2005年07月28日

[「10年書き続ける」ための戯曲講座]

第四回(7月16日(土)14:00〜18:00)

今日で講座も4回目を迎え、そろそろ中盤にさしかかりました。
これまでは約3週に一度のペースで講義が行われていたけれど、次からはもう少し早いペースで行われるようになるので、受講生のみんなもそれを意識して次の次の講座くらいまでには一旦書き上げることを目標に進めていって欲しいと話がありました。

前回までのものに詰まってしまって書けなくなったという理由で、今回全く違った戯曲を書いてきた受講生もいました。
長々とト書きが続くことに対して、はせ氏は「ト書きに多く(余計なこと)を書かなくていいからね。ここまで書いてあげなくても分かるよ。もっと演出家を信じて!」と言われました。
ト書きと同様に、一人台詞が長すぎるのも説明的になってしまう上に不自然だということです。
台詞を短くしても伝わることもあるので「もっと観客を信じて!」とも。
戯曲の登場人物である男の出会い系サイトでのハンドルネームが“うしお”というのは毛利(モオリ)という男の本名から狙って取ったという話が出た時、これには誰も気付いてなく、当然みんなも分かっているものと思っていた作者に対して、はせ氏は「これは観客を信じ過ぎ(笑)!」と一言。

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↑舞台をどう作りたいか、図を描いて説明する受講生。

受講生によって書き方のスタイルは様々で、頭から書く人もいれば書ける(書きたい)シーンから書く人もいます。
書きたいところから書いていると最後が苦しくなるという話も出ましたが、書き方に決まりはないので自分のスタイルで書き進めていって欲しいとはせ氏は言われました。
「作中で〇〇(誰か)が出てなかなか話が進まないという時は、その登場人物に対しての思いが何か少し足りないことが多いんだよね。」というアドバイスもあり、これには皆さん納得の様子でした。

登場人物に関するデータが前回といきなり変わっているものもありました。
「これはちょっとびっくりしましたね。連載を読んでいる読者としては・・・(笑)。」と、はせ氏もこの展開を面白がっている様子。
「いろいろと内容は増えてはいるけど話としては進んでないよね。でも、今後が展開しやすくなってきたんじゃないの?」と感想を述べ、次回に期待したいということです。
それから、この戯曲には長い台詞が所々出てくるのですのですが、「ここにある長台詞はわりと気にならないんだよなあ。俺、〇〇君(戯曲の作者)にごまかされてるの?」と笑うはせ氏。
最初の方でも触れましたが、長い台詞というのにはいくつかの問題があります。
・作家の都合がバレやすい。(何かを説明するためのものになってしまっていないか?)
・長い台詞としての必然があるのか?
・長いと何かを押し付けられている空気が舞台に出やすい。
・長いとその人の言い分が飽きられる。
                         ・・・・・・・などなど。
はせ氏は「達者な役者がやれば舞台がもってくれるのだろうけど、台詞の長さにはある程度の覚悟と必然性がいることを忘れないで欲しい。」と言われました。

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↑提出された戯曲。回を重ねるごとにボリュームも増します。


前回に引き続き若者とドラッグを題材にした戯曲は、はせ氏にも「相変わらずスゴイんだよ。」と言われた通り、一人の登場人物の設定が男から女に変わったものの内容は弱まることなく更に進んでいました。
はせ氏は、ここで選ばれた題材が社会的な匂いもしつつSEXやドラッグやケンカなどとピリピリしていて刺激的な内容であること、それがとても心配であるとも言われました。
刺激(力)についつい負けてしまう、つまり戯曲が刺激の羅列になってしまって本当に言いたいことが言えないまま終わってしまう可能性もあるというのです。
はせ氏は「ここにあるようなことを書くのはとても力のいること。例えば、誰かと二人で飲んでいてそこで何かの打ち明けごとがあり、それによって一方が心を動かしたとする。それでさえ大変なことなのに、そういったレベルをはるかに超えたすごい内容がここには書かれているんだよ。ここにいるのはそんな安っぽいことで動けないようなもっと大きなことを抱えている若者たち。それを忘れないで欲しい。」と話し、更に「自分たちとかけ離れた世界を書くのは戯曲を書いた経験とかではなしにとても筆に力のいることなんだ。」とも言われました。

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↑音読に参加するはせ氏。それなりに役に入ってます。

受講生の提出したすべての作品の発表が終わると、前回の宿題であった「短い会話を体験する」というエチュード(あらかじめ書かれてある固定台詞につながるよう、指定された場所と時間と会話の数を厳守した穴埋め問題のようなもの)の発表です。
制限された範囲での創作とはいえ、どれ一つと同じようなものはなくミステリータッチのものやコントのように笑えるものなど様々で、受講生それぞれの個性が現れた面白いストーリーに仕上がっていたと思います。
登場人物は駅員(男)と旅行者(女)の二人というもので、これまでのように男女一人づつ配役を決めて音読したのですが、中には面白すぎて音読している最中にも笑いが止まらず読み続けることができなくなる人が出てくるものも。
このエチュードは、これまでにもいろいろな人にやってもらってきたけれどこんなに笑いが出たのは初めてらしく、はせ氏自らも音読の一人となってその役のはまり具合に受講生の笑いを買っていました。
発表を終えて、「実は、このエチュードには『固定されるのって嫌だよね。』という隠しテーマがあったのね。その不自由さを味わってもらう為だったのが一つと、どんなに制約があってもその人らしさというのは出てしまうということを言いたかったのがもう一つ。」と、はせ氏は言われました。

次回の講座まであっという間の2週間!
短い期間ですが、みなさんがんばって書き進めて来てくださいね。


Posted by at 17:17

2005年07月26日

[俳優の為の「呼吸・身体(からだ)・声」講座]

6日目 (実践編 7月25日)

今日でこの講座も最後です。
まず、ストレッチ、声出しでウォーミングアップです。
改めて、「腰を立てる」ことの確認もしました。

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↑手で身体を支えると腰を立てやすい。
  力を入れていないように見えて、実は腰とお腹の周りの筋肉をすごく使っている。

先生曰く「腰を立てるのは難しいけれど、すべての表現においてとても大事なことなのでやっていきましょう」とのことです。

ウォーミングアップの後、グループに分かれて本読みをしました。その間、子音の音への注意や、同じ人物が若いときと年をとったときの声の出し方、夫婦どうしの会話のテンポについてなどが先生から指摘がありました。
同じ人物で違う年齢を演じるのはむずかしいことですが、若いときと年をとったときの「ヒフ感」の違いや、骨格、筋肉のつき方の違いを考えて演じるとよいそうです。
また、お互いの台詞をよく聞こうとしているのでテンポが遅くなっていたのですが、夫婦の間柄なら聞いた瞬間に分かるということもあるのでもっと速くてよいとのことでした。
音程が一定になっていることについては、「役者は音の幅、リズム感を持って欲しい」とのことです。相手の台詞のリズムに対してどう応えるか、本読みの中で気づくこともあるそうです。
方言のなまりが出てしまう場合も、標準語の朗読を聞くなどして耳を鍛えていかないといけません。

次に、劇場塾の担当で、演出家でもある泊さんからこの戯曲の演出プランを話してもらいました。台本には書かれていない部分で、キーとなる人物に何が起こったのか、それぞれの場がどういう意味を持つシーンなのか、そしてどう繋がるのかなどを話しました。休憩の後にはその演出プランを踏まえた上での本読みとなります。

グループに分かれ、演出プランを踏まえて本読みを続けていきます。
役柄の夫婦の力関係からの違いや、役の年代・性別の人がどういう服を着ているかという観察からの役へのアプローチの仕方などのアドバイスもありました。

最後に、この2日間の実践編について学芸係の泊さんは「俳優講座をプレ事業からやってきて4年目にして初めての試み。こういうことは普段なかなか芝居の稽古場ではやらないことなので、とても有意義な2日間だったのではないでしょうか。」と語っていました。

<受講生の感想>

【女性・舞台経験なし】
私は俳優を目指しているのではなくて、のどを傷めて手術をすすめられており、ちゃんとした声の出し方を知りたいと思っていたところに、図書館で加瀬先生の本を見つけ、先生に直接お電話したことが参加のきっかけです。そのときに「北九州で講座がある」と伺って参加しました。
俳優ではないですが、身体の構造やの使い方を知るきっかけになり楽しかったです。

【男性・舞台暦4年】
もともと加瀬先生の本を持っていて、講座があると聞きぜひ受けたいと思って参加しました。
初めての参加で、自分がやっていることが正しいのかどうか確かめたいと思ってました。
発声だけだと思っていたのですが、身体で覚えるのはためになりました。
本の読み方なども何を中心に考えていったらいいのかなど、ベースになるものを得られたのでよかったです。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 13:58

2005年07月25日

[俳優の為の「呼吸・身体(からだ)・声」講座]

5日目 (実践編 7月24日)

今日からいよいよ「実践編」に入ります。

いつも通り、ストレッチと声出しでウォーミングアップの後、前回配られた台本を「素読み(すよみ)」しました。
素読みは、登場人物の役から感情を入れて読むのではなく、戯曲全体を読んでいきます。そのときに舞台の情景や構造を自分なりに想像します。下手に何があるのか、上手はどうなっているのか、それぞれの人物がどこで何をしているのか、道具はどこから出すのかといったことを頭に描きながら読み(聞き)ます。

役者さんの中には、自分はいつも舞台に立っているので、舞台から見た情景を思い描く人もいるそうです。そのように自分の立場からの想像で構わないけれども、客席から見たらどう見えるかなどいろいろな角度から見ることも大事です。

1場の舞台の絵も、具体的にそれぞれ描いてみました。
ある家族が住む、家のキッチンとリビングがメインの舞台ですが、それ以外の部屋の配置やキッチンのカウンターの形まで考えていきます。家具の形一つとってもいろいろなタイプがあり、書かれている物語に合うのはどういうものか考えることも必要になってくるので、基礎編でも先生が言われているように、お芝居を観るだけではなく、映画や美術などを観ることも含めいろいろなものに対する観察力が大切なようです。

また、台本には早口言葉など発声しにくい言葉が意図して盛り込まれていました。ひとつひとつの音を早くきちんと発声できたからといって意味がお客さんに伝わる訳ではなく、「台詞の中で丁寧に言えて、意味が伝わることが必要」とのことです。

引き続き読み進めていき、描かれている家族の関係などをつかんでいきました。来客があり、人物たちが移動したときに誰がどこにどう動いたかなども素読みのときのポイントになります。

物語には「スイングジャズ」が登場し、人物の過去を説明する要素の一つになります。スイングジャズとそれが流行した時代について、いくつかの資料も見せてもらいました。

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↑スイングジャズが流行した1930年代、「カフェー」も流行。カフェーで働く女給さんの資料。

台本には、数回同じ台詞のやりとりが繰り返されるシーンがあり、それがどう繋がっているかという話もありました。全体を読んで「こうでなくては繋がらない」と決めてかかるのではなく、「ニュートラルな状態に自分を置き、いろいろな可能性を探って読んでみましょう」とのことでした。

また、台本にはいわゆる「説明台詞」も盛り込んでありました。説明台詞は感情でしゃべれないので、なかなか「台詞が頭に入らない」のだそうです。「説明台詞」にならないようにに話すには、自分で思い描いた絵を動かしながら話すとよいそうです。

この台本を上演するときにどういう小道具を用意するかということも考えました。
例えば、お芝居の上での時間の経過を表現するのに、時計を使うのも一つの方法だし、干し柿がだんだん小さくなっていく様子などいろいろな方法が考えられます。
持ち道具や衣装は、役者さん本人がこだわって考えたり管理したりしてもよいとのことです。例えば衣装や道具の汚し方なども、表現の一つなので役者さんがやる方がいいようです。
道具に関しては、本物を使っても舞台の上ではすごくニセモノっぽくなってしまったり、ある部分を省略したり誇張したりしたニセモノが本物に見えたりします。「そういうことを考えて作るのは楽しいのでやってみて」とのことでした。

次回はグループに分かれ、役を当てて台本を読んでいきます。

Posted by 北九州芸術劇場(K) at 21:30