2009年度「月1ダンス部」はじまります!

「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド講座(ライブ)
  ~ダンスがこんなにわかっていいかしら北九州スペシャル 2009」
講師/乗越たかお
2009年4月18日(土)@北九州芸術劇場・創造工房

春を通り越してもうすぐ梅雨になりそうですが、あらためましてこんにちは、「月1ダンス部」です新年度になりまして、新たにスタートとなった最初の活動は昨年も好評だった乗越たかおさんによる「コンテンポラリー・ダンスを見て聞いて知る講座」です。今回は4月に昼・夜2回に分けて行われた講座の模様をレポートします。

※あらかじめ:残念ながら映像は権利関係など難しい問題があってご紹介できません、すみません。

昼の部

「コンテンポラリー・ダンス徹底ガイド講座(ライブ)~ダンスがこんなにわかっていいかしら北九州スペシャル2009」

 わずか100年前にはバレエや民族舞踊、そしてショーダンスという形でしか存在しなかったダンスが、どのように現在のコンテンポラリーダンスの流れになっていったかという歴史を最近の25年を中心に映像を交えて取り上げてお話ししてくださいました。

その中で印象に残った話をいくつかご紹介します。

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 講師の乗越さんです。

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会場の様子です。たくさんの方が来られました。

 

「コンテンポラリーダンス」ってなに?とは一番初めに出会う疑問でもありますが、実は「コンテンポラリーダンスとは」という明確な定義は無いそうです。


バレエでもなく民族舞踊でもなく、モダンダンスでもないとは言えますが明確な統一されたスタイルがない。
なぜそうしたことになっているかという一つの要因にこのダンスがあるひとつの流れから発展せず、同時多発的な流れから発達していったからだと言えます。
それでも明確な定義をつけようとして、一時期ポストモダン、ポストポストモダンなどとは言われてはきたが、結局それも大体のものであってはっきりとした形にはなっていないそうです
元々「コンテンポラリー」という言葉は「同時代」という意味があるので、今の時代に行われているダンスはすべてコンテンポラリーのカテゴリーに入れることができる、
ということです。
つまり現代で行われている「踊り」はすべてコンテンポラリーダンスに入れられるってことですね。


そんなコンテンポラリーダンスですが、その魅力は?というと、ストーリー性があっても無くても、言葉があっても無くても良くて「なんでもあり」の要素が強い事が一番に挙げられるそうです。
人は感情を言葉にする生き物ですが、実際には言語化するよりも多くのものを感じていて、その部分をコンテンポラリーダンスという形で掴みだして見せてくれるような所に魅力を感じると言われました。
バレエのように特別な体を持った人が特別は訓練を積み、特別な舞台で踊ることではなく、自分の体で自分にしかできない踊りをすることで、それをコンテンポラリーダンスと言うことだと思う、と話されてお昼の部は終了となりました。

質疑応答を入れると予定時間をオーバーするほどの大盛況でした、今回の講座はこのあと夜の部へと続きます。

 

 

夜の部

「乗越たかお ダンス酔話会(すいわかい)」
小倉北区鍛冶町ギャラリーSOAP

今回初めての試みとして、劇場から外に出て講座を行うことになりました。場所は歩いて10分ほど離れた所にあるギャラリーSOAPさんです。
ギャラリーSOAP http://g-soap.jp/
カフェでの開催になりますので、ワンドリンク制です。
気軽にくつろぎながら映像と話を楽しんでほしいという試みです。
いつもの講座とは違った雰囲気で夜の部は始まりました。


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ギャラリーSOAPです。

 

おもに映像を紹介しながらその間に現在のコンテンポラリーダンスの話を交えてくださいました。

国際的な賞を受賞することで日本のダンサーを取り巻く環境は変化してきて、近年では国内でもトヨタコレオグラファーアワードという大きなコンクールが開催されコンテンポラリーダンスの認知度は知られてくるようになりました。
ただ、そこにも良い面と悪い面があって、そうやって行くうちにコンテストでないと踊らないダンサーが増えてしまった。
コンテストは20分程度の小作品で審査をするため、それに慣れてしまい自分たちで自主的に作る長い作品を上演する機会が少なくなってきたそうです。
海外では発表するのに一晩掛かるようなものを「作品」と呼ぶ程で、そうした違いが大きくなると幅広く活躍することが難しくなることのではと危惧があるようです。最近の海外ではコンテストそのものがフェスティバル形式に方向転換するようになってきていて、コンテスト重視の考え方ではなくなってきているそうです。そうした中で、コンドルズや森山開次などコンテストを経ないで出てくるダンサーも増えてきているようです。

このほか、アルベールビルオリンピックで開会式での振付をおこなったドゥクフレという方のカンパニーの舞台映像を見たのですが、この時とてもシルク・ド・ソレイユに似ていると思いました。そのはずで、このカンパニーは振付に必要な装置技術をシルク・ド・ソレイユに売却した事もあるそうです。
この話から最近日本ではよく知られているシルク・ド・ソレイユの話になりました。
シルク・ド・ソレイユはテクニカルを含むと5千人!の巨大カンパニーで、世界各地で数々作品が上演されており、特にラスベガスでは作品のために劇場が作られるほど。
現在東京でもディズニーランドに常設劇場が設けられ公演が行われていますが、やはり毎日莫大な人数の観客が押し寄せるラスベガスとは違う環境なのでラスベガスのような巨大な機構を持った(ステージが一瞬にして全てプールになるとか、そこかしこから火が噴き出すとかだそうです)タイプのステージは作りにくいのでは、ということでした。

韓国でのダンス事情についても話がありました。
韓国では大学によってダンスのクラスがあり、卒業後は大学のカンパニーに所属するそうです。このため基礎をきっちりしているダンサーばかりで国際的な競争力としては日本よりも韓国の方に強みがあるそうです。
ただ、大学のカンパニーであるためどこの大学に所属しているかや誰が誰の弟子かと言うことが非常に重要な事になってくるそうです。
そんな「徒弟制度」が強く残っている韓国のダンスで、最近乗越さんが見た面白いダンスと言って見せてくれた映像は二人のダンサーがプロレスのようにひたすら戦い続けるダンスでした。
このプロレスのような動きも新しい手法の一つだそうです。
このほかにも関係性だけを決めて踊る手法や、振付家の指示を厳密に守ったり逆に即興ばかり入れたりといった手法もあるそうです。

ヨーロッパではEU加盟により国境がなくなり、国を超えたコラボレーションが盛んに行われている。
その他、新興国はダンスを輸出産業・観光資源と捉えて取り組んでいるところがあり、PR用のDVDを作成・配布やHPで動画を見られるようにして普及を図っているが、日本は舞踏以降のダンスをなかなかアピールするルートがない。興味を持っている海外のダンス関係者は多いので自分は個人的にオススメのダンスカンパニーを編集したDVDを配ったりして孤軍奮闘している。そうした中で北九州は立派な設備とスタッフ、なによりアジアに近い地の利があるのでそれを活かして、『アジアにおける日本ダンスの中心』になってほしいし、その力は十分にあると乗越さんは言ってくださいました。

最後に、乗越さんがダンスを見るときの基準についての話をされました。
自分がワクワクすることを大事にしている、「お勧めを」探さない、砂漠で一人で立って踊る自由を持つことが大事。
一つの正解を見つけようとするよりも、無数にある間違いを楽しむことがアートだからみんなもそうやって楽しんでほしい。
そのような事を話して締めくくりとしていただきました。

参加した皆さんからも
「楽しかった、時間が足りない」「ダンス公演を見てみたい」「これからダンスを見ていく中で参考になります」「カルチャーショックを受けた、ダンスの幅を広げていきたい」
といった言葉がアンケートで寄せられました。

次回の「月1ダンス部」はワークショップ。
井手茂太さんをお迎えしての「おどるカラダを楽しもう!」を開催します。
またレポートを載せますのでご覧ください。

今回からレポート担当になりました、これからしばらくお付き合いくださいよろしくお願いします。

2009年度「月1ダンス部」広報担当:野村

学芸事業とは?

北九州芸術劇場では、地域の人々とつながり、ともに育っとはていくために、学校や地域でのアウトリーチ(教育普及)活動や、作品の創造を支える専門家を育成する講座、舞台芸術を身近に体験してしてもらうワークショップなどの学芸事業を行っています。

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