March 21, 2007

思いのすべてを、「蒲団」という選択にして
[1:もしも蒲団がひけたなら、]

今回のNGTは「文豪」をテーマに各カンパニーの3者が、創作しています。
藤本くんは、鵜飼さんは、なぜ、原作をそれにしたのだろう。
ぼくがそう知りたいように、ぼくがお会いするライターの方々や関係者のみなさんからも、同様の質問をいただきます。

のこされ劇場≡の場合はどうだったんでしょう。
なぜ、田山花袋の小説「蒲団」だったのか。

▽「蒲団」ってなに?
花袋に師事していた弟子の岡田美知代とのかかわりをもとに描いた小説。日本における自然主義文学、また私小説の出発点に位置する作品で、末尾において主人公が女弟子の使っていた蒲団の匂いをかぐ場面など、性を露悪的にまで描き出した内容が当時の文壇とジャーナリズムに大きな反響を巻き起こした。

▽「蒲団」のあらすじは?
34歳くらいで、妻と三人の子供のある作家の竹中時雄のもとに、横山芳子という女学生が弟子入りを志願してくる。始めは気の進まなかった時雄であったが、芳子と手紙をやりとりするうちにその将来性を見込み、師弟関係を結び芳子は上京してくる。時雄と芳子の関係ははたから見ると仲のよい男女であったが、芳子の恋人である田中秀夫も芳子を追って上京してくる。
時雄は監視するために芳子を自らの家の2階に住まわせることにする。だが芳子と秀夫の仲は時雄の想像以上に進んでいて、怒った時雄は芳子を破門し父親と共に帰らせる。そして時雄は芳子のいない空虚感のために、芳子が寝ていた蒲団に顔をうずめ、泣くのであった。
(出典:フリー百科事典『ウィキペディア』)

選定の理由に「蒲団」が優れた文学作品であるということは、大前提であります。
さらに、ぼく個人とそれを引き合わせた理由は、大きく分けて2点あります。

1、登場する主人公の滑稽さを、自分のそれを愛するように愛してしまった。
2、作品そのものよりも《田山がした「蒲団」という行為》に、惹かれた。

今回は、最初の「1」のことについて、少し書いてみようと思います。


1、主人公「竹中時雄」≠田山花袋への愛
彼は、愛すべき人間です。
ぼくは、愛しました。
以下、ぼくが愛した彼のことを断片的に。

▽通勤途中によく見かける「女教師」へのあこがれ
平凡な毎日にも楽しみがあるんだ。
あの子、いいなあ。
かわいいなあ。
つきあいたいなあ。
でも、ぼくには妻も子供もいるしなあ。
やつらがいなかったらいいのになあ。

▽女弟子、横山芳子への執念
若いなあ。
かわいいなあ。
好きって言っちゃおうかなあ。
でも、ぼくには妻も子供もいるしなあ。
それに、弟子に手を出しちゃまずいなあ。
今日は、何を教えてあげようかなあ。
戦後の女の在り方、とか?
海外の女性ってこんなにもアレだよ、とか?
ドキドキするなあ。

▽横山芳子に彼氏ができてからの狂気
彼氏ができたとか、マジありえない。
ふしだらな。
いてもたってもいられない。
彼女をとられたくない。
だけど、ぼくと芳子は付き合ってるわけでもないし。
彼氏を芳子に近づけないためにも、どうすれば。
ああ、悩む。
ていうか、キスとかしたのかなあ。
アレは、もうアレしたのかなあ。
わああああああああ。

▽チクり大作戦
彼氏が、芳子の近くをウロウロしているらしい。
もう、気が狂いそう。
嫁よ、もっと酒をもってこい。
家では子供がうるさいので、たたいてやった。
ああ、ちゃぶ台もひっくり返したさ。
それでも、気が治まらない。
そうだ、もう、これしかない。
横山芳子の実家のお父さんに、ふしだらなアレをチクってやろう。
んで、激怒させて、実家に連れて帰ってもらおう。
そうすれば、彼氏と芳子を遠ざけることができる。
いっひっひ。

▽物語のおわりに
ざまあみろ、彼氏くん。
横山芳子は、遠く離れた実家に帰ったぞ。
もう会えまい。
ぼくの勝ちだ。
いっひっひ。
あ!
あれ!?
ということは、ぼくも彼女に会えなく・・・
いやだ、会いたい、でも会えない。
でも会いたい、どうしよう。
わああああああ!!
そうだ、彼女が下宿してた部屋に行ってみよう。
あ、彼女が残した着物だ。
懐かしいなあ、匂いをかいでみよう。
くんくん。
あ、なんだか余計に虚しさが。
彼女の使っていた蒲団もある。
哀しい。
この蒲団の上で、おもいっきり泣いてやる。
泣いて、全部忘れてやる!
わああああああああ!!

以上。
ぼくは、彼を愛さずにはいられない。

次回も、ぼくが「蒲団」を選んだ理由について続きをお話します。
それではまた。

PS
現在、北九州芸術劇場がある施設「リバーウォーク北九州」のホームページにて
のこされ劇場≡「蒲団 -futon-」の特集が大々的に組まれています。

《前編》作/演出:市原幹也インタビュー

《後編》俳優:沖田みやこインタビュー

《おまけ》のこされ劇場≡「蒲団 -futon-」人物相関図

なんとチケットプレゼントもあり!
そちらも、ごらんくださいね。

Posted by 市原幹也 at March 21, 2007 01:18 PM