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今回は書きたいものを全員テキストにまとめてきていて、前回のように口頭だけの発表の人はいませんでした。
初めの受講生の作品は、とあるお寺の居間に水子供養に集まった女5人の話です。
登場人物の女のうち一人は、お寺の住職の奥さんで妊娠できない身体。
二番目の女は不妊治療の末にやっと妊娠したけれど、階段から滑り流産。
そのことを夫や夫の両親に責められ、自分は単なる子どもを産む道具に過ぎなかったのか・・・と思い悩んでいる。
三番目は夫の暴力のせいでせっかく妊娠した子どもを流産。夫は酒を飲まない時はとても優しく、自分がいないとダメな人。
とはいえ、夫のほうが依存しているようで実はお互いに共依存状態。
4番目は大学生。
付き合っている人の子どもを妊娠したが育てられないので中絶。
けれども相手はその辛さを理解せず、自分もまた軽率な行動で一つの命をなくしてしまったことに苦しんでいる。
5番目は性同一障害で、身体は男であるが心は完全に女。
子どもを産みたくても絶対に産めない。
と、それぞれが個人的な事情を抱えながら水子供養の説法で有名な住職の話を聞きに集まったのだが、肝心な住職はカラオケに行っていて留守。
そこに集まった女たちがポツリポツリと話をし始めるという設定です。
妊娠、中絶、流産・・・etcと、子どもを産まないあるいは産めない様々な状況を設けているものの、佃氏から突っ込んだ質問が出されると受講生は細かいところまでは考えていなかったようでした。
「2番目の女は何歳?」という質問では「20代半ば」という答えが返り、その年では子どもを産めるチャンスがまだあるので説得力に欠けるということです。
「例えば30代後半とかにして、後にチャンスがない方がよいのでは?」とアドバイス。
「4番目の女の彼氏は具体的にどんな人なのか?同じ学生なのか社会人なのか?」
佃氏は、相手も学生だと学生結婚という可能性もあるから不倫である方が中絶する理由になりやすいと言われました。
それから、女たちがどこから集まって来ているのかも大切だということです。
「水子供養で有名な住職の噂を聞きつけてわざわざ集まって来ているくらいなので、近くではなく全国各地からにする方がいい。(※物理的欲求は大きいほどいい。)例えば、ネットで住職の奥さんが自分と同じような仲間を集めたい為にネットか何かで嘘の情報を流し、それによって女たちが集まったという話でもいいかも。」と。
この作品の考案者である受講生はまだ若く男性なので、こういうテーマはどうしても難しいのかもしれません。
佃氏は「今回で固めて明日から書き出せるようにしないともう間に合わないけど、書けそう?」と聞くと、受講生は「なんとなく。考えなくてはいけないことが分かってきた。」と答えていました。
↑佃氏がホワイトボードに書いた絵。
2つ考えてきた受講生もいて、時間の都合で今日はどちらか一つを講評することに。
どちらも力作でなかなか決めかねていましたが、うち一つを選択。
「ババヌキ」というタイトルで、その名の通りババヌキをものすごく真剣にしている女5人の話です。
5人の女たちは「トランプ好きの会」というサークルで顔見知りになり、あることがきかっけで再来週銀行強盗をすることになりました。
そして、今まさにメンバーのうち一人の女の部屋でババヌキをしていて、それで銀行強盗の役割を決めようとしているという設定です。
ババ(一番やりたくない役)は金を直接脅し取る役で、アタリ(一番楽な役)は運転手、その他にも見張り役などを巡って大真面目のババヌキが展開されます。
メンバーの中には強盗を予定された銀行に勤める者もいて、彼女はこの強盗の首謀者。
お局(つぼね)的存在で銀行ではここ何年か煙たがられていて、そのことに対し仕返しをしようと強盗を計画。
佃氏によると「局くらいで銀行に仕返しするというのでは少し弱い。特定の人間に恨みを持っているというほうが自然。」ということです。
「重要なのは銀行強盗するよりも何故そんなにトランプにハマるようになったのか?多額の借金を抱えていたりどうしてもお金が必要な理由があって、それが銀行強盗のきっかけになれば話は早い。」と佃氏は言い、「徹夜の(賭け)トランプで何日も経っていて、戦利品として部屋の中にドラム缶など変なものが置いてあったり・・・・例えばその中に一人関係のない人がいても面白いんじゃない?全然知らないおばさんが(戦利品として)連れてこられていたりして、その場にちょこんと座っているとかね。(笑)それで、そのおばさんがものすごい借金があって銀行強盗の計画に乗り気になってみたりして!?(爆)」
アイデアがどんどん出たところで、「あ〜、なんかもうこれ書けそうだな。俺がもらいたいくらい(笑)!いいね。いいね。」と楽しそうな佃氏。
そして、「今どき、自分たちがこんなこと無理だろうと思いながら書いてもみても実際に(事件として)起こる世の中だからなあ。ホントに怖いよ。」とも言われていました。
↑講座風景。
北九州市内だけでなく県外から参加の受講生もいます。
前回のアイデアを練り直して、登場人物は変わらず内容に変化のあったものもありました。
中にはすでに書き始めていて、頭から8枚の戯曲を提出した人もいました。
全8回の講座のうちの5回目なので、みんなそろそろ書き始めなくてはならない時期です。
今回の宿題はいったん書けるところまで書き、それを次回までには提出するようにということです。
先週、受講生のうち一人の劇団の公演が行われたようで、観に行った人も何人かいました。
みんなでそのお芝居についての話をした後、佃氏が一枚のチラシを配りました。
それは、佃氏が作・演出する劇団うりんこの「パイレーツ オブ 花山田小学校」という公演のものでした。
子供のためのお芝居の上演を行う劇団うりんこに依頼され、本当は昨年の冬休みに上演する予定だったのが延長してこの夏になったとのこと。
その戯曲を書くのに、昨日は久しぶりに完徹したそうです。
「児童劇は4,5本目になるけれど、書いていて不安になることも多い。」と佃氏は言います。
なぜならば、子供たちは正直なので退屈だと絶対見ない、それが怖いのだとか。
飽きるといけないから会話の途中でアクションを入れなくては・・・etcなど、普段以上に気を使うとも言われました。
「このお話はタイトル(パイレーツ=海賊)にもある通り、なんとなく想像がつくじゃない?それを期待通りにしつつ、それを超えなくてはならない!と思ってかなり手こずった。でも、このお芝居が夏休みに上演されると(児童劇は全国の小学校などあちこちまわるので)もしかしたら九州にもやってくるかもしれないなあ。そうなると不労収入が入る!いいんですよ、児童劇は。(笑)」と佃氏はニヤリ。
↑「パイレーツ オブ 花山田小学校」のチラシより。
佃氏も海賊になっています。
前回、男5人or女5人の登場人物で1シチュエーションの芝居のいつ、どこ、だれ、見たいところをまとめてくるよう宿題が出ていました。
テキストにまとめてきたのが4人で、あとは口頭による発表です。
小学校のPTAの役員をしているお父さんたちと若い担任の先生の話、ある会社の「社内風紀向上委員会」のメンバーであるOLの話、デリヘルに働く女の話など、いろいろありました。
「社内風紀向上委員会」のOLの話では、登場人物は20代から40代までで、独身、既婚、不倫、離婚を経験していたりとそれぞれの背景も様々です。
作者は、「40代の局は大らかだが時として辛辣。包容力もある。」など登場人物一人一人の性格まで考えて来ていましたが、佃氏はひとまず性格は無視してまずは事実だけで書いてみるよう勧めました。
初めに登場人物の性格など細かいところまで決めてしまうと話が展開しにくくなるということです。
書き進めていくうちに、それぞれの性格は見えてくるのだとも言われていました。
大前提として、風紀向上委員会のメンバーに選ばれているのはどういうひとなのか?(単純に仕事ができるのかできないのか?)
また、途中で新しく参加するメンバーがいるが、その人自身のこれまでの委員会に対する印象や、なぜその人がメンバーに選ばれたのかということをはっきりさせることも大事だと言われました。
佃氏は「出だしの頭のシーンは見えてる?」とも質問され、会合が行われる会議室にメンバーが一人ずつ入って来るところから始めるのか?と具体的な展開を挙げ、「そうなってくると、もう『よーい、ドン!』で書けるからね。」ということです。
↑受講生の話をホワイトボードに図を書いて
分かりやすくまとめる佃氏。
母親と3人(全員20代)の娘のいる家庭で、次女が10年前に交通事故に遭い未だ植物状態で入院中。
長女は銀行勤めで現在一人暮らしをしている。
次女が一時的に退院し家に帰ることになり、その間に長女が内緒で(昔家を出て行った)父親に連絡をとり、父親も帰って来て家族全員が揃うという話がありました。
10年前母親と上の娘2人が一緒の時に事故は起こり、母親が長女をかばったために次女が車に轢かれ植物状態に。
その事故で母親が次女をかばいきれなかったことに父親は腹を立て蒸発。
長女も一人だけ事故で助かったことに負い目を感じていて、社内恋愛中の恋人がいるけれど自分だけが幸せになるわけにはいかないと結婚に踏み切れないでいる。
事故のせいで母親が次女にかかりっきりとなり、おまけに父は蒸発という思春期を過ごした三女は家族にかまってもらえない寂しさから非行に走り、現在は女子大生だけどキャバクラでバイト中。
加えて、三女は次女を介護する看護士の夫の浮気相手でもあるという設定です。
盛りだくさんな内容に、佃氏は「まず、父が蒸発というのがちょっと分からないなあ。」と言い、これは父親がいなくても書けそうだということになりました。
「父親が帰ってくることよりも植物状態でずっと入院中だった次女が帰ってくることの方が大事件。初めからいなかったことにしてもいいし、父親なしでもう一度プロットを書いてみて。それでがんばって1時間くらいのものを書いたほうがいいものが出来そう。その代わり、もっと具体的に母親の仕事や長女の会社での状況、次女が事故に遭うまでどうやって3姉妹が暮らしていたかなどを考えてみて。」とアドバイスがありました。
他に、山奥の村にあるスナックにネットのオフ会で集まった男たちの話や、ある人気アイドルが恋人と密会するとの噂を聞きつけネットの掲示板を通じて集まってきた女の子たちの話などもあり、2つの話を考えてきた受講生も数人いました。
みんなアイデアはいろいろとあるようで、聞いているとどれも面白そうな話ばかり。
その話を具体的に1時間の作品にするよう詰めていくのがこれからの課題で、どう膨らんでいくのか気になります。
今回発表しきれなかったものは次回に繰り越し発表です。
↑アートライブラリー(リバーウォーク5階)の入口。
ライブラリーには佃氏の書籍も入荷しています。
劇場塾後期
●俳優実践講座(1) 『舞台で活きるために〜身体の即興性を取り戻す〜』
日程:2006年9月26日(火)・27日(水) 全2日間
講師:絹川友梨
会場:北九州芸術劇場 小劇場
受講料:3,000円(全2日分・講座初日にお支払いいただきます)
応募方法:
専用の応募用紙に必要事項を書き込み、写真貼付の上、北九州芸術劇場まで郵送してください。(持参も可。)定員を超えて申し込みがあった場合は書類選考となりますので応募用紙はできるだけ詳しくお書きください。
募集人員:20名
応募締切:9月11日(月)必着
応募資格:
高校生以上で、ある程度の舞台経験のある人、ある程度の演技の基礎のある人、ある程度の体力のある人。でも何よりも、「舞台で自分を表現したい」という意欲と意志のある人。
用意するもの:運動しやすい服、運動靴
講座スケジュール:
(1) 9月26日(火) 18:30〜21:30
(2) 9月27日(水) 18:30〜21:30
講座について
絹川友梨(きぬがわ ゆり)
玉川大学文学部芸術学科演劇専攻出身。劇団「遊◎機械全自動シアター」にて数々の舞台に立つ。その後インプロに出会う。イギリスのキース・ジョンストン、アメリカのシャラナ・ファルフェンなど世界的な指導者からインプロを学ぷ。1996年日本にインプロを紹介するために「インプロ・ワークス」を設立。日本における即興パフォーマンスの第一人者であり、海外のインプロ・グループとのコラボレーションも多い。2006年にはドイツで開催される「インターナショナル・シアタースポーツTM大会」に日本
代表として出演。インプロ・ワークショップ講師として、日本と海外を行ったりきたりしながら、大人から子どもまで幅広い枠での即興・表現ワークショップを行っている。1999年ストックホルム国際映画祭にて「メモリー・アンド・ディザイアー」で主演女優賞、同年ニュージーランドベスト外国人パフオーマー賞受賞。ニュージーランド在在住。
劇場塾後期
●俳優実践講座(2) 『動ける俳優になるためのドラマ・レッスン。』
期間:2006年10月21日(土)・22日(日) 全2日間
講師:太宰久夫
会場:北九州芸術劇場 創造工房 稽古場
受講料:3,000円(全2日分・講座初日にお支払いいただきます)
応募方法:
専用の応募用紙に必要事項を書き込み、写真貼付の上、北九州芸術劇場まで郵送してください。(持参も可。)定員を超えて申し込みがあった場合は書類選考となりますので、応募用紙はできるだけ詳しくお書きください。
募集人員:20名
応募締切:10月10日(火)必着
応募資格:
高校生以上で、ある程度の舞台経験のある人、ある程度の演技の基礎のある人、ある程度の体力のある人。でも何よりも、「舞台で自分を表現したい」という意欲と意志のある人。
用意するもの:運動しやすい服・運動靴
講座スケジュール:
(1) 10月21日(土) 13:00〜17:00
(2) 10月22日(日) 13:00〜17:00
講座について
太宰久夫(だざいひさお)
演出家/玉川大学芸術学部助教授
1955年山口県生まれ。小中学枚を北九州で過ごす。
1975年以後現在迄、大倉流狂言師・演出家の茂山千之丞門下として古典から現代物まで幅広い舞台創作に関わる。1980年日本人カンパニーとして初めてエジンバラ国際芸術祭招聘「べっかんこ鬼(狂言・日舞複合舞台)」で主役を務める。
その後、米国生活を送り若手演劇優秀者賞をサンディエゴで受賞。帰国後劇団の俳優養成所や専門家育成機関で講師を務めつつ舞台演出・構成・脚本を数多く手がけ厚労省特別推薦を数作品受賞。最近ではダンスビエンナーレTokyoの実行委員や北海道舞台塾講師等を務める。舞台以外にもNHK教育TVの番組演出監修等活動は多岐に渡る。著書に芸団協出版「芸能と教育」等多数。