[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]
第5回 上演:作品と観客の出会い (8月18日[木])
まずは講師の方から前回の補足がありました。
営業・宣伝・広報は集客、チケット販売を目指したものですが、「観客」を増やす、つまり「創客」のためにはどうしたらいいか?を考えてみました。
「創客」のためには、演劇の魅力を伝えていくことが重要ですが、そのための手法としては、アウトリーチ(=教育普及、芸術普及)としてワークショップや講座、講演会、セミナーなどがあります。(この講座もその一つ。)
アウトリーチでの体験で、お客さんとしては、例えば北九州芸術劇場のバックステージツアーで裏方のスタッフと出会った人は、舞台の裏側のことも考えながら公演を観るであろうなど、観るときの視点が増える、変わるという効果が考えられます。
舞台作品は、特に新作の場合、それがいい作品になるかそうでもない作品になるか分かりません。だからこそ、それでも観に来てくれるお客さんを増やしたいのです。
また、アウトリーチには、演劇などの現場では想像力やコミュニケーション能力が活かせるという背景から、教育や福祉、医療の分野での社会貢献の側面もあります。
営業・宣伝・広報は、もともと興味を持っている人にしか大きな効果が見込めませんが、アウトリーチには、「(もちろん来てほしいけど)必ずしも観客として来なくてもいい」という考えもあります。つまり、劇場という場に限って例えると、「劇場には行かないけど、自分の住んでいるところにこういう劇場があるのはいいね」と支持してくれる人=サイレントパトロンに向けたものでもあります。
欧米では警察の研修に劇団の俳優などが派遣されたりということもあるそうで、「劇団が学校ワークショップのプログラムを持っているのもいいね」とのことでした。
また、さかのぼって「作品づくりの流れ」についての補足もありました。
主には、技術関係の打ち合わせをどういうタイミングで進めていくかということです。
(1) 稽古開始(顔合わせ)
↓
開始から ↓
↓
7日目ぐらい- (2)半立ち
(3)立稽古
↓
25日ぐらい - (4)通し稽古
↓
(5)劇場入り
*(1)〜(5)まで概ね30日間
*俳優・演出家・舞台監督・美術・照明・音響 …が関わっていく。
まず一番最初に打ち合わせが始まるのは美術プランです。
早い場合には稽古が始まる2ヶ月前にプランが決まっていたりもするそうですが、美術打ち合わせは大体稽古に入る前頃から行われます。美術のプランは、俳優がどう動くかアクティングエリアに関わってきます。
美術打ち合わせには、演出・美術プランナー・舞台監督・制作が最低限必要です。
美術プランナーは、どんなセットにするのかの絵やどんな素材にするか、舞台監督は図面を書き、どんな道具の作り方をしていくか、また舞台全体を取仕切っていく役割でもあります。
照明家にもなるべく早い段階から入ってもらい、照明をどう吊っていくか照明プランに関わってくる部分を把握してもらいます。
美術ですから、衣装やヘアメイク、履物なども色合いなど見た目のイメージを共有するのに頃合を見て参加してもらいます。
また、最近は映像を使った作品も多いですが、映像を使う時には注意点も多いので美術打ち合わせの中で話してきます。
次に音響打ち合わせが入ってきます。
音響は美術打ち合わせには基本的には関係ないですが、スピーカーを置く位置に影響が出てくることもあります。
音響の打ち合わせには、美術と同じく、演出家、音響プランナー、舞台監督、制作が関わります。音楽を作曲する場合には、作曲家が曲を作る期間を設けないといけないので、かなり早い段階に決めなくてはいけません。役者の演技に関わってくるので、効果音も稽古場に早めにあった方がよく、本読みのときなどに軽く打ち合わせができるとよいようです。
照明家は、まずは美術が決まっていく段階に関わり、以後は、最初の通しなど、役者がどう動くか、シーンづくりが固まってくる頃から入ってきます。シーンづくりが固まったら照明家は仕込み図面を書き、劇場入り直前頃にオペレーターへの指示をしていくことになります。
衣装は既成のものを使わず、新しく作る場合は、制作期間が必要なので早めに打ち合わせが必要だし、舞台監督はそれぞれのプラン打ち合わせにすべて立ち会っていきます。
また、このような作品づくりの流れの中で、ポイントになる打ち合わせには、制作は必ず立ち会います。予算やスケジュールの面でも重要ですし、制作は作品のことを外の人に話していく立場なので、打ち合わせの中で、作品について話すときに使えるキーワードが見つかることもあります。
舞台監督に舞台関連の予算管理を預けているなど、必ずしも制作が関わらなくてもいいケースもあります。ただし、この場合も舞台監督と制作の間のコミュニケーションが重要になっていきます。
ほかには「ステージング」という、振付や殺陣、歌が入る場合はそれぞれの打ち合わせが必要ですが、もちろん、作品の中でどの程度使われるのかという部分で関わる度合いも変わってきます。ステージングについては、制作というよりは、演出助手が稽古の組み立てをしていくなかで進めていきます。
そして、今回のタイトル内容に入っていきました。
まず、「劇場入りするときに何をしなければいけないか」考えてみました。
・搬入…アルバイト必要?→舞台監督
車輌
駐車場のこと ←搬入口の大きさ
・楽屋口の場所
・仕込みスケジュール
・ケータリング(お弁当)
・当日連絡先
・楽屋割(化粧割)
・受付…当日券、預かり券、招待、専用受付、気持ちよく
・チラシ折込、パンフ、アンケートなどの配布物
・キャストスタッフの健康状態
・ロビーなどでの展示
・物販
・初日乾杯
・打ち上げ
「仕込み」のスケジュールも見ていきました。
舞台、照明、音響など、それぞれの部門が一つの空間で効率よく作業していくために、仕込んでいく順番を考え、並行して進められるようなものはそのようにスケジュールを組みます。
[舞台] [照明] [音響] [衣装] [小道具]
床(ベース) 吊り込み スピーカー
吊り込み
↓ ↓ ↓
壁 シュート ラインチェック
↓ ↓ ↓
天井 プロット サウンドチェック
(シーン作り)
↓ ※時間がかかる
仕上げ
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↓
(テクニカルリハーサル)
↓
場当たり ←←俳優、衣装なども
※稽古場と違うことをチェック
↓ (返し稽古:1幕だけなどものによって)
通し稽古
↓
舞台稽古
ゲネプロ(G.P) ←←記録(舞台写真、VTR)
↓ ※お客さんがいるときはNG
初日
では、客席の方で必要なことを考えていきます。
・消防法…舞台ツラから1メートル空ける
・避難経路
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・開場…ほんとに開けていいのかの判断→連絡・命令系統の確認
・開演…時間が押す、押さない→誰と誰が話し合って決めるのか
・注意アナウンス(携帯電話など)
・客止め←演出家の判断も
・遅れ客対応 -┐
・扉の開閉(音・光) -┴ 案内するスタッフなどやる人に注意すべき点を徹底して伝える。
・見切れ
・客席のゴミ
そして本番が終わり千秋楽を迎えて、
・バラシ
・搬出--車輌
・返し物、保管か廃棄か
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・清算
・決算
・報告(内外)
と制作の仕事は続きます。
そして次回は戯曲講座で書かれた戯曲を読み、「シアターラボ」で上演したいのはどの作品か考えます。