3:ブンゴーと散歩でも 

March 10, 2007

春はやっぱり散歩でしょう

やばい、間違えたかもしれない。「文豪」ってなに?

今日、「萩原朔太郎は文豪じゃないよ」って言われた。
え、そうなの。文を取り扱う凄い人はみんな文豪なんじゃないの?

辞書を引く。
【文豪】・・文学の大家。大作家。
え、「文学」ってなに、「作家」ってなに?
【文学】・・1 思想や感情を、言語で表現した芸術作品。詩歌・小説・戯曲・随筆・評論など。文芸。
【作家】・・芸術作品の制作をする人。また、それを職業とする人。特に、小説家。(以上、「大辞泉」より)
ほっ、「詩歌」かろうじて入っている。
「特に、小説家」という言葉が気にはなるものの、まあ朔太郎は文豪といえよう。

そう、今回、わたくし萩原朔太郎さんとお付き合いすることとなりました。
朔太郎さんとのお付き合いはかれこれ半年以上となりましょうか。
これから5月までアナタ色に染まりますが、たまにちょっとだけ浮気させて。
そう、散歩でも・・。

というわけで、毎週文豪について気ままに語ってみます。
はっきり言って私は読書家ではありません。
知っている文豪さんはたかが知れていますが、
ちょっとだけ付き合ってください、そう、散歩程度に。

Posted by 鵜飼秋子 at 02:05 AM

March 17, 2007

本日のお相手は宮沢賢治さん

宮沢賢治といえば『やまなし』です。私のなかでは。小学校の国語の教科書に載っていました。考えてみると宮沢さんとの出会いはそれが始めてだったのかもしれません。
『やまなし』の舞台はたしか川の中。川の中に住む「なにか」の親子が主人公だったような。「なにか」については「雲母と思われる」というようなことが註で述べてあり、これまた「雲母」がなんなのかわかりませんでした。
言葉の響きから勝手に川に浮いているマリモを想像してました。
違います。「雲母」っていうのは鉱物です。

さて。ものがたりはというと。
川の中でさかなが生きていたりそれを鳥のくちばしがさらっていったり・・たしかそんなです。ストーリーを覚えているというよりもその世界のイメージが強く印象的に残っています。色彩が豊かで透き通ったような幻想的な世界。教科書には貼り絵の挿絵がついていましたが、ちょうどセロファンを通した光の色がよく似合う世界として私の記憶にはインプットされています。

宮沢さんは岩手県出身。私は東北地方にはいまだ行ったことがありませんが、冬はあたりが全てまっ白い雪で覆われてしまう白紙のような世界なんだと想像しています。ながいながい冬を感じながら色とりどりの世界を貼り合わせる宮沢さん。
常にクリーンな澄んだ空気を呼吸している、そんな少年のような方なのでしょうか。

Posted by 鵜飼秋子 at 04:54 PM

March 24, 2007

本日のお相手は三島由紀夫さん

なんといいましょうか、鋭い眼光。そんな印象の方です。

私がごくごく最近、三島文学に触れた機会は「うずめ劇場」の舞台です。『近代能楽集』に収録されている「道成寺」「班女」「卒塔婆小町」を上演していました。実は、学生のころ「道成寺」を部活の先輩と稽古していたことがある私は非常に懐かしく舞台を拝見しました。

学生のころはね、意味がわからなかったんです。繰り出される言葉が装飾的すぎて意味がわからない、というような。端的にいうと難解だ、と感じていたわけです。ですが、あのころから6、7年経った今もう一度「道場寺」に触れると非常に納得してしまったというか、そこに描かれた女性や人間に、非常にリアリティを感じました。「まあ、若い女とはそいういうものであるなあ」と。そういうことを「汚れなく若い」というのだなあと腑に落ちました。

小説『金閣寺』、これまたもうさっぱり理解できませんでしたが、「柏木」という足に障害(内翻足)のある男と「令嬢」の強烈なカップルが印象に残っています。「金閣寺」のことははっきり言ってこのカップルのことしか覚えていません。人間の持つ優越感とか劣等感とかそういう感情を基礎として繋がっている関係ですが、これがある意味では根本的で、ある意味では非常に美しいカップルだと感じたのです。

そう、「美意識」とか「美学」とかそういった言葉が似合うのが、目ヂカラ三島様です。

Posted by 鵜飼秋子 at 11:56 PM

April 07, 2007

本日のお相手は芥川龍之介さん

今回「二番目の庭」さんが取り組むという芥川様。
小学生のとき、学校の体育館にたしか「こんにゃく座」さんが来て「蜘蛛の糸」と「杜子春」を見せてくれました。

芥川さんはなんといっても美形です。切れのある端正なお顔立ち。だけど寝ているときに歯軋りしそうなイメージがあります。
文章は、明瞭簡潔、正確な表現。どちらかというと理系より。
私は『トロッコ』という短編が好きでした。少年が主役のかわいらしいお話です。

瑞樹くんが題材にした『歯車』『河童』『夢』は実はどれも読んだことがありません。
予習しとかんといけん。

Posted by 鵜飼秋子 at 10:35 PM

April 14, 2007

本日のお相手は樋口一葉さん

初めての女性のお相手ですね。
『たけくらべ』の口語訳を読みました。原文もはじめの何ページか読みましたが、どうも文語が読み慣れず眠気が襲ってくるので断念。すみません。
お話自体は美内すずえさんの『ガラスの仮面』で北島マヤが「美登利」を演じるシーンではじめて知りました。

「美登利」と「信如」の初恋。
うーん。わかるなあ。初恋は実らないから美しい。大人になる一歩手前の世代、男も女も関係なく遊んでいた子供が異性を意識し始めて、また自分のその感覚を自身で歯痒く思ったり。いやん。素敵。
現代の少女マンガにも通ずる美的感覚です。少女マンガ好きにはぐっと来る話です。せつなく美しい。

今は5千円札でお顔を拝見できる一葉さん。美人さんです。お名前も洒落てますね。
しかし、25歳で亡くなって作家生活はたったの14ヶ月って。早すぎます、惜しいです。
炎のような生涯ですね。

Posted by 鵜飼秋子 at 01:37 AM

May 05, 2007

本日のお相手は寺山修司さん

不思議な世界に迷い込みたい気分のときにぴったりです。
寺山様と言えば、「天井桟敷」に代表される演劇活動のほかに、映画、詩、評論と多方面において活動をされていた方ですが、今日は寺山様の詩について語ってみましょう。
今、私の手元には「寺山修司少女詩集」という文庫があります。少女の愛を謳った詩が多く収録されています。
寺山様の世界はメルヘンでありながらその根底に、人間の持つある普遍的な残酷さとでもいいましょうか、そういった人間の無意識のうちの本質を楽しむ、いわゆる一口でいうならシュールレアリスム的要素を多分に含んだ世界だと言えます。とても優しい母の顔をしていると信じていた童話が、実は非常に残酷な人間の本質を述べた話であるように。どんなに美しく優しいものにも醜く冷酷である一面が潜んでいるという事実に私たちは恐怖を感じます。

だけどもしも、人間が本当に善良で正しい行いばかりをする生き物だったらこんな詩を楽しむなんて感覚は到底ないだろうし、そういった自分の残酷さを認識しているからこそ人は寺山様の詩に内心、共感してしまうのでしょう。

私が大学で演劇を初めて間もないころ、いくつも演劇のビデオを見せられましたが一番深く感動したのは「天井桟敷」のビデオでした。高校の教科書に「縁日にひとりおじさんが迷い込んで辺りは風車がくるくる回っているだけ」といったイメージの寺山様の短歌が載っていましたが、心当たりのある方はこの詩の名前を教えてください。

Posted by 鵜飼秋子 at 11:33 AM

May 26, 2007

最後のお相手は萩原朔太郎さん。

なぜ、私が「月に吠える」に決めたのかというと、それは「序」に魅かれたからです。
「序」は「月に吠える」のいわゆるまえがき部分。なぜ朔太郎が詩をつくるのかそういったことが書かれています。

詩、というもに私自身、普段から親しみがあるのかというとそういうわけでありません。
題材を探している過程で、父がふと「萩原朔太郎は面白い」とふと言ったことが耳に残っただけで、手に取らずに終っていたのだろうと思います。
朔太郎の第一印象は「切れ味抜群」。私は後腐れのないものとか、簡潔なものとか、シャープなものを好む傾向があるので、朔太郎は拾い読みした時点で気に入ってしまいました。

詩人はナルシストだ。まあ、今でもそう思いますが。
ナルシストの自慰がおもしろければそれは立派な芸術になるわけで。朔太郎を読み込めば読み込むほど「酔ってんじゃねえ」と彼に対する私の悪態が増えたのと同じだけ、つい顔がニヤけてしまう回数も増えていったわけです。

人間は一人一人にちがつた肉体と、ちがつた神経とをもつて居る。我のかなしみは彼のかなしみではない。彼のよろこびは我のよろこびではない。・・・私のこの肉体と感情とは、もちろん世界中で私一人しか所有して居ない。またそれを完全に理解してゐる人も私一人しかない。これは極めて極めて特異な性質をもつたものである。けれども、それはまた同時に、世界の何ぴとにも共通なものでなければならない。この特異にして共通なる個々の感情の焦点に、詩歌のほんとの『よろこび』と『秘密性』とが存在するのだ。この道理をはなれて、私は自ら詩を作る意義を知らない。

「序」のこの部分を読むと妙に興奮します。
「月に吠える」は朔太郎の処女詩集。
他のものに比べて青さが残るこの詩集が好きです。

さかな公団「月に吠える」にご来場の皆様ありがとうございました。

Posted by 鵜飼秋子 at 03:02 PM