作・演出 柴幸男さんインタビュー[前編]

いよいよ「テトラポット」開幕まであと6日!
お稽古も大詰めに入ってきました。

本日と明日は、2日間に渡って柴幸男さんのスペシャルインタビューをお送りします!
現在のお稽古の事なども交えつつ、様々な角度から「テトラポット」の魅力についてお話頂きました。

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■北九州に来て約1ヶ月、まちには慣れてきましたか?

そうですね。始めの方は旦過市場で野菜を買って、ご飯を作って食べたりもしてたんですよ。
今はちょっと忙しくなってきちゃったので出来ていませんが(笑)。

■柴さんが北九州で好きな場所、はありますか?

僕はやっぱり川が凄く好きで、稽古に来る時はTOTOの工場の方から勝山公園あたりまで川沿いを自転車で走
って来るんですけど、それが凄く気持ちいいです。

■昔から川がお好きなんですか?

実家が川の傍だからっていうのもあると思うんですけど、以前、東京の多摩川沿いを走る電車の中でお芝居
をやる企画があって。その時に実際に多摩川沿いを歩いてみて、川が出てくる話を書いたんです。そこから
だんだん自分にとって川とか水とかの近くに住むことが気持ちいいし、快適なんだなって事を思い始めまし
た。多摩川の駅にも小さな古墳があったんですが、昔は水道とかも整備されてないし、もともと人って水の
近くにしか住めないんですよね。

北九州は、リバーウォークと紫川があるだけで相当僕の中でポイントが高いんですよ(笑)。

■「テトラポット」も水=海が舞台になっていて、製作発表の際には3.11との関連性についても語ってくだ
さいましたが、柴さんは3.11をどのように体験されたのでしょうか?

僕は地震自体をリアルタイムで感知はしていないんです。
ちょうどその時岐阜県で市民劇を創っていて、岐阜も結構揺れて周りは皆気づいたらしいんですけど、僕は
一切分かっていなくて。それでふつうに稽古をしていたら、終わった頃にはテレビの映像とかが凄い事にな
ってた...という感じで。

でもその後だんだん情報も入ってきて、自分も東京に帰ってから、例えば"モノがない"とかいう事は凄く
あったんですよね。あと停電の問題とか。そういう間接的な被災と、直接的な地震の被害の映像とが、なか
なか自分の中で折り合いがつかなかったんです。映像としては見るけど自分の目の前にそれはないし、凄く
断絶しているというか、どこでその状況が起こっているのか?っていうのがあって。

それでどうしようかなと思っている時にちょうどバスの便数が増えてきたので、実際にいわきに行って以前
お世話になった方に会ったり、映像で見ていたものにかなり近い被害の状態を見たりしました。そのあたり
の事がぐちゃぐちゃに混ざりながら、結論が出る訳ではないけれど、今回の作品にも出てきちゃったという
感じですね。

■柴さんはこれまでの作品でも誕生と消滅、生と死―について描かれる事が多かったですが、3.11以降
何か死生観に対する変化や、作品への影響はありましたか?

何かが生まれて何かがなくなる―ことさら死を取り扱おうって事はなくても、突き詰めるとこれまで死ぬ話
しかやってこなかったんですけど(笑)、今回はいつもと反転してると思うんですよね。

「わが星」の感想で凄く面白かったのが「よし!じゃあ死のう!」みたいな感想があって。それは死ぬのが
怖くないというか、死をどうやって受け入れるかっていう事だと思うんですね。もともと「わが星」では、
人が死ぬ事じゃなくて、自分が死んで消える事への肯定っていう事をやっていたので。

今回の「テトラポット」でも、一個一個の死が大きな意味を持たずシュッと死んでたりするんですけど、今
までは死ぬ事で終わっていた話が、今回はもう一度生き直すというか、生きる方へともう一回押し出される
人の話になっている。今までは死を受け入れたり、落ち着かせたりしている人の話を書いてましたけど、今
回はまだ死んでない人、生きなきゃいけない人達の方を書こうとしてるんですよね。

最初は同じつもりで書き始めてたんですけど、後々だんだん出来上がってくると、今まで書いてきた傾向や
作品と反転しているな、と思いました。

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【後編に続く】

北九州芸術劇場プロデュース公演について

2008年よりスタートした【北九州芸術劇場プロデュース公演シリーズ】とは
1.北九州を感じさせる脚本内容
2.第一線の演出家が、一ヶ月以上北九州に滞在して創作
3.出演者は北九州・福岡をはじめ地元の人材を中心にオーディションで選抜
4.スタッフも劇場や地域のメンバー中心の布陣
5.東京公演を実施し、北九州から全国へ良質の演劇を発信
という5つのコンセプトをもとに創られています。

2012年10月

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