2005年06月20日

[演劇人の為のアーツマネージメント講座 ―How to 「演劇制作」―]

第2回 予算:資金と人はどうする? (6月17日[金])

6月17日、2週間ぶり2回目の講座です。今回と次回で作品製作の中身づくり=予算や人材についてのお話となります。

まず冒頭で、「制作」の仕事にはどういうことが含まれるかという話がありました。
 プロデュース<企画立案>
 アドミニストレーション<経営・運営>
 ファンドレイズ<資金調達>
 パブリシティ<宣伝・広報>
 プレゼンテーション・セールス<営業>
 チケッティング<票券>
 プロダクションデスク<公演進行管理>
など仕事内容は多岐に亘りますが、小さい劇団なら制作者がひとりでやっていたりもするとのこと。
「企画立案」は制作者でなくてもやれるが、制作の仕事は、その企画を具現化していくことだそうです。

そして、前回の講座で教材に選ばれたふたつの企画について、どういう作品にしたいと考えているのか、企画者から詳しい内容を話してもらい、企画を具現化していくには何が必要か、講師、受講生で考えていきました。

<アメリカの現代演劇を翻訳してプロデュース公演を行なう企画>
シンプルな舞台でモノローグ形式のいくつかのエピソードがあり、出演者の数は4人くらい。エピソードとエピソードの間にエピソードの解説やショー的な要素もある。

講師からは「翻訳が重要になる」とのコメントがありました。「翻訳家に全てを任せず、英語の分かる演出家と一緒に演劇の戯曲として訳していく。さらには、原作者の承諾が必要だが、翻案という形で、より日本語での上演にふさわしい形にしていくことも考えられる。」とのこと。

<あるマンガを原作として劇団のプロデュース公演を行なう企画>
原作にしているマンガは、高校生から大学生にかけての同一の人間関係を背景とした短編集で、エピソードごとに主人公は違ってくる。受験のことや恋愛のことに悩みながら過ごす学生の日常が描かれている。特に恋愛に悩む女の子たちの姿は、今でも共感を呼ぶのではないか。

時間軸をどうするか、場所の設定はどうするか、ということが話題になりました。原作が描かれた昭和50年代を再現するのか、現代に置き換えるのか、企画者と同世代の人、あるいは企画者が作・演出を依頼したい作家の学生時代に置き換えるのか、いろいろ選択肢がある中で、講師からは「どうやったら演劇の空間に入れられるか、どういう作品にしたいのかといったことは、作・演出家に任せ過ぎるのではなく、ある程度企画者(制作者)本人で考えておいて、作家と話した上で、脚本執筆にも関わった方がよい」というコメントがありました。

そして、それぞれを具現化するために必要な要素を挙げていきました。
演出家、翻訳家、キャスト、美術、照明、音響、衣裳、など必要になるであろうと考えられる最大限の仕事を挙げていきます。さらに、例えば「音楽劇」にするなら、音楽、作曲、ミュージシャン、振付など考えるべき対象は増えていきます。

講師曰く、「パフォーミングアーツ(舞台芸術)は、舞台(スペース)と観客とパフォーマーが時間を共有することで作品が生まれるが、パフォーマー=創り手(俳優や演出家だけでなく、美術や照明、音響のプランナーやオペレーターも)が創造に専念できる時間と場を提供することを含めて、舞台づくりの環境整備をしていくのが「制作」であり、その時間と場を保証するためにお金が必要になる。とのこと。

「企画を具現化するためには、お金と人とが必要ですね」ということで、予算の話になりました。

予算書のサンプルが配られ、内容を見ていきました。支出の大きな費目としては、文芸費や舞台費、制作費などがありますが、特に文芸費については、、「照明や音響、美術のプラン(デザイン)料は文芸費に入り、オペレーターの費用は舞台費に入る。というのは、プランナーとオペレーターは仕事の内容が違うので分けるべきで、例えば照明費といったときにプランもオペも含んでいるケースがあったりするけど、まずこれくらいは分けて考えてみましょう。」とのこと。

そのほかにも、音楽製作費とは写譜代、生演奏人件費、録音スタジオ代であったり、宣伝営業費の宣伝写真撮影経費には、撮影スタジオ代、メイク・衣裳代、スチールカメラマン費用と中味はまた細かく考えられる、講師の言葉を借りれば「頼るべき専門家がいることを理解してもらえれば」とのことでした。

art-m0617_1.jpg
↑予算書のサンプル

さて、支出の次は収入です。
座席数とチケット料金からチケット収入を算出。どちらの企画をやるにも足りないであろうとなり、助成金の取得も考えてみようということになりました。
前回の宿題で調べてきた助成金について、受講生が発表。市などが市内で活動する団体を助成するものや、文化庁、民間企業のメセナなどが挙がりました。助成金は、「もらえない」と思わないで「どうやったらもらえるか」を考えて、とのこと。

教材のふたつの企画のどちらか、予算書を作るという宿題が出て、次回に続きます。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 12:22