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[戯曲講座] ツクダ式戯曲講座
第七回(8月12日(土)14:00〜18:00)

今日の提出はそれぞれ20ページ〜30ページと、とりあえずは順調な様子。
前回はそれぞれの提出枚数も少なかったので初めに音読を行いましたが、今回は音読なしで作者に大まかな内容を説明してもらっての講評です。

植物状態の次女が一時退院をして家に戻って来る話を書いた作品で、寝ている次女のベッドが置かれた部屋で家族が揃ってご飯を食べるシーンがありました。
これは「かなり劇的でいい。」と佃氏は言われました。
佃氏自身、昔6畳一間に家族4人で住んでいたことがあり、おばあさんが亡くなった時に祝日を挟んでいたのですぐにお葬式があげられず、死体を2日間部屋においた状態で家族が寝起きをしたという話をしてくれました。
死体がすぐそこにあるにも関わらず、家族は普段通りに一つの部屋でテレビを見たりご飯を食べたりしたそうです。
佃氏は、自身の経験からも植物人間のいる部屋で家族が食事をするというシーンはとても刺激的だと言われました。
この作品では、そろそろ結婚を・・・と考えている長女が自分の家族に植物人間がいるということでなかなか結婚に踏みきれずにいるという設定です。
作者からも「もしも、結婚相手の家族に植物人間がいたら気になるか?」という質問がみんなに出され、様々な回答がありましたが、ある男子受講生は「その植物人間が家族にどれくらい依存しているのかによる。それに、そういうことは結婚直前まで黙っているのではなく、できるだけ早く言って欲しい。」ということでした。

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↑提出された作品に対してみんなで意見を言い合います。

陶芸教室に通う5人の男たちを描いた作品があります。
先生の娘が亡くなったお葬式の帰りに5人は喫茶店に集まり、そこでいろいろな人間関係が見えてくるという内容です。
娘の突然の死にすっかり気を落とした先生が教室を辞めようとしているという話が挙がり、教室を乗っ取ろうとする男、その男の娘と交際している男(彼女の父親がどういう人なのかを知るために内緒で教室に通っている)、保険の勧誘目的で陶芸を始めた男(亡くなった先生の娘とは元同級生)、父親(ゲイ)の彼氏と教室に通う男・・・など人間関係は複雑です。
佃氏は、その複雑な人間関係を興味深く引っ張ってきていて分かりやすくうまく書けていると言われました。
けれども一点挙げるなら、登場人物中のある男とその父親の彼氏(一緒に住んでいて父親の内縁の妻のような立場)という設定の二人については、文章中ではその関係が分かりにくいかもしれないと指摘しました。
二人のやり取りや会話から「もしかしたらこの二人が付き合っているのではないか?」と読者に誤解されたり、前半の隠し玉(二人の関係をわざとはっきり書かなかったこと)がずっと隠し玉のまま終わってしまう可能性があるというのです。
佃氏は自分の書いた戯曲の経験からも、見ている人の思い込みというのは初めの思い込みのまま最後までいってしまうことを話され、二人の関係性については注意して書くようアドバイスがありました。

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↑自分の作品の大筋を語る受講生。

トランプに熱中する女たちを描いた作品では、賭けトランプの戦利品としてホームレスが連れて来られていて同じ部屋にいるという設定です。
そして、トランプをしていく中であることがきかっけとなりそのホームレスも一緒に銀行強盗をすることに。
佃氏にも同様、間違いを犯してしまう女たちを描いた「Sの背骨」という戯曲があるという話になり、
《昔、犯罪者だった女たちが、商店街の仮装大会に出場するためネットで各地から集まるのだけれど、大会は雨で中止になる。せっかくの仮装がもったいないので、その格好のままでフラフラと入った宝石店で強盗と間違えられ、盗るつもりはなかったのに手にあった宝石を掴んだまま逃げてしまう・・・。》
踏み外し系には一種のコツがあることを話してくれました。
暗転の後、明りが点いた時にホームレスが一緒にテーブルを囲んでいるという図はかなり面白いのだけど、ここではホームレスも普通にトランプに参加するのではなく、嫌でも参加せずにはいられないような物理的な理由があった方がよいということです。
そうして、何とかヒートアップして、引くに引けない状況に持っていきたいと言われました。

警察の交通安全運動の講演会のイベントで、控え室に集まったピエロ(大道芸人)、演歌歌手とそのマネージャー、警察署長、イベント会社社長の5人が巻き起こす騒動を書いた作品では小ネタが満載です。
佃氏から「盛りだくさんな内容だけど、話の求心力がどこに行っているのか分からない。誰が中心人物?」と質問されると、受講生は「イベント会社社長を軸に書いていたつもりが、実は行き詰っていて・・・。」と告白。
佃氏はあれこれ展開のパターンを語り、「誰の目線で書いて作者自身が一番楽しめるのか?(物語の中に入ってみて自分が体感して誰が一番楽しめるのか。)」ということを頭において書き進めていくといいとアドバイスされました。

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↑「俯瞰するとコメディはわりと難しいからね。」と佃氏。

来週は講義もいよいよ最終回、最後まで書き上げての提出です。
書き上げた提出作品からリーディングの候補を4つに絞り、その中より2作品がリーディングとして上演されます。
最後まで気を抜かないよう、みなさん頑張って下さいね。

Posted by at 12:56 PM

[戯曲講座] ツクダ式戯曲講座
第六回(7月29日(土)14:00〜18:00)

いよいよほぼ全員が書き始めていて、今回は戯曲の出だしの部分が提出されています。
小学校のPTAの役員をしている父親4人とクラス担任の教師を登場人物に書いた受講生に佃氏から「書いていてどんな調子?」と質問がありました。
「登場人物の一人一人を登場していく時に説明しながら書こうと思って書いていったけど、それぞれ誰なのかきちんと書けていないような気がします。」という答えが返りました。
佃氏は、読んでいる限りその心配はなく、その代わり作者が軸に置こうとしている人物が読み手の予想する人物とは異なることを指摘しました。
作者が中心に置こうとする人物が担任の教師であるなら、戯曲の前段階で彼が不在がちなのが気になるというのです。
それから、これは他の受講生も同様、話の展開が早くなりすぎていると。
「この感じだと20〜30分の話で終わってしまいそうな気がするんだよね。これから先、手詰まりになるのでは・・・?」と言われました。
佃氏は「例えは、コラムでりんごの話を300字で書くとしてどう書く?」とみんなに質問し、そのりんごが青森産の“つがる”であることや、生産した農家について、栽培方法を書くなどの答えが返りました。
「それじゃあ、5000字で書くとしたら?」という質問には、アメリカと日本のりんごの対比、文学作品におけるりんごの扱われ方、りんご以外の果物についての話を書くという答えが。
佃氏は、それと同様で1時間ものの戯曲を書くときは一つの話では時間がもたないので、関係のない(直接的ではない)話をいくつか入れて広がりをもたせる必要があることを話されました。

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↑今日は欠席多くが多く、佃氏以外は全員女子の講座風景。

シェルターで暮らす人達を書いた作品では、前回と中心人物が変わっていました。
佃氏は、「北村想さんの作品にもシェルターを描いたものがあるんだけど、それが浮かぶなあ。」と言い、その『ザ・シェルター』の話をしてくれました。
受講生の書く話では、シェルターの外で灰色の雪(実は新型の化学兵器)を浴びると発症して死んでしまうという設定です。
これについても「どのくらいで発症するの?」「うつるの?」と佃氏は質問し、受講生はまだ具体的には決めていない様子。
そして、他の受講生が提出しているような現実的ではない(?)唯一のこの作品に対して、「せっかく(戯曲の世界では)何でもありなのだから、こじんまりしてしまうよりは自分の好きなように書いてみれば?どんな風にでも利用できるんだから思い切りやっちゃって下さい。」とも言われました。
受講生の方も、「雪を浴びて遅かれ早かれ死ぬのであれば、他の人も皆(自分の子供でさえも)殺してしまおうとも考えている。」と話し、なにやらすごい展開になりそうです。

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↑「北村想さんの『ザ・シェルター』よりも面白くなるかもしれないよ。」と、佃氏。

植物状態の次女が一時退院をして家に戻ってくる話を書いた受講生は、「書き出してみて思ったよりラストまでが遠く、これからどうなるのだろう?」と不安になったと言います。
出だしの、母とお祖母さんの電話の会話によって次女が退院することを知らせたいという作者に、佃氏は「もったいない!」と一言。
「そうではなく、次女が“今、着いた”ところで始まるのだから、これを大事にしたい。」と言われ、「舞台ではやっぱり見た目って大きいんだよね。聴く情報よりも見る情報なんだよ。長女が初登場するシーンにしても、普通に部屋に入ってくるのではなく里帰りの格好で今実家に帰って来たという出方の方がいい。」とアドバイスされました。
他にも、作者は当初三女を悪い子に設定してあったのを前回では良い子に変え、今回はまた悪い子に戻したりと、いろいろと考え悩んでいるようです。

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↑提出された作品をまずは音読。OL役を担当し、なりきって声に出して読む佃氏。

「社内風紀向上委員会」のOL5人を書いた作品では、頭から9ページが提出されていてなかなかの進み具合です。
作者は全員すごく性格の悪い女として描いたということでしたが、他の受講生からはそこまで嫌な感じはしないとの感想でした。
佃氏からも、OLの会話の中で「仕事とは関係のない話、本当にただの悪口を間に入れてみては?」とアドバイスがあり、「最終的に小さくまとめてしまわないで、どんどん修羅場にしてくれていいからね。誰かが殺されそうになるくらい・・・手に負えないくらいがいい!」ということでした。
いよいよ、講座も残すところあと2回。
次回ではそれぞれの作品の半分くらいが見えてくるのではないかと思います。

Posted by at 01:14 PM