2005年06月14日

[俳優の為の「呼吸・身体(からだ)・声」講座]

2日目 (基礎編 6月12日)

2週間ぶりの講座です。
今日は前回の復習から始まり、ストレッチから寝転んで腹式呼吸、うつぶせてハミング、身体を横に向けてのハミングへ。

今日は初めて「口を開ける」ことになりました。ハミングでは口を閉じた状態で「音」を身体に響かせていますが、口を開けると音の響きが外に出ます。まずは、自分がどんなふうに口を開けているか、力が入っていないか鏡でチェック。このとき、ただ口をぽかんと開けるだけですが、力が入ってしまったり、開ける方向が上あごに対してまっすぐでなかったりする人もいて、そういったムダな動きによって、音がこもってしまうそうです。「そういう表現もあるかもしれないけれど、まずは何もしない状態で普通に口を開けましょう」と先生。

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↑力を入れないでぽかーんと口を開けてみる


「ハミングのとき、音は身体の中心を通って頭のてっぺんに抜けていく。身体=筒の中で上に抜けて響く。その途中に口が開いて音が出る」とイメージしながら、寝転んでハミングから口を開け、音を出していきます。「ハミングで身体に音を響かせながらぽかんと口を開けると、音が外に出る。響きは変わらない」「息を吐けば音になる。声を出すというより、口は何もしなくても音は出てくる」という先生の説明を聞きながら実践していきます。

次に、「高い声を遠くに飛ばそうとするのと、低い声で近くの人に話しかけようとするのと違うよね」ということから音・呼吸のの距離感についての説明が始まりました。

遠くでも近くでも、意識がまずそこに行く。気持ちと呼吸が連動しているようです。先生曰く「距離感=呼吸を変えずに声だけ飛ばそうとしても伝わらない。」
では、遠くに伝えようとするときはどうしたらよいのか。高い声で遠くに声を飛ばそうとすると、ホースで水量を変えずに水を遠くに飛ばそうとするときにホースの口を狭めるのと同じで、大抵はのどを絞って遠くに飛ばそうとするそうです。楽器も同じで、口をしめて息に勢いをつけて音を出すのですが、声の場合はNG。声は、「息の吐き方で音色・音程を変えることができる」。

では、のどを狭めるのではなく、どうやって息の袋の出口を狭くするかというと、袋の「支え」になる筋肉の使い方だそうです。息の袋には内側と外側があり、内側は息を押し出す力、外側は袋を支える力。外側の力があると内側により力が入るので、そのバランスをイメージしながら具体的に筋肉を使っていきます。

声を出すときには、横隔膜から上、股関節から下は使いません。袋の出口を狭めるときには、お腹・腰・脇の筋肉を使うそうです。息を出すときに、袋を下に向けるのが脇の筋肉で、息を押し出すのがお腹と腰。

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↑息を吐くときの筋肉を確認する

再びストレッチの続きに入り、終わってから、もうひとつのテキスト「ワルプルギスの音楽劇 ファウスト」(脚本:能祖将夫)の台本を手に、「渡された台本をどう読むか」という話になりました。
「この本で何がおもしろいのか、何が言いたいのか考えながら全体をイメージして読む。」
自分の台詞部分のみを覚えるのではなく、自分と会話をする相手の台詞も含め「入る」ものだそうです。また、時代背景を調べたり、自分で理解できる限りの情報を集めるなど、台本に自分なりに取り組むことも重要なようです。(ただし、演出家によっては「原作についての情報は入れないでください」など差し止めがある場合もあるので、そのときは素直に従うようにとのこと。)

今日は、この「ファウスト」を読み、作者(脚本執筆者)が言いたいことを考え、自分だったらどの役がやりたいか自分ありに素材を探してくる、という宿題が出ました。

午後は「股関節から折れる」という感覚を体験しました。
例えば、前屈姿勢になったり、腰を前に曲げる際、股関節から折れている状態でいることが、自由で美しい表現へとつながっていくとのこと。
続けて、「真っ直ぐ立つ」ということもやってみますが、真っ直ぐなつもりでもお尻が出ていたり背中が曲がっていたりと、ただ「立つ」ということも意識的にやっていないと難しいようです。

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↑棒を使って「真っ直ぐ」かどうか確認してみる


加瀬先生は、
「形破り、という言葉があるが、それは形を知っている人が形を破るから成立するもので、形を知らない人が破ってもそれは、形無し、なだけだ」
という無着成恭(むちゃくせいきょう)の言葉を引用して、「形」というもの、正しいカタチの重要性を説明されました。
さらに、ダンサーが踊っている映像を見て理想的な身体の使い方を説明したり、歌舞伎の写真を見たりしながら、「すべての表現は“腰が入っている”状態から始まっている」と力説しました。

宿題は、前回配った戯曲『ファウスト』を読み込んでくること。
次回から少しずつ実践的な内容に入っていきます。


【女性・舞台歴1年】
緊張しやすくて、手や足に力が入ってしまうんですが、今日は立ち方を勉強できてよかったです。
今までと違う身体の使い方ができてリラックスもできたし、自分のものにできるようにしたいです。
台本への取り組み方のお話もあって、いろいろ考えて取り組もうと思います。


【女性・舞台歴6年程度】
関節がすごく固くて、股関節から曲げるのがきつかったです。今回、そういったことを初めて意識したので、今後克服していきたいです。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 12:15