なぜ、私が「月に吠える」に決めたのかというと、それは「序」に魅かれたからです。
「序」は「月に吠える」のいわゆるまえがき部分。なぜ朔太郎が詩をつくるのかそういったことが書かれています。
詩、というもに私自身、普段から親しみがあるのかというとそういうわけでありません。
題材を探している過程で、父がふと「萩原朔太郎は面白い」とふと言ったことが耳に残っただけで、手に取らずに終っていたのだろうと思います。
朔太郎の第一印象は「切れ味抜群」。私は後腐れのないものとか、簡潔なものとか、シャープなものを好む傾向があるので、朔太郎は拾い読みした時点で気に入ってしまいました。
詩人はナルシストだ。まあ、今でもそう思いますが。
ナルシストの自慰がおもしろければそれは立派な芸術になるわけで。朔太郎を読み込めば読み込むほど「酔ってんじゃねえ」と彼に対する私の悪態が増えたのと同じだけ、つい顔がニヤけてしまう回数も増えていったわけです。
人間は一人一人にちがつた肉体と、ちがつた神経とをもつて居る。我のかなしみは彼のかなしみではない。彼のよろこびは我のよろこびではない。・・・私のこの肉体と感情とは、もちろん世界中で私一人しか所有して居ない。またそれを完全に理解してゐる人も私一人しかない。これは極めて極めて特異な性質をもつたものである。けれども、それはまた同時に、世界の何ぴとにも共通なものでなければならない。この特異にして共通なる個々の感情の焦点に、詩歌のほんとの『よろこび』と『秘密性』とが存在するのだ。この道理をはなれて、私は自ら詩を作る意義を知らない。
「序」のこの部分を読むと妙に興奮します。
「月に吠える」は朔太郎の処女詩集。
他のものに比べて青さが残るこの詩集が好きです。
さかな公団「月に吠える」にご来場の皆様ありがとうございました。
Posted by 鵜飼秋子 at May 26, 2007 03:02 PM
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