2006年03月03日

第2回 鶴の種類と生態
[3:鶴を折る日々 by 市原幹也]

さて、突然ですが。
連載に入る前に、簡単に「つる〜あの日飛び去った夕鶴によせて〜」はこんなお話にしようと思う、という構想を書いてみます。

現代に生きる男。
彼は「何かしら」祈っている。
そんな彼は、不思議な世界に迷い込んでしまう。
それは「鶴の恩返し」の物語の世界。
まるで「不思議の国のアリス」、あるいは浦島太郎でいう「竜宮城」といったところか。

その世界には、鶴の女が男を待っていた。
今は、居ない、この物語の主人公を、待っていた。
男は、その世界「鶴の恩返し」の主人公に仕立て上げられていく。
鶴の女や、その世界の住人たちによって。
男はいつしか、女の織る布や、幸せで愛に溢れる日々に没頭してしまう。
そして、元の世界に帰ることを忘れてしまう。

しかし、それは続かない。
男は、見るな、と言われた禁を犯してしまい、元の世界にはじき出される。
女は男との日々を失い、悲しむ。
またこの人も過ちを犯してしまうのか、と。
女は、再び「鶴の恩返し」の世界で、新たにやって来る別の主人公を待っている。
この女、永遠に飲み込まれた「卒塔婆小町」といったところか。

一方、現代にはじき戻された男は、自分が犯した罪を償おうにも、もうあの世界には戻れない。
そして、また「何かしら」を祈り続けて生きていくしかなかったのだ。

こんなことを考えながら日々、稽古に励んでいます。
みなさん、どうぞお楽しみに。

さて。
連載2回目のテーマは「鶴の種類と生態」です。

みなさんが思っている以上に、鶴の種類は多い。
鳥綱には26目、約7600種の鳥類が属している。ツル目はその26目のうちのひとつで、12科189種からなりたっている。日本に生息、あるいは飛来して来る鶴でいうと「タンチョウ」「ナベヅル」などがある。

それでは、「鶴の恩返し」に登場している鶴は一体どれになるんだろう。
みなさんのアタマのなかにいる鶴を呼び起こしてもらいたい。
どんな鶴?

多くはこうあるはずだと思う。
色は白くて。首んところが黒くて。頭が赤い。
そんな鶴。
つまり「丹頂鶴(タンチョウヅル)」。
それは、掛け軸や花札に松と一緒に登場する鶴であったり、旧千円札の裏のそれであったり。「鶴の恩返し」の絵本やアニメで観ている人もいるかな。

ぼくらのアタマのなかの鶴は潜在的にタンチョウなのだなあ。
それも理由のひとつとなり「つる 〜あの日飛び去った夕鶴によせて」では、タンチョウに的を絞って鶴を描いている。

それでは、タンチョウヅルについて。


タンチョウ(丹頂)は、ツル目ツル科の鳥類。
タンチョウヅルともよばれる。
学名はGrus japonensis。英名Red-crowned Crane。
体長約140cmの日本最大の鳥類である。
日本では北海道東部の釧路湿原などでみられ、
冬季は人里近くに群れをつくって過ごす。
春先には優美な求愛ダンスがしばしば見られ、
つがいが形成される。
3月になるとつがいは湿原に移り、
枯れアシなどを用いて地面に巣をつくる。
各つがいは数平方キロメートルにもわたる領域を
「なわばり」とし、仲間を寄せ付けない。
メスは2つの卵を産卵し、30日強で孵化する。
アイヌではタンチョウを
サルルンカムイ(湿原の神)と呼ぶ。
(以上、出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

ここで、面白いことに気づきます。
まず恋人をゲットするための「求愛ダンス」。
「つる〜」に置き換えて考えてみると。
それはもちろん求愛でもあり、祈りの行為にも似ているのかな、と。
主人公を入れ替えては、出会いと別れを永遠に繰り返している「鶴の恩返し」の世界の女王、鶴の女。
禁を犯さずいつまでも幸せに一緒に居てくれる男が現れれば、この苦しい永遠は断ち切れるのかもしれない。
それも一つの、祈り。
そんなことを考えてしまいます。

そして男と女が結ばれると現れる「なわばり」の領域。
「つる〜」のなかでは、鶴の女が主人公の男を待っている世界「鶴の恩返し」そのものが彼女の「なわばり」なのかもしれません。
だれにも邪魔されず、いつまでもこのまま幸せにいたい。
そんな思いが「なわばり」のなかでは、より一層つよく、濃く表出してきますね。

最後に「鶴=神の鳥」。
他の文献にも、日本人は、稀にしか見ることのできない巨大な翼をもった真っ白な鳥を神格化していたことが認められます。
例えば、折り鶴に祈りを込める現代の風習からも感じるように、自分たちの手の届かない領域へ我々の祈りを運んでくれる鳥なのかもしれません。

日本人の意識下にある鶴の存在というのは、むかしも今も、あまり変わってないのでしょうか。
ぼくたちは鶴のことをどう思っているんでしょうか。
次回、そんなことを考えてみましょう。

それでは、また来週。

追伸
先日まで、北九州芸術劇場リーディングシアター「犬神」(作:寺山修司、演出:白井晃)に参加し、白井晃氏の演出助手をさせて頂いておりました。
そこに没頭するあまり、この回の連載が遅れてしまったことをお詫び致します。
それにしても、すばらしい日々、すばらしい経験となりました。「つる〜」にも、その経験をバッチリ注ぎ込みたいですね。

Posted by 市原幹也 at 2006年03月03日 20:00