[劇場塾]
劇場塾始まりました
5月7日の戯曲講座より劇場塾始まりました。
今年の講座のレポートはこちらで更新していきいます。
デザインなど随時整えていきますのでしばしお待ちを。
Posted by 北九州芸術劇場(K) at
22:15
[「10年書き続ける」ための戯曲講座]
第一回(5月7日(土)14:00〜18:00)
今年度の講師は岐阜の劇団『ジャブジャブサーキット』主宰のはせひろいち氏です。
はせ氏は受講生を前にして、地元でも戯曲の講座をやっていていつも受講生の大半は女性だけれども、ここでは男性の方が多く(10人中6人もいるのは)意外だと言われました。そのことについては、「嬉しいような気も半分、何で(同性として)将来のライバルを育てなきゃいけないのか(笑)?という思いも半分」ということです。
まず初めに自身の劇団の紹介ということで、『ジャブジャブサーキット』ができて今年で20年目を迎え、「岐阜から発信して都会の奴らに見せてやろう!」という思いで年に2回東京・大阪・名古屋の三都市で公演を行っていること、自分達の稽古場を持ち舞台美術は外注せずに劇団でやっていることなどを話されました。
そして、戯曲講座を受けるにあたって「ここで講座を受けたからといって戯曲のレベルが飛躍的に上がったり何かの賞に近づけるというものではない。それは分かっているよね。」と確認をし、「けれども、ここでは自分の持っているもの全部を包み隠さず教えていきたい。10人講師がいれば10通りの教え方があるように王道があるわけではないが、幸い人数も少ないのでできるだけ誠心誠意でやっていこうと思う。」と言われました。
↑講師のはせひろいち氏
この講座のタイトルに「10年書き続けるための戯曲講座」とありますが、それについてのお話もありました。
はせ氏自身23,4年戯曲を書いてきているのでその半分くらいのことは言ってもいいだろう(笑)との思いもあり、10年というのは数字的にも一区切りであるし10年あれば何か(変化が)あるということで、「初めは格好つけで付けたタイトルだけどそう考えてみたら悪くないんじゃない?」ということです。
はせ氏が思う10年描き続けるために最低限必要なことに次の2つがあるといいます。
1.集団が身近にちゃんとあるor舞台が想像できる
2.自分の劇作スタイルがあって自信が持てる(すがる場がある)
集団というのは劇団に所属する人であればその劇団を指し、舞台が想像できるというのは作家が舞台を想定して書けているかということを言います。
また、誰が何と言おうと自分の作品に信念を持っていてそれを貫くことができるか、この思い込み?も大切であると。
はせ氏より戯曲と小説の違いについての質問があり、「戯曲は台詞とト書きで構成されている。」、「戯曲は役者が演じる事が前提に書かれている。」などの答えが挙がりました。
どれも正しく、更に言うなら小説は人のしゃべった事を「 」で書くという決まりがあるけれど、一般的に戯曲では「 」を付けません。
なぜならば、戯曲では台詞が主役なのでいちいち「 」を付ける必要がなく、サブであるト書きは台詞より少し下げて書かれていることが多いということです。
「 」を付けないことについては強制ではないけれど、審査会場では文句を言う審査員もいるので気をつけたほうがいいともアドバイスがありました。
それから、小説は書いたそのものがすでに作品であるけれど、戯曲は小説と違ってそれだけで終われないと言われました。
演出や照明、音響など他のスタッフも入ってきてどんどん変わっていくのは普通で、戯曲自体に内在するその可能性を楽しめるか?だとも。
そういったことも含めて、戯曲ではちょっとした気配りができるかどうかが大切であり、小説と違って書いている“私”が見えすぎない方がいいケースもあると言われました。
↑講座風景
次に、演劇をテレビや映画と比較してみます。
例えば家でテレビを見ている時、もしもその番組がつまらなければスイッチ一つで簡単に変えることが出来ます。
テレビは寝転がってお菓子を食べながら見ることも出来るし気軽なものです。
映画の場合は同じようにはいかず、飲み物やポップコーンくらいはつまめるけれど、面白くなくても1000円以上払っているせいもあって我慢してもう少し見る努力をするでしょう。
けれども、演劇だともっと違って、飲食はできない上いよいよつまらないと思っても途中で席を立つにはかなりのエネルギーが必要です。
それは見る側の距離感が違うからだとはせ氏は言われました。
よく「芝居は生もの」ともいうように、自分から少し離れたところで生身の人間が何かをしているのだから、見る側も部屋でダラダラとテレビを見るのとは違いある程度緊張感を持って見ているのです。
はせ氏もいろいろな演劇を見るけれど、年に3〜4本感動できる舞台に出会うといいます。はせ氏なりの感動する最低条件として、観客として「それが板(舞台)の上だということを忘れる」ということを挙げました。
これはよく考えたらスゴイことで、映画だとシーンでズームになったりすることはあるけれど、同様の事が舞台上であるはずがないのにどういう訳か記憶の中でズームしている(今まさに目の前でドラマが起こっているような)感覚があるというのです。
生で触れる事の豊かさとも言えるけれど、この奇跡に近いような空間を作る大元は劇作にあるとはせ氏は言われました。
先にも戯曲はそれだけで終りではないと言いましたが、最終作品ではないからこそ戯曲で書き込んでいくことが大切だということです。
↑他の受講生の戯曲を声に出して読む二人
この戯曲講座の選考にあたって提出してもらった「最近感動した事」という短い戯曲をそれぞれの自己紹介代わりに発表する事になり、はせ氏が随時指名する二人に音読してもらうことになりました。
3月に起きた地震に絡めて書いている人や、自分のことを書いている人など様々で、文字で読んだ時と比べて誰かの声を通して聞くのはとてもリアリティーがあります。
それぞれの発表が終わると、はせ氏より質問を含めた感想が述べられました。
この講座の最終目標は1時間の戯曲を書き上げてもらう事ですが、「1時間ものは手ごわいと思った方がいい」とはせ氏は言われました。
20〜30分の短いものだと1アイデアで何とか乗り切れるけれど、1時間ではそうはいきません。
書ける人はストレートに書き始めてもいいしシノプスを提案するのもいいけれど、初心者やまだ何も決まっていない人については、とりあえずの指針として以下のものをヒントにするよう言われました。
・登場人物:3〜4人(うち2人は知り合いで、1人初対面が入ってくる)
・ある場所(※普通の場所)に何かが届く。(この場合、室内劇にした方が書きやすい)
・特殊な場所に訪問者がやって来る。その場所にいる人が訪問者に場所の事を教える。
これでもまだアイデアが出ないのであれば、具体的に駅のホームか砂浜(ビーチ)を場所に設定して書きはじめるようにと指示がありました。
そうして、次回までに宿題としてそれぞれ20〜30分の戯曲orシノプスを書いてくるよう話があり、本日の講座は終了です。