2005年11月12日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第8回 まとめ (11月7日[月])

最終回となる今回は、事前に「実現可能な舞台の企画を考え、企画書と予算書を提出する」という課題を踏まえてのまとめとなりました。
提出された企画の総評としては「具体的で、実行性のあるものになった」とのこと。

まずは、シアターラボのリーディング公演を観て感じたことを話し合いました。
シアターラボの上演作はまだ未定。「どちらも共感できなかった」という人あり、「どちらも見てみたい」という人ありで、実際、リーディング公演のアンケートでも同じような感触だったようです。

そして、課題として提出された企画をそれぞれみんなで見ていき、よい部分、もう少しよくできる部分を講師にコメントしてもらいました。

<ライブハウスでシチュエーションコメディをやる企画>
・出演者も作・演出家も地元の若い人選で、チケット代や会場費の予算面も、集客さえうまくいけばやれるよね。
・一過性のイベントではなく、これをやる人たちにとってこの先この企画がどういう意味を持つものになるか考えてやれるといいね。いずれギャラを獲れるようになるには?とか短編から入って長編を書いてもらうとかという方向も考えて。

<映像とダンスのコラボレーション企画>
・実際にやることが決まってるんだよね。十分やれると思いますよ。
・企画書にプロフィールが充実しているのはいいね。ユニットの場合は、どういう人がやるのかがとても大事。
・舞台で映像は頻繁に使われるようになっているけど、この企画でやろうとしていることは明快なコンセプトがあっておもしろいですね。
・企画書のスタッフ欄の順番をちょっと整理したらいいかな。(これは他の人も)
 慣例的に、
   (1)作・演出 → 美術 → 照明 → 音響 … などの文芸部分
 の次に
   (2)大道具製作や照明、音響オペなどのテクニカル部分
   (3)全体統括として 舞台監督
   (4)制作は最後、さらに一番最後に企画制作。

<地元劇団に外部から演出家を迎えて既存戯曲を上演する演劇の企画>
・この劇団にこの演出家、戯曲という選び方は正しいね。
・「市民参加」の部分で、「出演以外の別の入口もある」という考え方はきちんと企画書に書いておいた方がいいよ。
・名前を挙げている人たち本人の了解をもらえればやれそうな企画だね。

<同じ素材をミュージシャンと俳優がそれぞれに解釈・パフォーマンスして対決する企画>
・どういうステージになるのか、対決の仕方が見えないですね。
・企画書には「実験的」と書いてあるけど、言葉としては訴求力が弱い。多くの人がイメージを描けるように伝えた方がいいね。

<子どもたちが出演する劇団が九州各県公演を行う企画>
・交通・宿泊費が今書いてある予算で大丈夫だろうか?
・拠点から離れる場合、地元の協力者を捕まえないとまず集客は難しい。
・公演予定の1年くらい前に、行こうと思うところにビデオと企画書を持って、文化振興財団や教育委員会とかに協力者を見つけた方がいいですね。共催を獲るくらいの気持ちで。
・テクニカルスタッフの人件費は旅に出るには少ないかな。県内で、他の仕事ができる場合ならなんとかなるけど拘束期間も長くなるわけだし、その期間他の仕事もできなくなるので、仕事として成立する金額で組まないと受けてもらえない。
・出演する子どもたちの言葉も企画書にあるといいな。

<童話をパントマイムで表現する企画>
・キャッチコピーに使われている数字の説明が企画書本文にないけど、そういうのはちゃんと入っている方がいいよ。
・入場料とか予算面はもう少し考える余地があるね。

<ミュージカルの有名ナンバーを上演する企画>
・かなりがんばらないと想定入場者数は集まらないなあ。
・著作権料がすごくかかると思うから、今設定の料金じゃ難しい
・舞台に費用をかけなかったとしても照明にお金がかかったりするかもね。
・シリーズ化するとか規模を縮小して、総製作費をもう少し少なくできるとよいですね。

<有名古典戯曲を幕ごとに地元劇団が上演する企画>
・企画書、予算書を見る限りでは、舞台監督=統括者が複数いる。それは現実的に無理。照明、音響、美術なども、使う空間は一つなので、プランをする人は一人の方がいい。複数いてできないことはないけど、打ち合わせをたくさんしないといけなくなるかな。そのあたりを整理できると可能性が出てくる。
・入場料設定が、各幕の料金が通常の相場になっているけど、通し券の方を相場にそろえた方がいいだろうね。
・細かいところを詰めていければやれない企画ではない。地元劇団と一緒にやる地元の演劇振興ということで、助成金も獲りやすいと思う。やってみては?

<戦後文学の有名作家の作品を現役女性作家が戯曲化、有名舞台俳優の出演で上演する企画>
・かなり実現性のある企画。この作家の作品を舞台化するにあたっては、誰に脚本を依頼するかというのが課題だと思うけど、彼女なら十分できるし、現代性の強い作品ができるだろうと思う。
・彼女が戯曲化を引き受けるかどうかは演出家次第だろうと想像されるけど、今企画書に書いてある人だと実績面で弱いかな。
・出演者のギャラは今の予算の3倍はかかるだろうね。
・舞台費ももっと多くした方がいい。
・シリーズ化もできそうだね。

◎受講生全体で指摘のあった箇所
・衣装=時代劇など和物に対して使う。通常の現代劇では「衣裳」。ほとんどの受講生が企画書に「衣装」と書いていました。
・この場で発表された企画は盗まないように。日本では、舞台作品の企画や製作に著作権はないので、法律的には問題はないけれども…。

最後に講師の新里氏は、
「最初に出してもらった課題に比べて、中身も数字も見えるものになった。
 ・コンセプトが自分の中で明快か
 ・企画の話をしたときに、話した相手がイメージできるか
 ・作る過程が頭に浮かぶか → それが浮かべばお金のことも見えてくる
 という点を考えていってください。
 一つ一つのパーツを積み上げていくことで舞台は出来上がる。」
とコメントし、まとめとなりました。

この講座の受講生から、実際に公演の企画がどんどん生まれるといいですね。(了)

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 18:17

2005年10月22日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第7回 上演に向けて (9月22日[木])

まず、シアターラボリーディング公演の2作が決まったことが知らされ、戯曲講座の講師であるはせ氏の推薦の中からシアラボ演出の松本氏がこの2作を選ばれたことなど選定過程の説明がありました。今後2作ともリライトをしてもらうことになっているが、演出家が作家ふたりに直接会ってリライトの方向性を話してもらうという段取とのこと。リライトというのは、作家と演出家の組み合わせでどのような方向性で書き換えるのか、ケースバイケースだそうです。

その後、現段階で決まっているシアターラボのスケジュールの告知があり、シアターラボの制作に参加したい人は参加可能とのことでした。

新里氏の方から、「前回までに(講師なりの)演劇の流れ・考え方は伝えたつもりなので、もう一度応募用紙に戻って、受講生が本当に知りたかったことが伝わったのか確認していきたい」とあり、それぞれの受講生と話をしていきました。

「助成金を手に入れる方法」「消防法を詳しく」「上演権・著作権について」「共催・提携・後援などが取れる具体的な方法」「スタッフなどの人集め」など、各人が受講前に知りたかったことに対し、一連の講座の中で知り得たかどうか、また、足りないところは補足していきました。

例えば消防法は、
・タバコなど舞台上で火をつける場合は「禁止行為解除申請」が必要で、避難経路の確保や火を消すバケツを用意しないといけない。
・スモークも、オイルを燃やすタイプの機械の場合は申請を出す必要があるけど、その土地の消防署にもよる。
などの補足がありました。

共催や後援については、
「基本的には、企画書の書き方を考えて”足”で稼ぐ。TVとか後援に名前だけではあまり意味がない。以前はお金を出してもらえたりということもあったけど、最近はあまりそういうことも少ないので、お金のかわりにTVスポットを流してもらうという方法もある。教育委員会などの後援の場合は学校にチラシを配ることができるなどのメリットもある。企画をどう売っていくか考えた上で、足を動かした方がいい。」
と佐藤氏からのコメント。

「公演の流れが知りたい」と書いていた受講生には、この講座での内容を踏まえて
「予算の大小に関わらず、演劇をつくるときの手間は一緒なので、最初から最後まで現場についてみるといい」(佐藤)
「地元の劇団にスタッフとして入ってもらうとよりよいかも」(新里)
などのコメントもありました。

次回が最終回ですが、最後に、もう一度企画を考えるという課題が出ました。
 ・公演会場などは問わない
 ・実現可能な演劇の企画
 ・企画書と予算書を作る
最後になかなか大変そうです…。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 11:46

2005年09月09日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第6回 戯曲を読む (9月8日[木])

今回は、「戯曲講座」で受講生が書いた戯曲9本を宿題として事前に読み、シアターラボ()を念頭において自分だったら上演作としてどれを選ぶか考えてみるという内容でした。

講師曰く「演劇制作の講座なら、戯曲を読むということは外せないと思うのだけど、マネージメントの講座では見かけたことがない。この講座では、制作の立場として「どういう視点で読んだらいいのか」を考えてみようと思う」とのこと。
それを踏まえ、「制作が本を読むにあたって気にするべきことは何か」受講生に聞いていきました。

受講生は、

・予算
・テーマ(何を表現したいのか、伝えたいのか)
・観て面白いか、やってみておもしろいか

と答え、さらに講師の新里氏は、
「予算は演出にもよる。書かれている通りに装置を作っていくのか、役の人数は何人か、時代設定(架空の設定なら演出次第だが、史実にできるだけ忠実にとなると衣裳や装置をリアルにするため費用がかかる可能性がある。)はどうか、場面の数、物語の時間(何時間、何十年が経過するかによって、衣裳の着替えが多くなるとか、舞台上の物と人の変化をわかるように造型する費用がかかる可能性がある。)などが影響してくる。」
とコメント。
そして戯曲を読むにあたって考えるべきことは
・劇場(上演する場所)をいつも思い浮かべながら読む
・ただおもしろいかではなく、“演劇として”おもしろいかどうか=劇的かどうか
だそうです。
「劇的」とはどういうことかは、ひとまず置いておいて、読んできた戯曲を「好き嫌いで判断するならどれか?」をホワイトボードに書き出していきました。
判断が甘めの人、厳しい人などそれぞれで、好き嫌いの基準も「読み進められたかどうか/読みやすいかどうか」「観たいかどうか」「いい台詞があるかどうか」など様々でした。
次に、「どれをいい作品と思うか」を考えました。
新里氏によれば、「基準としては、好き嫌いとは別で、「観客に観せられるか」「創り手たちがおもしろがれるか」などになってくるんじゃないか」とのこと。
また、
・劇場に舞台を観に来るのではなく、本を読みに来る=ストーリーにとらわれてしまうお客さんもいる。(ロングランの作品を観てみれば分かるように)舞台として面白くなければならない。
・戯曲は作家の書いたものだけど、それにいろんな人が手をかけて舞台の作品として成り立つので、お話としておもしろくても「誰がやってもそうなるよね」という作品は舞台としてはどうだろうか。戯曲が、舞台として立ち上げる努力をさせてくれる本かどうか、稽古に立ち会う経験が増えていくと段々見えてくることもある。
・戯曲の中に素敵な言葉を見つけるというのもありえる。古典と呼ばれる作品には、やはりいい台詞(=読んで「いい」のではなく、「言って」いい)がある。
・(演劇の制作なら)戯曲は読みなれてほしい。演出家は制作者が戯曲を読める人かどうか計ってくるし、創り手としての演出家を制作側が計る上でも戯曲を読めていないと話にならない。また、観客は席を立てないことを考えて、がんばってやってほしいのは一気に読むということ。
とも言っていました。
その後、受講生、講師交えて、戯曲講座からの戯曲群に関しての意見を出し合いました。
「独特の台詞のやりとりが、舞台になったときには1時間もたないかもしれない。テレビ向きなのではないか」
「(役者をやっている自分としては)ト書きが書きすぎている」
「書かれている場所を舞台でどう組むのか、非常に難しいが、だからこそどうやれるのか気になる」
「設定としては面白いけど、舞台としてはどうか?映像向きなんじゃないか」
「いい台詞があって、お客さんが受け取ったときに自分のことに置き換えることができる=広がる要素がある」
などの意見が出ました。
そして、先ほど出てきた「劇的/演劇的とはどういうことか?」に戻り、受講生が思う劇的について発言しました。
・舞台の上の事件を観客が同じ空間・時間で共有する
・人間を描いている
・虚構性、日常的ではない出来事を描いている
・作者が物語の中にいる(いないと映像的になる)
などです。
それに加えて新里氏は、「社会に対する批評性」ということを挙げました。
例えば、戯曲講座の作品の一つは、狭い部屋を舞台にしているけども台詞や人物の振る舞いに同時代の感覚が感じられるとのこと。
新里氏の考える「演劇的」とは、下図のように、「観客の目の前で展開している舞台が水面上に見える氷山の一角<A>とすると、観客が想像できる様々なこと、つまり水面下の氷の大きさ<B>が、より深く大きい作品ほど演劇的といえるのではないか」ということです。

gekiteki-ga.gif

ストーリーを追う見方はAのみしか見ないので、劇場を去るときに持ち帰るものが少なく、だから同じ作品をまた観に来ようと思わない。Bの部分は、作品の良さと観客の作品に対しての積極性が出会った時にはどんどん大きくなるから「また観たい」という気になる。最終的に編集によって監督の視点にまとめられる映像作品と比べて、舞台は空間を観客も共有しているのでより想像が広がる可能性を持っているそうです。
・社会への批評性

・見えないものを見せる
という可能性があるかないかがより「演劇的」かどうかのポイントのようです。
そういう意味では、先日の北九州芸術劇場のダンスラボ「未完成、だけど運命、そして新世界。」は、とらえどころがないと感じる人もいましたが、12人のダンサーのダンスそれぞれから持ち帰るものがあり、演劇的なダンスといえるのではないかとのこと。
さらに、制作は、「演劇って何?」と訊かれて答えられる言葉を持つといいそうです。
例えば「演劇はむずかしい。どう見ればいいかが分からない」と言われてどう答えるか?という質問が受講生に投げられましたが、
・(総合芸術だから)好きに観ればいいよ
・何が言いたいのかを見つけるようにしたらいいよ
・正解はないです
・当たりハズレはあるからね
・退屈したら台詞のない人を観てるといいよ
との回答が出ました。
新里氏はこの質問に
 (演劇に限らず、芸術全般に言えることですが、)演劇を観るのは自分を見つめる作業ですと答えるそうです。
「創った人が何を言いたいのかを気にするのではなく、目の前の舞台を観ている自分の頭に浮かぶことや、自分の気持ちがどう動くかを感じているとその舞台の本質に近づく観方がきる」とも。そうすれば「むずかしい」とか「わからない」ということはないはずだそうです。
ただ、制作は自分がどう観るかだけでなく、客席の後ろから観たりして、その舞台に対する客席の反応を感じておくことも大事だということです。一回一回の舞台に対する客席からの最後の拍手の起こり方でその日の舞台の出来が判断できたりするそうです。
今回のまとめとしては、「演劇の制作としては、戯曲を読むのは当たり前の作業だし、演劇として成立するのかどうかを考えながら読みましょう。それにはまず自分なりでもいいので「演劇とはこういうもの」と人に伝えられる言葉を持っていた方がよいですよ」ということですね。


*シアターラボ:北九州芸術劇場がオープン前のプレ事業から続けている演劇製作の企画。戯曲講座で書かれた優秀戯曲を実際に上演するというもの。上演されたときにどうなるのかということを作家に学んでもらう狙いがある。1年目の2001年は選ばれた2本作品を戯曲講座講師の鈴江氏と地元演劇人の大塚恵美子氏がそれぞれ1本を演出、2002年は西田シャトナー氏が選ばれた2作品を一連の作品として演出。2003年は1作品をペーター・ゲスナー氏が演出しました。そして昨年からはシアターラボの上演作品を決める前にリーディング公演を行い、観客の意見も取り入れながら上演作品を決めている。ちなみに今年のシアターラボの演出は文学座の新進気鋭の演出家、松本祐子氏で、リーディング公演は10月22日(土)に行う。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 14:59

2005年08月27日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第5回 上演:作品と観客の出会い (8月18日[木])

まずは講師の方から前回の補足がありました。

営業・宣伝・広報は集客、チケット販売を目指したものですが、「観客」を増やす、つまり「創客」のためにはどうしたらいいか?を考えてみました。
「創客」のためには、演劇の魅力を伝えていくことが重要ですが、そのための手法としては、アウトリーチ(=教育普及、芸術普及)としてワークショップや講座、講演会、セミナーなどがあります。(この講座もその一つ。)
アウトリーチでの体験で、お客さんとしては、例えば北九州芸術劇場のバックステージツアーで裏方のスタッフと出会った人は、舞台の裏側のことも考えながら公演を観るであろうなど、観るときの視点が増える、変わるという効果が考えられます。
舞台作品は、特に新作の場合、それがいい作品になるかそうでもない作品になるか分かりません。だからこそ、それでも観に来てくれるお客さんを増やしたいのです。

また、アウトリーチには、演劇などの現場では想像力やコミュニケーション能力が活かせるという背景から、教育や福祉、医療の分野での社会貢献の側面もあります。
営業・宣伝・広報は、もともと興味を持っている人にしか大きな効果が見込めませんが、アウトリーチには、「(もちろん来てほしいけど)必ずしも観客として来なくてもいい」という考えもあります。つまり、劇場という場に限って例えると、「劇場には行かないけど、自分の住んでいるところにこういう劇場があるのはいいね」と支持してくれる人=サイレントパトロンに向けたものでもあります。

欧米では警察の研修に劇団の俳優などが派遣されたりということもあるそうで、「劇団が学校ワークショップのプログラムを持っているのもいいね」とのことでした。

また、さかのぼって「作品づくりの流れ」についての補足もありました。

主には、技術関係の打ち合わせをどういうタイミングで進めていくかということです。

           (1) 稽古開始(顔合わせ)   
             ↓
 開始から      ↓
             ↓
 7日目ぐらい- (2)半立ち
           (3)立稽古
             ↓
 25日ぐらい -  (4)通し稽古
             ↓
           (5)劇場入り


*(1)〜(5)まで概ね30日間
*俳優・演出家・舞台監督・美術・照明・音響 …が関わっていく。

まず一番最初に打ち合わせが始まるのは美術プランです。

早い場合には稽古が始まる2ヶ月前にプランが決まっていたりもするそうですが、美術打ち合わせは大体稽古に入る前頃から行われます。美術のプランは、俳優がどう動くかアクティングエリアに関わってきます。
美術打ち合わせには、演出・美術プランナー・舞台監督・制作が最低限必要です。
美術プランナーは、どんなセットにするのかの絵やどんな素材にするか、舞台監督は図面を書き、どんな道具の作り方をしていくか、また舞台全体を取仕切っていく役割でもあります。
照明家にもなるべく早い段階から入ってもらい、照明をどう吊っていくか照明プランに関わってくる部分を把握してもらいます。
美術ですから、衣装やヘアメイク、履物なども色合いなど見た目のイメージを共有するのに頃合を見て参加してもらいます。
また、最近は映像を使った作品も多いですが、映像を使う時には注意点も多いので美術打ち合わせの中で話してきます。

次に音響打ち合わせが入ってきます。
音響は美術打ち合わせには基本的には関係ないですが、スピーカーを置く位置に影響が出てくることもあります。
音響の打ち合わせには、美術と同じく、演出家、音響プランナー、舞台監督、制作が関わります。音楽を作曲する場合には、作曲家が曲を作る期間を設けないといけないので、かなり早い段階に決めなくてはいけません。役者の演技に関わってくるので、効果音も稽古場に早めにあった方がよく、本読みのときなどに軽く打ち合わせができるとよいようです。

照明家は、まずは美術が決まっていく段階に関わり、以後は、最初の通しなど、役者がどう動くか、シーンづくりが固まってくる頃から入ってきます。シーンづくりが固まったら照明家は仕込み図面を書き、劇場入り直前頃にオペレーターへの指示をしていくことになります。

衣装は既成のものを使わず、新しく作る場合は、制作期間が必要なので早めに打ち合わせが必要だし、舞台監督はそれぞれのプラン打ち合わせにすべて立ち会っていきます。

また、このような作品づくりの流れの中で、ポイントになる打ち合わせには、制作は必ず立ち会います。予算やスケジュールの面でも重要ですし、制作は作品のことを外の人に話していく立場なので、打ち合わせの中で、作品について話すときに使えるキーワードが見つかることもあります。
舞台監督に舞台関連の予算管理を預けているなど、必ずしも制作が関わらなくてもいいケースもあります。ただし、この場合も舞台監督と制作の間のコミュニケーションが重要になっていきます。

ほかには「ステージング」という、振付や殺陣、歌が入る場合はそれぞれの打ち合わせが必要ですが、もちろん、作品の中でどの程度使われるのかという部分で関わる度合いも変わってきます。ステージングについては、制作というよりは、演出助手が稽古の組み立てをしていくなかで進めていきます。


そして、今回のタイトル内容に入っていきました。

まず、「劇場入りするときに何をしなければいけないか」考えてみました。

・搬入…アルバイト必要?→舞台監督
      車輌
      駐車場のこと ←搬入口の大きさ
・楽屋口の場所
・仕込みスケジュール
・ケータリング(お弁当)
・当日連絡先
・楽屋割(化粧割)
・受付…当日券、預かり券、招待、専用受付、気持ちよく
・チラシ折込、パンフ、アンケートなどの配布物
・キャストスタッフの健康状態
・ロビーなどでの展示
・物販
・初日乾杯
・打ち上げ

「仕込み」のスケジュールも見ていきました。
舞台、照明、音響など、それぞれの部門が一つの空間で効率よく作業していくために、仕込んでいく順番を考え、並行して進められるようなものはそのようにスケジュールを組みます。

    [舞台]    [照明]    [音響]    [衣装]    [小道具]

  床(ベース)  吊り込み  スピーカー
                    吊り込み

      ↓      ↓       ↓

      壁    シュート  ラインチェック

      ↓      ↓       ↓

     天井   プロット  サウンドチェック
         (シーン作り)
      ↓ ※時間がかかる

    仕上げ
-----------------------------------
             ↓
        (テクニカルリハーサル)
             ↓
           場当たり   ←←俳優、衣装なども
     ※稽古場と違うことをチェック
             ↓ (返し稽古:1幕だけなどものによって)
           通し稽古
             ↓
           舞台稽古
           ゲネプロ(G.P)  ←←記録(舞台写真、VTR)
             ↓               ※お客さんがいるときはNG
            初日

では、客席の方で必要なことを考えていきます。

・消防法…舞台ツラから1メートル空ける
・避難経路
-------------------------------
・開場…ほんとに開けていいのかの判断→連絡・命令系統の確認
・開演…時間が押す、押さない→誰と誰が話し合って決めるのか
・注意アナウンス(携帯電話など)
・客止め←演出家の判断も
・遅れ客対応       -┐
・扉の開閉(音・光)   -┴ 案内するスタッフなどやる人に注意すべき点を徹底して伝える。

・見切れ
・客席のゴミ

そして本番が終わり千秋楽を迎えて、

・バラシ
・搬出--車輌
・返し物、保管か廃棄か

-------------------

・清算
・決算
・報告(内外)

と制作の仕事は続きます。


そして次回は戯曲講座で書かれた戯曲を読み、「シアターラボ」で上演したいのはどの作品か考えます。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 16:24

2005年07月22日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第4回 チケットはどうやって売る? (7月14日[木])

今回は「チケットをどう売るか?」についての話です。
チケットをなぜ売るのかということに関して、収入を得るだけではなく、「演劇は観客と出会って初めて作品が生まれるのだ」ということを踏まえて考えていきましょうとのこと。

講師の佐藤さんからいくつかの資料をもらいました。

まず1つ目は、「舞台の営業とは何か」「なぜ必要なのか」を簡潔にまとめたもの。
2つ目は、「営業」の具体的な仕事内容についてをまとめた資料。
そして、実際にある公演の企画書と、どのくらいの動員が実現すれば製作費がまかなえるかを計算するための興行試算表、北九州芸術劇場の営業課が団体営業のときに実際に使っているチラシを2枚。といったように、実物が教材です。

現在講座で取り上げている2つの作品は、いずれも手売りが中心になると予想される規模のものですが、団体営業の視点からも考えてみます。

団体営業には、公演1回などを企業などに丸々買い取ってもらう「買取」と、何割かの団体割引料金を設定した上で、社員の方などにチケットの斡旋をお願いする「斡旋」がありますが、現在は経済状況の影響もあって、公演の買取が難しくなっているそうです。
それで、斡旋をお願いできるところを少しでも多く組織化することが重要になります。
割引率については、特に決まった計算の仕方がある訳ではなく、作品に合わせて設定していくそうです。
また、公共文化施設などの買い公演の場合、営業先に作品をPRするときのポイントは、いくつか注意点もありますが、何が売りなのか、自分たちで自由に考えてよいとのことです。

佐藤さんがホリプロの地方営業などもされていたことを踏まえて、どういうところに地方の公演を営業するのかといった質問もあり、その街のことを調べて、買ってくれそうなところに持っていくとのことでした。
営業も地方営業も、相手がいる仕事で、その作品が相手の気が引けるものかどうかがポイントです。

また、広報と宣伝はどう違うのかという話もありました。
宣伝は、広告などお金を使ってチケットを売るためにやるもので、広報はお金をかけずに雑誌などのメディアに取り上げてもらうことです。しかし、基本的には、切っても切れない関係にあり、チケットを売るためには広報には力を入れたほうがよいとのことです。

広報に関してさらに、少し前の回で「作品を語る言葉を持ちましょう」と講師からありましたが、「演劇だからと文化部・学芸部で必ず取り上げてもらわなくてはいけないわけではない。地域によっては記事の内容によってあまり分かれていないこともあるし、社会部の記者の方が興味を持つこともあるかも知れない。有名じゃないけどおもしろい役者が出る、など、いろんな視点で作品を見ましょう」という話もありました。

次に、具体的に「今回の2つの作品をどう売っていくか?」アイデアを出していきました。

・映画のように、メンズデー、レディースデーなどの設定
・マンガが原作なので本屋のマンガコーナーにチラシを置いたり、コミケでチラシを配ったりする
・WEBで公演情報を書き込む
・原作者にプレトークに来てもらう

などのアイデアが出ました。
それぞれを 営業(足)、広報(口)、宣伝(金) に分類したりしましたが、この3つは演劇で集客するための3大要素だそうです。といっても、作品がいいかどうかで次の公演に足を運ぶかどうかが決まるので、いい作品であることは大前提です。

また、個々のプロモーションとは別に、演劇にとって口コミは大事な要素なので、よく観にきてくれるお客さんを個人プレイガイドとしてチケット販売をお願いしたり、常連のお客さんを会員として事前に情報をお知らせしたりといったことも考えてはどうかと講師は話していました。

そして、今後は媒体での「批評」も必要になっていくだろうとのことですが、「ほんとにその作品がいいかどうかは誰が批評するかというと、それもやはり制作者の仕事であり、批評眼を持って、作品を観ましょう」とのことでした。

次回は観客と作品との出会い、劇場に入ってから何が必要なのかという内容です。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 19:08

2005年07月04日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第3回 作品づくりの流れ (7月1日[金])

3回目の講座は、前回の宿題で作ってきた予算書を発表するところから始まりました。
各費目について受講生それぞれが横に並んで数字を書いていくと、チケット収入の現実を敢えて無視した上での理想の金額を出した人、あるいは乏しい収入を見据えてその中で支出を抑えた金額の人と様々でした。

それぞれの金額を見ながら算出の根拠などを探っていきましたが、人件費を決めるに当たって、世の中の月給の平均や初任給がいくらぐらいかとか、アルバイトの自給がどうなっているかといったことを基準にするといいということです。
舞台づくりで拘束日数がはっきりしている舞台スタッフの人件費は、日割計算で計算できるので分かりやすいそうですが、デザイン・プラン料についてははっきりとした基準がなく、お願いする相手と、業界の相場、その人との関係によって金額は様々のようです。
俳優の出演料も「1ステージにつきいくら」という数え方はしますが、その金額設定の基準もはっきりしたものはないとのことでした。

このように、支出がいくらになるか挙げてみて想定の収入では足りない場合、それでもやりたいというときにはどうするかとなると、収入を上げる=入場料を上げたり、支出を下げる=上演料などの交渉や提携公演にして施設費を下げたりを考えてみましょう、とのことでした。

こうして予算を立て、公演の規模を把握し、次にキャストやスタッフを決めていく…というような公演までの流れを演劇公演の場合、おおまかに書いてみると次のようになります。

 企画
  |
 予算
  |
  プロダクションの構成
   (キャスト、スタッフの決定)
  |
 具体的な企画書
  ↓
-------------
 稽古に入る
 顔合わせ --- 演出意図    
 美術(美術・照明・衣装・ヘアメイク)
 音の打合せも始まる
 本読み
 半立ち
 立稽古
 「場」ごとの稽古←音響が稽古場に入り始める
 通し稽古←照明家が稽古を観てプランに取り掛かる
--------
 仕込み
 場当たり
 通し(ゲネプロ)
 初日

この作品づくりの流れの中で、「制作者」はどういう立場でいるのか、という話もありました。
例えば、演出家と役者が稽古場での盛り上がりだけで、ある演出プランを採用しようとしたときに「それは客席から観てどうなのか?」という問いかけをする立場にあるのが制作者、とのこと。
「単に稽古場や創造現場での雑用の仕事をするのではなく、制作者には「自分がプロデュースするのだ」という意識を持った「クリエイター」であってほしい」そうです。
そのためには演出家や裏方スタッフと対等の関係を築いていなければいけないし、対等であるためには、作品の話がきちんとできるかどうかというのが重要なようです。

では、作品の話をきちんとできるようになるために、まず、「舞台を創っていく上での共通言語になるもの」とは何かが挙げられました。
 戯曲=ひとりひとりがどう読み込めているか
 企画書=どういうふうにやっていこうとしているのか、また、企画書がプレスシートやチラシの元になる
 予算書
 舞台図面(平面図、断面図)
 舞台についての知識(エレベーションや道具帳など)
特に舞台図面やというのは、「マネージメントだから図面が分からなくても構わない」という意識ではなく、基本的な知識を身に付け解るようになろうとする姿勢の有無が、スタッフからの信頼にもかかわるとのことでした。

こういった話題の続きで、実際に演劇をやっている人から悩んでいることなど質問を出してもらいました。
舞台監督と制作の受け持ち領域などの話もあり、講師によると「考え方としては、ステージを含むステージから裏が舞台監督の領域、客席やロビーに関係することが制作の領域。でもせめぎあう部分があるので少しくらい踏み越えることもある。そのために共通言語に対しての知識と理解が必要。」とのことでした。

制作が公演のために作る「ペーパー」の話もありました。
企画書に始まり、予算書や助成申請書、コンタクトシートやプレスシート、稽古日程表、決算書や報告書などなどですが、講師は「たかが紙一枚でもそれを作るためにどれだけの人と話をして、どれだけ動く必要があるか、考えて。それが集約されたものがペーパー。それを作成する過程に制作の仕事が生まれているということを理解してほしい。」とのことでした。

次回は「どうチケットを売っていくか」というテーマに入ります。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 14:56

2005年06月20日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第2回 予算:資金と人はどうする? (6月17日[金])

6月17日、2週間ぶり2回目の講座です。今回と次回で作品製作の中身づくり=予算や人材についてのお話となります。

まず冒頭で、「制作」の仕事にはどういうことが含まれるかという話がありました。
 プロデュース<企画立案>
 アドミニストレーション<経営・運営>
 ファンドレイズ<資金調達>
 パブリシティ<宣伝・広報>
 プレゼンテーション・セールス<営業>
 チケッティング<票券>
 プロダクションデスク<公演進行管理>
など仕事内容は多岐に亘りますが、小さい劇団なら制作者がひとりでやっていたりもするとのこと。
「企画立案」は制作者でなくてもやれるが、制作の仕事は、その企画を具現化していくことだそうです。

そして、前回の講座で教材に選ばれたふたつの企画について、どういう作品にしたいと考えているのか、企画者から詳しい内容を話してもらい、企画を具現化していくには何が必要か、講師、受講生で考えていきました。

<アメリカの現代演劇を翻訳してプロデュース公演を行なう企画>
シンプルな舞台でモノローグ形式のいくつかのエピソードがあり、出演者の数は4人くらい。エピソードとエピソードの間にエピソードの解説やショー的な要素もある。

講師からは「翻訳が重要になる」とのコメントがありました。「翻訳家に全てを任せず、英語の分かる演出家と一緒に演劇の戯曲として訳していく。さらには、原作者の承諾が必要だが、翻案という形で、より日本語での上演にふさわしい形にしていくことも考えられる。」とのこと。

<あるマンガを原作として劇団のプロデュース公演を行なう企画>
原作にしているマンガは、高校生から大学生にかけての同一の人間関係を背景とした短編集で、エピソードごとに主人公は違ってくる。受験のことや恋愛のことに悩みながら過ごす学生の日常が描かれている。特に恋愛に悩む女の子たちの姿は、今でも共感を呼ぶのではないか。

時間軸をどうするか、場所の設定はどうするか、ということが話題になりました。原作が描かれた昭和50年代を再現するのか、現代に置き換えるのか、企画者と同世代の人、あるいは企画者が作・演出を依頼したい作家の学生時代に置き換えるのか、いろいろ選択肢がある中で、講師からは「どうやったら演劇の空間に入れられるか、どういう作品にしたいのかといったことは、作・演出家に任せ過ぎるのではなく、ある程度企画者(制作者)本人で考えておいて、作家と話した上で、脚本執筆にも関わった方がよい」というコメントがありました。

そして、それぞれを具現化するために必要な要素を挙げていきました。
演出家、翻訳家、キャスト、美術、照明、音響、衣裳、など必要になるであろうと考えられる最大限の仕事を挙げていきます。さらに、例えば「音楽劇」にするなら、音楽、作曲、ミュージシャン、振付など考えるべき対象は増えていきます。

講師曰く、「パフォーミングアーツ(舞台芸術)は、舞台(スペース)と観客とパフォーマーが時間を共有することで作品が生まれるが、パフォーマー=創り手(俳優や演出家だけでなく、美術や照明、音響のプランナーやオペレーターも)が創造に専念できる時間と場を提供することを含めて、舞台づくりの環境整備をしていくのが「制作」であり、その時間と場を保証するためにお金が必要になる。とのこと。

「企画を具現化するためには、お金と人とが必要ですね」ということで、予算の話になりました。

予算書のサンプルが配られ、内容を見ていきました。支出の大きな費目としては、文芸費や舞台費、制作費などがありますが、特に文芸費については、、「照明や音響、美術のプラン(デザイン)料は文芸費に入り、オペレーターの費用は舞台費に入る。というのは、プランナーとオペレーターは仕事の内容が違うので分けるべきで、例えば照明費といったときにプランもオペも含んでいるケースがあったりするけど、まずこれくらいは分けて考えてみましょう。」とのこと。

そのほかにも、音楽製作費とは写譜代、生演奏人件費、録音スタジオ代であったり、宣伝営業費の宣伝写真撮影経費には、撮影スタジオ代、メイク・衣裳代、スチールカメラマン費用と中味はまた細かく考えられる、講師の言葉を借りれば「頼るべき専門家がいることを理解してもらえれば」とのことでした。

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↑予算書のサンプル

さて、支出の次は収入です。
座席数とチケット料金からチケット収入を算出。どちらの企画をやるにも足りないであろうとなり、助成金の取得も考えてみようということになりました。
前回の宿題で調べてきた助成金について、受講生が発表。市などが市内で活動する団体を助成するものや、文化庁、民間企業のメセナなどが挙がりました。助成金は、「もらえない」と思わないで「どうやったらもらえるか」を考えて、とのこと。

教材のふたつの企画のどちらか、予算書を作るという宿題が出て、次回に続きます。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 12:22

2005年06月08日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第1回 企画を考える (6月2日[木])

今期で一番最後の開講となる「演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―」が始まりました。
受講者は、福岡・北九州の劇団で制作を務めている人や公共ホールの運営組織で働いている人、市民参加作品などで舞台を経験した人など、総勢10名です。とにかくみなさん、「演劇について知りたい」「舞台をつくる仕組みについて勉強したい」という意欲に溢れた方々ばかりでした。

講座は、全員の自己紹介の後、
「東京・関西は演劇活動の視点からみてどういう地域なのか?(東京・関西にあって九州にないもの)」
「アートマネージメントを一言で言うと?」
などの講師からの質問に、受講生がそれぞれ発言する形で、まずは北部九州の演劇事情を探っていきました。

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↑「東京・関西にあって九州にないもの」を挙げていく

演劇では、プロとアマチュアの境界が分かりにくい、何をもって「プロ」とするか、という話題も出ました。
「お金を取るかどうか」「演劇で食べていけるかどうか」「自分がプロと言ったらプロ」など受講者から様々な答えが出る中、講師からは、作品(や演技など)が買取りという形で上演され上演料(出演料)をもらえるなど、「他者に認められることが重要」という点が示されました。それを踏まえた上で、アートマネージメントをする人には、マネージメントの対象がプロ(あるいはプロになりうる人たち)かどうか、判断していく意識も必要だと話されました。

「戯曲講座」で書きあがった戯曲から、2月にあるシアターラボでの上演作を選考する過程も、今回のアーツマネージメント講座には含まれていて、実践的な内容になりそうです。

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休憩の後、課題として提出されたそれぞれの企画を見ていきました。

<課題>
北九州芸術劇場 小劇場(100席から200席)で上演可能と思われる企画を事前に考え、A4用紙1枚に (1)企画名 (2)企画趣旨  (3)企画内容 にまとめて提出。

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↑それぞれの企画を見ていく。

「劇場」が企画したものとして演劇フェスティバルのような複数の劇団が公演を行なう企画や、劇団の定期公演の企画、既存の小説を題材にパントマイム作品を立ち上げる企画など、内容は様々でした。
それぞれについて、「5W1H」を見ていき、「なぜその作品なのか」「北九州芸術劇場の小劇場で上演するということを前提にしているか」など、足りないところや今回の課題に則しているか、講師からコメントがありました。

最終的には、

 ・あるマンガを原作として劇団のプロデュース公演を行なう企画
 ・アメリカの現代演劇を翻訳してプロデュース公演を行なう企画

の二つを教材として、予算の考え方など今後の講座を進めていくことになりました。いずれも戯曲化に伴う著作権や上演権の問題などを含んでおり、題材としてはちょうど良いようです。

助成金について調べてくる宿題が出て、今日の講座は終わりました。
ではまた次回。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 21:11