2006年03月17日

第4回 日本人と鶴
[3:鶴を折る日々 by 市原幹也]

さて、連載第4回のテーマは「日本人と鶴」です。

元来、鶴は季節を定めて去来するところからも、人々に神秘感を与えていました。
その優美さから霊鳥と崇められおり、稲田に降り立って穀物を食べたり、小枝や羽を上空に投げてくわえ捕ったり。
そんな習性から、鶴が稲穂を運んできて稲作が始まったとする伝説が日本各地に残されています。
沖縄にも!?
ちなみに、名前に「鶴」を含んだ日本酒が多いことも、こんなところで納得ですね。
その他にも、調べたところ。
民話や言い伝えに登場する女の名前には「鶴」の文字が入っていることが多かったり。

ぼくらは、鶴を、身近ながらも神秘的にとらえているところが少なからずあります。

さあ、話を「鶴の恩返し」に展開しますが。

女に姿を変えた女は、機(はた)を織ります。
実は、この「機織り」という行為も、伝説や言い伝えが多いのです。
インターネットで検索するだけでもたくさんソースはでてくるのですが、もっと身近に。
そう、みなさんも知っている七夕伝説の「おりひめ」の名を頭に思い浮かべてもらえれば、どうでしょう。
これは中国からの伝説ですが、今でも日本人に愛されている伝説であり、七夕祭りなど日常にとけ込んでいる風習ですね。
天を支配しているとされる、天帝の娘だった 織女(おりひめ)は、子どもの頃から外には出ずに機織りばかりしている仕事熱心な娘。
彼女もまた、機を織りつづける女でありながら、それをやめたとき、愛する男を失ってしまいます。

機を織る、という行為も我々に神秘的な印象を与えるもの。

「鶴の恩返し」では、鶴が、機を織る、というこの2つの神秘的なるものの組み合わせ。
その鶴とかわした約束を破ってしまった主人公の男の罪深さというか、愚かさは、対照的にも引き立ちます。
それらが、現代の我々の心にも深く息づいている、というのは興味深いところ。
ぼくは、そのような点からも「鶴の恩返し」からは、素朴でありながら、なにかとてつもないメッセージを感じるのです。

さて、ということで次回のテーマは「『鶴の恩返し』の謎」と題しまして、そこらへんも探っていけたらな、と思います。

お楽しみに≡!

Posted by 市原幹也 at 2006年03月17日 16:56