、アメリカでバレエは「トゥ・ダンス」(つま先立ちのダンス。そのままタップを踏んだりした)と「ハイ・キック」(足を頭の高さまで蹴り上げること)の二つに分かれ、すっかりショウビジネスに取り込まれていました。ハイ・キックのミッツィ・メイファ『TIP TAP TOE』は本当に可愛らしくて、体の柔軟性と音楽との相性が抜群でした。このあと、失敗作というハイ・キックの映像も見たのですが・・・これには触れないでおきます。
そんな時に「モダン・ダンス」という言葉を代表する存在となったルース・セント・デニスの弟子であるマーサ・グレアム。今まで個々が色々な型で踊っていたものをグレアム・メソッドという技術体系を確立し、人の内面や感情を表現することにより、ダンスの芸術化をはかっていきます。
じゃあ、モダンって何なの?という疑問が沸いてくるのですが。
モダンを掲げたモダニズムとは単に「新しい」というのみならず、今までの権威を壊そう!という攻撃的な芸術運動。軍隊用語だった「前衛(アバンギャルド)」という言葉を初めて芸術に持ち込んだのも彼らです。リアリズムより自分の心が表現したいことを優先し、自分の体でしか表現できないことをしよう!ということなのです。
しかし、この内面の表現を否定したのが、マーサ・グレアムの弟子マース・カニンガム。
ダンスに意味なんてなくてもいいのでは?偶然性を持ち込むことでダンスから意味をはぎ取り、徹底的に解体していきました。音楽のジョン・ケージ、美術のイサム・ノグチなどとのコラボレーションによって巨大なアートを作り出していきます。
ここにきてやっと乗越氏の口から出てきた『コンテンポラリー・ダンス』。って何?
『コンテンポラリー・ダンス』とは全てに意味を持たせずに踊っていた、最先端のダンスに、意味を持たせていた少し前まで戻したもののこと。「人間とは全てにおいて意味を持たせたがるものなのだ」と。
でも、まだ分からないのだけど・・・という人には、コンテンポラリー・ダンス自体に、明確な定義というものが存在していないのです。コンテンポラリーとは、「こうしなくてはいけない」ということがない「何でもあり」と、なダンスなのです。
ここまで来て、ええっ!と思いましたが、乗越氏の発言に何だか納得。
日本のお話はまた明日ということで、最後に。
「コンテンポラリーとは「今」を表現している!見終わった後にそこら辺を駆け回りたくなるぐらいワクワクするのがダンスの魅力だ!」と、初日を締めくくって頂きました。
Posted by mt_master at
18:58